映画『ビーチ・バム まじめに不真面目』を鑑賞しての備忘録
2019年製作のアメリカ映画。95分。
監督・脚本は、ハーモニー・コリン(Harmony Korine)。
撮影は、ブノワ・デビエ(Benoît Debie)。
編集は、ダグラス・クライズ(Douglas Crise)。
原題は、"The Beach Bum"。
フロリダキーズの最南端・キーウェスト島。夜、ムーンドッグ(Matthew McConaughey)が場末をふらふらと歩いていると、仔猫の鳴く声がする。洗濯機の上に1匹の白い猫がいた。一応周囲に声をかけてみるが、飼い主らしき人物は見当たらない。彼は仔猫を自分のものにすることにして抱きかかえると、酒場へ向かう。演奏していたミュージシャンがムーンドッグを見かけて呼び込む。歌に加わり、短い詩を朗読すると、ステージを降りて、再び飲み始める。時にはお気に入りの赤いタイプライターで詩作を行うこともあるが、娼婦と連み、アルコールと葉っぱで酩酊して過ごす時間がほとんどだった。ある日、妻のミニー(Isla Fisher)から電話があり、戻ってくるようせがまれた。親しい奴がいないだとか、底辺で暮らしているとハイになれるんだとか御託を並べていると、ヘザー(Stefania LaVie Owen)が結婚式を挙げるからだと告げられる。でも娘は16だろ。22よ。まだ何も分かっちゃいないさ。ミニーの傍にはシンガーのランジェリー(Snoop Dogg)がいて、電話越しに声をかけてきた。妻とうまくやっているらしい。いつものごとく痛飲して帰宅したムーンドッグは、冷蔵庫からビールを取り出したところで卒倒してしまう。翌朝、キューバ出身の家政婦(Chela Arias)に床に倒れているのを発見され、介抱を受ける。ムーンドッグは頭に包帯を巻いたまま「ムーンドッグ」と書かれたボートに1人乗り込むと、右手に持った缶ビールを呷りながら、左手で舵を操り、妻の邸宅のあるマイアミへと向かう。ミニーは屋敷の岸壁に立ち、夫の到着を待っていた。久々に顔を合わせた2人は情熱的な時間を過ごす。ヘザーの結婚式当日、ムーンドッグは代理人のルイス(Jonah Hill)とともにゴルフ場にいた。お前の才能は無尽蔵で、俺のATMだと思ってたんだけどな。女と酒とかやり過ぎで才能を無駄にしてるよ。頭をショットガンでぶっ飛ばしてやろうか。今はな、別の才能のある奴との仕事で忙しいんだ。それにしても何で俺を式に呼ばないんだ? まあ、呼ばれても忙しくて出席できないけどな。ゴルフ場を後にしたムーンドッグはカフェで女を引っかけると、厨房脇の洗面所で行為に及んだ。ようやく式場に向かうムーンドッグに、ミニーは痺れを切らし電話してきた。今向かってるところさ、もう着くよ。ミニーは司会を任せたランジェリーに式を始めるよう促す。遅れてやってきたムーンドッグはなぜか車椅子の老婦人を伴っていて、車椅子を壁に向かって思い切り押しやると、ランジェリーからマイクを奪い、話し始める。
気儘に生きる詩人ムーンドッグ(Matthew McConaughey)と、彼の才能を信じる周囲の人々を描く。
妻のミニー(Isla Fisher)は、ムーンドッグの才能を高く評価する(例えば、"He's from another dimension."とぶっ飛んでる彼を受け容れるよう娘を説得する)ことで、彼の欠点を受け容れる。現在の社会に、ミニーの象徴するような許容性はあるだろうか。
作品そのものが"makes me feel beautiful"という効果を持つ詩として編まれているのかもしれない。
時系列になっているが、部分的に映像を切り分けて前後を入れ替えて繫ぐ編集が印象的。