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芸術鑑賞の備忘録

映画『ビューティフルドリーマー』

映画『ビューティフルドリーマー』を鑑賞しての備忘録
2020年製作の日本映画。75分。
監督は、本広克行
原案は、押井守
脚本は、守口悠介
撮影は、川越一成
編集は、岸野由佳子。

 

学園祭「先勝祭」を明日に控えた先勝美術大学。キャンパスは準備に追われる学生たちでごった返している。学園祭実行委員会より通達します。学校当局との協定により学生は夜10時までの退出が義務づけられています。美術準備室から石膏像を持ち出した者は直ちに返却してください。美術準備室から石膏像を持ち出した者は…。シエリ(ヒロシエリ)が映画研究会の部室に向かっていると、リコ(藤谷理子)が後ろから近付き驚かす。やっぱりリコか。分かった? シエリとリコが部室に入る。そこには、学園祭の盛り上がりをよそに、いつも通り映画絡みの駄話に現を抜かす部員たちが屯している。あ、石膏像! 今めちゃくちゃ探されてるやつだ。リコがウチダ(内田倭史)に指摘する。カミオ(神尾楓珠)が写真撮りたいっていうから借りてきたんだよ。早く返しなよ! さっきの放送、リコさんに似てましたね、とモリタ森田甘路)。頼まれまして。サラ(小川紗良)は棚に目を凝らしている。シエリが何しているのかサラに尋ねる。昨日夢に出てきたんだよね。何が? あっちかも! サラは一人、棚の裏手の、備品やら何やらが雑然と積まれている場所へ分け入る。映研だけだからね、何もしてないの。そうだよ、冷たい目でめられたよ。しょうがないじゃん、俺たち忙しいんだから。忙しくないでしょ、何してんの? 映画見たり…映画見たり…映画見たり…。ここだけ時間軸違うんだよ。『インターステラー』! サラは古い段ボール箱の中に「夢みる人」と書かれた大学ノートを見つけ、驚く。サラは昨晩、部室で脚本を見付ける夢を見ていたのだ。サラが皆のもとへ箱ごと運んでいく。同じ箱の中には16ミリのフィルムもあった。これ、見られないかな? 映写機あったんじゃない? モリタ森田甘路)が映写機を取り出してくる。ウチダがフィルムを苦労してセットする。『ニュー・シネマ・パラダイス』みたいだな。部室燃えたらどうする。全焼だよ。映写機が動き出し、美しい光景が映し出される。サラは映像に見とれる。意外と画質いいね。え、もう終わり? 映画は中途半端に終わっていた。よくあるらしいですよ、途中で止めちゃうの。もったいないね。ねえ、これ私たちでやってみない? サラが提案する。この本すっごく面白いから、私たちが撮って完成させようよ。よ、久しぶり! タクミ先輩(斎藤工)! 短編映画で受賞歴のある映画監督でOBのタクミが顔を出した。格好いい先輩の登場につい握手を求めてしまうシエリとリコ。どうしたんですか突然。部室の夢を見たんだよ。私も部室の夢を見て、この脚本を見付けたんです。ああ、『夢みる人』か。撮ろうとすると必ず何か起こる、決して完成させてもらえない映画だよな。『エクソシスト』みたいにセットが燃えるんじゃ…。タクミ先輩の身には何が? 撮影の間中ずっと腹痛がしてね。それは先輩の体調の問題じゃ…。夢が導いた映画に魅せられたサラは皆に映画を完成させようと改めて提案する。みんな映画を撮ろうと思って映研に入ったんでしょ。そういうわけでも…。カミオ、カメラ使えるよね。衣裳とメイクはシエリ。録音はウチダ、ブームポール構えられるでしょ? しっかりしてるからリコはプロデューサー。モリタはそれ以外何でも全部、助監督ね。サラにのせられた部員たちは、まずは出演者のオーディションを開始する。

 

映画研究会のサラ(小川紗良)が部員を束ね、部に伝わる未完成の映画『夢みる人』を完成させようと奮闘する。
掛け合いが面白く、少々強引な展開もすんなり受け容れられる。
同学年の部員しかいないのは、鑑賞者に後事を託しているからだろう。
ビューティフルドリーマー」は映画制作者のこと。夢を見ることは映画をつくることであるとともに未来をつくることである。
劇中で制作される映画『夢みる人』はループもの。映画を見ることは、ループすること。メタ映画鑑賞。
映画に対する愛情が伝わってくる作品。心なしか客席にもそういう空気が流れている気が。
うどん脳、初見。