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芸術鑑賞の備忘録

映画『ポップスター』

映画『ポップスター』を鑑賞しての備忘録
2018年製作のアメリカ映画。110分。
監督・脚本は、ブラディ・コーベット(Brady Corbet)。
撮影は、ロル・クローリー(Lol Crawley)。
編集は、マシュー・ハンナム(Matthew Hannam)。
原題は、"Vox Lux"。

 

夜中に暴走気味に走行する1台の車。車が停まり、車を降りて歩き出したのは一人の少年。
2000年1月。スタテン・アイランドのあるハイ・スクール。音楽教師(Maria Dizzia)が、一人の生徒のヘアスタイルが変わったことに気付いて話しかける。姉にカットしてもらったと知って、自分もたまにヘアスタイルを変えたいと、姉を紹介するよう頼む。ブザーが鳴り、教師が生徒たちにクリスマス休暇を楽しんだか尋ねる。PCの配備についての要望がどうなったのか、生徒全員が揃ったら発表すると告げたところへ、少年カレン・アクティヴ(Logan Riley Bruner)が教室に入って来る。彼は突然教師に向け銃撃する。彼は混乱する生徒たちを窓側へ移動させる。セレステ(Raffey Cassidy)は動かずにカレンに向かい、教師が息をしていないのかと尋ねる。カレンは天井に威嚇射撃をし、セレステを追いやる。セレステは自身の処遇をカレンに委ねることで他の生徒たちを解放することを求めるが、既に多くを殺してしまったというカレンは応じようとしない。セレステが一緒に祈ろうと提案するが、カレンはセレステや生徒たちを銃撃する。
首に被弾し救急搬送されたセレステは、脊椎を損傷していたものの一命を取り留める。リハビリに励みながら入院生活を送る娘に父(Matt Servitto)がギターを教えようと提案するが、首を曲げられないと、姉エレノア(Stacy Martin)からキーボードや作曲の手ほどきを受けることにする。
銃撃の犠牲者を追悼する集会が教会で行われる。神父(Daniel London)は、カレンの住まいが放火され、事件の動機を知る手がかりが失われてしまったことに触れ、憎しみの連鎖を断つためにも銃撃犯に対しても祈ることが必要だと訴える。そして、亡くなった人たちに思いを寄せようと、事件の生存者であるセレステを呼び込む。セレステはスピーチ原稿ではなく歌を用意したと述べて姉の伴奏で歌を披露した。セレステの歌は大きな共感を呼び、すぐにマネージャー(Jude Law)や広報(Jennifer Ehle)がセレステについて、レコーディングと売り込みが始まるのだった。

 

デヴュー前後のティーンのセレステ(Raffey Cassidy)を描く「Prelude」、「Genesis」と、それから17年後のセレステ(Natalie Portman)を描く「Regenesis」、「Finale」の4部構成。
冒頭で短時間描かれる学校銃撃事件だけでも1本の映画作品になるエピソード。セレステが生死の淵を彷徨う経験をしたことを表すためもあってだろう、病院へ搬送される救急車両の走行シーンで、あたかも「エンドロール」のような詳細なオープニング・クレジットが流される。
デヴュー時のエピソードに早送りの映像を用いることでめまぐるしい環境の変化を表す。
Genesisという章題やMRIの映像などがキリスト教を連想させる。"Vox Lux"というラテン語の原題もキリスト教に関連する言葉だろうか。
重要な楽曲"Hologram"もlux=光に関連する言葉。ミュージック・ヴィデオにはきらびやかな覆面のような化粧(ホログラムを連想させる)を施したセレステがバイクのタンデムシートに跨がって(自ら運転するのではない)、トンネル(闇+照明)を走っていく(出口はない)。
セレステに写真を求め断られた店長の豹変ぶりが印象に残る。