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芸術鑑賞の備忘録

映画『ハリエット』

映画『ハリエット』を鑑賞しての備忘録
2019年製作のアメリカ映画。125分。
監督は、ケイシー・レモンズ(Kasi Lemmons)。
原案は、グレゴリー・アレン・ハワード(Gregory Allen Howard)。
脚本は、グレゴリー・アレン・ハワード(Gregory Allen Howard)とケイシー・レモンズ(Kasi Lemmons)。
撮影は、ジョン・トール(John Toll)。
編集は、ワイアット・スミス(Wyatt Smith)。
原題は、"Harriet"。

 

1849年。奴隷州のメリーランド州エドワード・ブロデス(Mike Marunde)に所有されている奴隷の「ミンティー」ことアラミンタ・ロス(Cynthia Erivo)のもとへ、夫である解放奴隷のジョン・タブマン(Zackary Momoh)が喜び勇んでやって来る。弁護士から、ミンティーの解放を法的に主張する手紙を手に入れたのだ。日曜日、ブロデスの屋敷の前で、グリーン牧師(Vondie Curtis-Hall)が、新約聖書の「エペソ人への手紙」からの章句を引用して、説教を行っている。「僕たる者よ。キリストに従うように、恐れおののきつつ、真心をこめて、肉による主人に従いなさい。」と。礼拝を終えた後、ジョンはミンティとともにエドワードと直談判を行う。奴隷とはならない子どもを持ちたいのでミンティを解放して欲しいと、弁護士の手紙を差し出す。だが、エドワードはすぐさま手紙を引き裂き、ジョンに二度と敷居を跨ぐなと言い放つ。打ち拉がれるミンディーは神に、エドワードをすぐさま天に召すよう祈る。ミンディーの祈りを見咎めエドワードの息子ギデオン(Joe Alwyn)は、黒人の祈りは神に届かないと嘲笑う。だが、その直後にエドワードは急死する。怖れをなしたギデオンはミンディーを売りに出そうと張り紙をする。自分が売りに出されたことを知ったミンディーは、再び家族と離ればなれになることに耐えられなかった。幼い頃、姉が売りに出されて生き別れになったことがトラウマとなっていたのだ。また、かつて奴隷監督に分銅を投げつけられて頭蓋骨を骨折する瀕死の重傷を負って以来、突然強い眠気に襲われる過眠症を患っていたが、同時に神からのメッセージを聞くようになっていた。ミンティーは神から促されて逃亡を決意すると、ジョンに告げる。ジョンはミンティーを心配して一緒に逃げる約束をするが、ミンティーはジョンを置いて逃亡することに決めていた。解放奴隷である父ベンジャミン(Clarke Peters)に別れを告げに行くと、グリーン牧師を頼るよう助言される。グリーン牧師は北極星や川を頼りにひたすら北へ向かうこと、明るくなる前に少しでも遠くまで逃げること、支援者の名を告げてミンティーを送り出す。ミンティーは即座に北へ向けての逃避行を開始する。一方、夜中に、ミンティーに待ち惚けをを食わされたジョンを屋敷の入り口で見つけたギデオンは、ミンティーの逃亡を察知し、その後を追う。急流にかかる橋にミンティーを追い詰めたギデオンは、戻れば今回の件は大目に見ようとミンティーを宥め賺すが、ミンティーは「自由か死か」との言葉を残して激流に身を投げるのだった。

 

奴隷制廃止などに尽力したハリエット・タブマン(改名前はアラミンタ・ロス)を描く。
ハリエットがとにかく強い。奴隷制への憎悪と自由への飽くなき希求、そして神託とにより、文字通り神がかりの強さを発揮していく。
神がかりのハリエットの強さをCynthia Erivoが体現。その歌声も力強く魅力的。もっと歌唱シーンが多くても良かった。
奴隷所有者にとって奴隷が財産として大きな比重を占めていることも描かれていた(奴隷主としては一般的なのか?)
解放奴隷と奴隷の夫婦のようなケースも多かったのだろうか(ハリエットの父ベンジャミンや、ハリエットの夫ジョンは解放奴隷)。
奴隷解放のための組織「地下鉄道」やその「車掌」について、また逃亡奴隷法をめぐる混乱も描かれていた。
ハリエットらに手を差し伸べる市井の協力者たちの姿も印象に残る。