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芸術鑑賞の備忘録

映画『ディック・ロングはなぜ死んだのか?』

映画『ディック・ロングはなぜ死んだのか?』を鑑賞しての備忘録
2019年製作のアメリカ映画。100分。
監督は、ダニエル・シャイナート(Daniel Scheinert)。
脚本は、ビリー・チュー(Billy Chew)。
撮影は、アシュレイ・コナー(Ashley Connor)。
編集は、ポール・ロジャース(Paul Rogers)。
原題は、"The Death of Dick Long"。

 

ジーク・オルセン(Michael Abbott Jr.)、アール・ホワイト(Andre Hyland)、ディック・ロング(Daniel Scheinert)の3人はバンドを組んでいて、ジークのガレージをスタジオ代わりに集まっていた。見学していたジークの妻リディア(Virginia Newcomb)と娘のシンシア(Poppy Cunningham)が自宅へ引き揚げると、羽目を外そうとのアールのかけ声で3人は痛飲し、焚火をして、花火や射撃などに興じていた。
ジークとアールは、ジークの車で血だらけのディックを乗せて救急診療を行っている病院へ急行する。病院の裏手の人気のない道で車を停めたジークは、アールとともにディックを運び出す。急斜面でディックを落として転がしてしまったり、フードで顔を隠そうとしてコンクリートにディックの頭を打ち付けてしまったりしながら、何とか病院の入口近くまで運びこむ。ちょうど夜勤を終えた医師のリヒター(Roy Wood Jr.)が退勤して玄関を出るところで、ジークはディックのポケットから財布を抜き取り、アールとともにディックを置き去りにして逃走する。駐車場に置き去りにされたディックに気付いたリヒターは即座に病院に戻り、スタッフを呼び寄せる。
アールは住まいに戻り、ピックアップトラックに部屋の物を積み込む。慌てて助手席に詰め込もうとした椅子を壊してしまう。そこへ恋人のレイク・トラヴィス(Sunita Mani)が現れ、どうしたのかと尋ねる。アールは緊急事態で町を離れるという。緊急事態の内容については家族絡みというだけで詳細を答えようとせず、ペットの面倒をレイクに任せる。
ジークは帰宅するとシャワーを浴びて静かに妻の眠るベッドに忍び込む。ちょうどアラームが鳴って目を覚ましたリディアは、休みならシンシアを学校に連れて行って欲しいとジークに頼む。引き受けたジークがシンシアが朝食をとっている間、キッチンにいると、リディアがやって来て5ドル紙幣をねだられる。ジークはポケットに入っていたディックの財布から取り出してリディアに渡す。シンシアがめざとくいつもと違う財布であることに気が付き、財布を替えたのかと問われると、拾ったのだと告げる。すると、警察に届けなくてはならないと返される。ジークは財布からディックの運転免許証を抜き出してキッチンに置く。ジークはシンシアと車に向かうが、後部座席が血に染まっていることに気が付く。慌ててシンシアとリヴィングに戻り、シーツを探す。リディアから何をしているのかと問われたジークはベッドメイキングだと答える。学校に遅れるとせかされると、ベッドを整えるのは後にしようと答えつつ、リディアが離れた隙にシーツを1枚取り出し、後部座席に敷く。今日は助手席に乗っていいと告げるが、シンシアは子供が乗るのは危険だからと後部座席に座る。給油のためにガソリンスタンドに立ち寄ると、たまたま警官のダドリー(Sarah Baker)が居合わせる。父親が給油する間、店で待っていたシンシアは、ダドリーに父が財布を拾ったと告げる。シンシアを迎えに店内に入ったジークは、シンシアの服が後部座席からしみ出した血に染まっているのに気が付く。ダドリーから財布を拾得されたそうですねと言われると、シンシアの背後に回って血を隠しつつ、警察署へ行く手間が省けたとディックの財布を渡す。ジークはシンシアに着替えさせる他無く、連れ帰って風呂に入れるのだった。

 

何が原因で「緊急事態」が生じたのかは伏せられたまま、観客は、ジーク(Michael Abbott Jr.)の悪夢のようなピタゴラスイッチが的確に作動するのを目の当たりにすることになる。ジークやアール(Andre Hyland)の愚かさを笑うことはできるが、その場を凌ごうと悪足掻きをしたことのある者は笑ってばかりもいられない。トーストを落とすときには必ずバターが塗った方から落ちるのだ。
シンシア(Poppy Cunningham)は、ジークの娘ながら真っ当に育っているのは奇跡的。
ジェーン・ロング(Jess Weixler)がとにかく可哀想としか言えない。
保安官のスペンサー(Janelle Cochrane)と警官のダドリー(Sarah Baker)のコンビの味わいはなかなかのもの。
スイス・アーミー・マン』の監督・脚本ダニエル・シャイナートが、かなり一般受けする作品(?)を制作している。
リチャード・ロングというと、ランド・アートの大家を思い浮かべざるを得ない。