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芸術鑑賞の備忘録

映画『エジソンズ・ゲーム』

映画『エジソンズ・ゲーム』(ディレクターズ・カット)を鑑賞しての備忘録
2019年製作のアメリカ映画。108分。
監督は、アルフォンソ・ゴメス=レホン(Alfonso Gomez-Rejon)。
撮影は、チョン・ジョンフン(Chung-hoon Chung)。
脚本は、マイケル・ミトニック(Michael Mitnick)。
編集は、デビッド・トラクテンバーグ(David Trachtenberg)とジャスティン・クローン(Justin Krohn)。
原題は、"The Current War"。

 

1880年。未だ機械が人力や蒸気力により作動する中、トーマス・エジソン(Benedict Cumberbatch)は、フィラメントの改良で長時間点灯可能な電球の開発に成功、送配電システムを建設して電灯を普及させることを目論んでいた。チェスター・アーサー大統領(Corey Johnson)に招かれたエジソンは、妻メアリー(Tuppence Middleton)、娘ドット(Sophia Ally)、息子ダッシュ(Woody Norman)とともにホワイトハウスへ。同じく大統領に呼ばれていたジョン・モルガン(Matthew Macfadyen)の同席のもと大統領に面会したエジソンは、大統領の声を蓄音機に録音してみせる。大統領から軍事技術の開発に協力を求められるが、エジソンは人を害する技術に加担するつもりはないと固辞する。また、エジソンは、電灯普及のモデル事業として、マンハッタンの灯りを電灯に替える計画を実現するため、モルガンに資金提供を依頼する。2枚腰の交渉によりモルガンから資金を得たエジソンは、直流方式の送配電システムをマンハッタンに敷設し、大々的な点灯式を挙行。夜空の星をガラスの容器に移し替えたと、その功績を社会に印象づけることに成功した。
一方、蒸気機関車自動空気ブレーキを開発した技術者であり実業家でもあるジョージ・ウェスティングハウス(Michael Shannon)は、実用的な電球を開発したエジソンの協力を得て、電灯を普及させる構想を抱いていた。エジソンを晩餐に招待し、彼自ら妻のマーガリート(Katherine Waterston)とともに駅までエジソンを迎えに出るが、エジソンウェスティングハウス夫妻の待つ駅に列車を停車させずに走り去ってしまう。エジソンの協力が得られないと悟ったウェスティングハウスは、長距離送電が可能で、発電機の数が少なくてすみ、コストを抑えることの可能な交流方式の送配電で電灯事業を進めることにする。マンハッタンのような過密地域はともかく、広大なアメリカで電灯事業を推進するには長距離送電が必須だろうとの判断があった。莫大な資金を投じて発電機を購入すると、物理学者のフランクリン・ポープ(Stanley Townsend)を中心に開発に当たらせる。そして、ウェスティングハウスは交流方式による電灯事業を見事に実現した。
ウェスティングハウスの成功を知ったエジソンは、特許侵害を訴えウェスティングハウスを排除しようとするが、送配電が直流方式と異なるため困難であった。唯一電球について特許侵害を訴える余地があったが、ソケットの口径を変えるなどして容易に対処されてしまう類のものであった。怒りに燃えるエジソンは、交流方式は人体に有害であると記者たちに仄めかすことで、ウェスティングハウスの電灯事業のイメージを悪化させる戦略に出る。

 

事実から着想された物語とのこと。どこからがフィクションか。
原題"The Current War"は、電流の直流・交流をめぐる「電流戦争」のこと。もう少し直流・交流の差異が明らかにされていても良かったか。
current(電流)のためにはcurrency(資金)が必要。
電気椅子をめぐるエピソードが秀逸。
1893年のシカゴ万博(The World's Columbian Exposition)をめぐるエピソードも。かつて万博が「マスメディア」として重要な役割を担っていたことが分かる。
妻が屋敷に設置を求めたフェンスが、エジソンウェスティングハウスの関係を示唆するものとなっている。
エジソンの息子がモールス信号を多用する意味とは何だったのか。