可能性 ある 島 の

芸術鑑賞の備忘録

展覧会 小西紀行個展『内なる基準』

展覧会『小西紀行個展「内なる基準」』を鑑賞しての備忘録
ANOMALYにて、2020年10月24日~11月21日。

小西紀行の絵画展。

稲妻が空を切り裂くようにキャンバスを折れ曲がりつつ走る太い線が目に飛び込んでくる。その線は多く人体の骨組みとなり、針金で作られた人形のような簡略化された人物を表す。モティーフの再現性はやや高いものの、筆触の観点からすると白髪一雄らのアクション・ペインティングに通じるものがある。大胆なストロークの持つ力強さと速度を感じない訳にはいかない。具象性と抽象性とがぶつかり合うという点では、岡本太郎の主張した対極主義に親和性があるとも言えよう(どこか岡本太郎の《森の掟》などを髣髴とさせる作品もある)。特徴的な太い描線は、身体の他、水や草地や煙なども表すが、それだけではない。親密感のような、その場にありながら目にすることはできない空気までもその線で表してしまう。青木繁の《海の幸》に表された群像の一人が鑑賞者に視線を送ってくるように、作家の作品の人物も、ジグザグの線の隙間から鑑賞者に鋭い眼差しを送ってくる。一度目にするとなかなか忘れ難い印象を残す人物画群である。