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芸術鑑賞の備忘録

映画『ストレンジ・フィーリング アリスのエッチな青春白書』

映画『ストレンジ・フィーリング アリスのエッチな青春白書』を鑑賞しての備忘録
2019年製作のアメリカ映画。78分。
監督・脚本は、カレン・メイン(Karen Maine)。
撮影は、トッド・アントニオ・ソモデビーリャ(Todd Antonio Somodevilla)。
編集は、ジェニファー・リー(Jennifer Lee)。
原題は、"Yes, God, Yes"。

2000年代初頭のアメリカ。アリス(Natalia Dyer)はカトリックのハイスクールに通う真面目な11年生。日曜日には父親(Matt Lewis)とともに教会に通っている。結婚するまでセックスすべきではないし、倫理の授業で先生の言う通り、自慰も控えるべきだと考えている。周囲で飛び交う性的な内容のスラングにも疎く、せいぜい親友のローラ(Francesca Reale)と映画『タイタニック』のラヴシーンを話題にするくらい。それでも性的な興味の高まりは日々抑えられなくなってきている。ある日の帰宅後、チャットを楽しんでいると、突然、"HairyChest1956"というユーザーから、裸の男女が写った写真を添付したメールが着信する。男性の腕に生えた濃い体毛に興奮したアリスは、写真を求められてローラと一緒の写真のローラの部分をスキャンして送信する。喜んだ相手から誘われるがままにチャットでセクシャルなやりとりをして、アリスはつい下着の中へと手を伸ばす。そこへ母親から夕食の準備が出来たと声がかかる。姦淫する者は地獄へ落ちるという「ヨハネの黙示録」の一節がアリスを悩ませているところへ、アリスがウェイド(Parker Wierling)と"salad tossing"というアリスにとっては意味が分からない変態行為に及んだという噂が立ち始めた。教師のヴェーダ(Donna Lynne Champlin)までがその噂を信じたらしく、アリスは優等生として礼拝で果たしてきた役割を先生から外されてしまう。悩みは大きくなる一方だが、告解でマーフィ神父(Timothy Simons)に打ち明けられる内容とはとても思えなかった。ベス(Teesha Renee)が学校のリトリート・センターで行われる4日間の合宿に参加して変わったのに気が付いたローラは、アリスを誘って合宿に参加することにする。合宿参加者を迎えた上級生のリーダー役の中には、がっしりした体に甘いマスク、しかも腕の毛の濃いクリス(Wolfgang Novogratz)がいて、アリスは一目で夢中になってしまうのだった。

しかし、臆病な者、信じない者、忌むべき者、人殺し、姦淫を行う者、まじないをする者、偶像を拝む者、すべて偽りを言う者には、火と硫黄の燃えている池が、彼らの受くべき報いである。これが第二の死である。(「ヨハネの黙示録」第21章第8節)

少女が社会の建前と本音の齟齬に気付きつつ大人になっていく過程を描く青春映画。狭い世界から飛び出してごらんという、思春期の少年・少女に対するメッセージは明快で、地味ながら痛快さも味わえるのではないか。カトリックのハイスクールを舞台にするのは、建前と本音の齟齬が大きいとの判断もあったのだろう。むしろ、時代をあえて2000年代初頭に設定したのは何故なのかが気になった。
少女の性への興味を扱ってはいるものの、描写自体は極めて穏健。「エッチな青春白書」という副題は間違いではないかもしれないが、「エッチな」は外した方が、より幅広く訴求できたのではないか。なお、「ストレンジ・フィーリング」は、アリス役のNatalia Dyerが「ストレンジャー・シングス」という連続ドラマに出演しているからだろう。原題が"Yes, God, Yes"のため、担当者が邦題に頭を悩ませたであろうことは容易に想像がつく。
真面目だけれど危なっかしい行動に出てしまう多感な少女アリスをNatalia Dyerが好演。