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芸術鑑賞の備忘録

映画『テスラ エジソンが恐れた天才』

映画『テスラ エジソンが恐れた天才』を鑑賞しての備忘録
2020年製作のアメリカ映画。103分。
監督・脚本は、マイケル・アルメレイダ(Michael Almereyda)。
撮影は、ショーン・プライス・ウィリアムズ(Sean Price Williams)。
編集は、キャスリン・J・シューベルト(Kathryn J. Schubert)。
原題は、"Tesla"。

 

ニコラ・テスラ(Ethan Hawke)がジョン・ピアポント・モーガン(Donnie Keshawarz)の邸宅を訪れる。中庭を抜け、回廊を巡る。
テスラは、幼い頃、黒猫を可愛がっていた。猫の背中を撫でていると光が生じた。父から、その光は雷と同じものだと説明されると、世界を撫でているのは誰なのかと疑問を持った。
9年前、テスラはトーマス・エジソン(Kyle MacLachlan)の会社で仕事に忙殺されていた。ある日、停電のために蝋燭を点す中、エジソンが突然思い出したという幼い頃の話をスタッフに聞かせる。誰もが泳げると思って友人と湖に出かけた日の夜、大人たちがその友人を探し回っていたというエピソード。話を振られた新入りのテスラは、思わず「私は泳げます」と返す。テスラは自らの考案した交流電動機の開発を提案するが、エジソンは受け容れようとしなかった。エジソンは最初の妻をモルヒネ中毒で亡くしていた。
ナレーターのアン・モーガン(Eve Hewson)がラップトップを起ち上げ、「ニコラ・ステラ」を検索する。ヒット数は多くても、用いられているのは3、4枚の画像のヴァリエーションに過ぎないと指摘する。「トーマス・エジソン」で検索すると、テスラの2倍の検索結果がヒットする。
テスラの父は正教会の司祭で、母は文盲だが優れた知性の持ち主だった。神童と呼ばれた兄は幼くして亡くなった。テスラは数カ国語を操り、数学で才能を開花させた。もっとも、プラハブダペストなどを経て渡米した際には貧困に喘いでいた。
エジソンは、実業家で発明家でもあるルイス・ミラーの娘ミナ(Hannah Gross)と出会う。エジソンはミナの手を取ると、モールス信号で愛のメッセージを送る。
友人のシゲティ(Ebon Moss-Bachrach)とともに誘導電動機の試作に成功したテスラは、資金提供をしてくれそうな人たちに火花の出ないモーターの売り込みを始める。テスラはその過程でアンと知り合い、また、ジョージ・ウェスティングハウス(Jim Gaffigan)との契約に漕ぎ着けた。

 

ニコラ・テスラ(Ethan Hawke)の「伝記映画」。偉人の業績を再現的に描くのではなく、エジソンとの「電流戦争」を初めとした興味深いエピソードをもとにキャラクターの魅力を表現しようとする姿勢で制作されている。冒頭から、電子回路をイメージさせるためにテスラにローラースケートを用いて回廊を移動させ、アナクロニズムの演出を鑑賞者に印象づけている。史料映像を背景にしたシーンや、歌唱シーンなども含め、演劇的手法と言えるかもしれない。そのような手法に慣れると、もっと強い刺激が欲しくなってくる。とりわけ、テスラとエジソンのアイスクリームのぶつけ合いが早い段階で現れるので、後半はやや刺激が弱く感じられてしまうのだ。ニコラ・テスラに関心を持つこと請け合いである。
ニコラ・テスラサラ・ベルナール(Rebecca Dayan)との関わりも非常に気になる。
昨年日本で公開された映画『エジソンズ・ゲーム』(2017)は、トーマス・エジソンジョージ・ウェスティングハウスとの「電流戦争」を描いた作品。同作では、Nicholas Houltがニコラ・テスラを演じた。