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芸術鑑賞の備忘録

TVドラマ『レンタルなんもしない人』第6話

TVドラマ『レンタルなんもしない人』第6話を鑑賞しての備忘録
監督は、棚澤孝義
原作は、レンタルなんもしない人(森本祥司)『レンタルなんもしない人のなんもしなかった話』。
脚本は、竹川春菜。

交通費だけの請求で、ひとり分の数あわせサービスを提供している「レンタルさん」こと森山将太(増田貴久)は、ある日の午前10時、神宮前交番付近で依頼人を待っていた。男ひとりでは入りづらいとの理由で表参道のパンケーキ店に一緒に並んでもらいたいとの依頼だった。メッセージを確認しようとして依頼人にブロックされているのに気が付く。ヘアサロンの呼び込み(久留栖るな)に誘われて美容師(越村友一)にカットしてもらった将太は、時間を有効活用できたと気持ちを切り替え、家へ向かう。玄関前でスマートフォンに着信が。生後9ヶ月の俊介(細小路天真)を抱える主婦・佐々木麻衣徳永えり)から1時間後にレストランに同行して欲しいとの依頼だった。家に上がり妻・沙紀(比嘉愛未)に誇らしげに頭髪を示すが「成果」を感じてもらえないまま、将太は再び玄関を出て麻衣との待ち合わせ場所へ向かった。麻衣は初対面の将太に緊張していたが、1歳の息子を持つ将太と子育ての話で打ち解ける。バスに乗ろうとを抱っこひもで前に抱えた麻衣はベビーカーを折りたたむ。バスが到着し、乗り込もうとした際、ベビーカーがベンチにひっかかって倒れ、麻衣は後に並んでいた人に先に乗るように促す。だが麻衣が乗ろうとしたときに乗客でいっぱいで、乗降口に立つ客に「乗るの?」と問われた麻衣は、「すいません、次のにします」と乗車を見送る羽目になる。二人はベンチに座り次のバスを待つ。麻衣は、かつてよく通い、友人や夫・太一(浅井浩介)らとの数々の思い出があるレストランの最終営業日にどうしても行きたかったこと、夫やママ友とは都合をつけられなかったことを語った上、子連れの外出の困難を「レンタルさん」に打ち明けるのだった。


麻衣の「子連れで外に出ると迷惑がられちゃうんですよね。」という科白や、麻衣の孤軍奮闘する姿に、少子化社会の一つの原因が浮き彫りになる。とりわけ衝撃的なのは、「なんもしない人をレンタルすることで確実に敵ではない人がいるという心強さがあったそうだ。」という「レンタルさん」のツイート。このコメントに象徴される、「レンタルさん」という何もしない存在を、無防備な母子を無数の攻撃者から防御する壁として機能させてしまう社会の有り様だ。「レンタルさん」が社会の闇を照射する。

麻衣との待ち合わせ場所からバス停までの間に通る、古いゲームの「ドンキーコング」の舞台のような葛折りの坂が視覚的に面白い。一息に下がることができず、何度も何度も折り返して少しずつ下っていく姿に、麻衣の子育ての過程が重ね合わされている。

徳永えりはTVドラマ「ヘッドハンター」(2018年)で記憶に残っていたが、ショートカットがこんなに似合うとは。

太一(浅井浩介)は夕方に名古屋からのお客さんが来るまで、ほとんど喫煙所で過ごしている可能性がある(わっしょい!)。