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芸術鑑賞の備忘録

映画『エターナルズ』

映画『エターナルズ』を鑑賞しての備忘録
2021年製作のアメリカ映画。156分。
監督は、クロエ・ジャオ(Chloé Zhao)。
原案は、ライアン・フィルポ(Ryan Firpo)とカズ・フィルポ(Kaz Firpo)。
脚本は、クロエ・ジャオ(Chloé Zhao)、パトリック・バーリー(Patrick Burleigh)、ライアン・フィルポ(Ryan Firpo)、カズ・フィルポ(Kaz Firpo)。
撮影は、ベン・デイビス(Ben Davis)。
編集は、クレイグ・ウッド(Craig Wood)とディラン・ティチェナー(Dylan Tichenor)。
原題は、"Eternals"。

 

6つの特異点と開闢より前に、「セレスティアルズ」が存在した。「最高位のセレスティアル」であるアリシェムは、最初の太陽を創造し、世界に光をもたらした。 生命が誕生し、富み栄えた。全ては調和していた。
ディヴィアンツとして知られる不自然な種が宇宙の深淵から現われ知的生命体を捕食し始めると、宇宙は混沌とした。
自然の秩序の回復を目論見、アリシェムは、惑星オリンピアの不老の英雄「エターナルズ」をディヴィアンツ退治に遣わした。
エターナルズはアリシェムに対する揺るぎない忠誠心を持っていたが、エターナルの指導者エイジャックが画策したある計画によって、全てが変わった。

エターナルズを乗せた巨大な石板のような外観の宇宙船ドーモが地球に向かっている。10のエターナルズがアリシェムの像を前に集結する。指導者であるエイジャック(Salma Hayek)に像からメッセージが届く。時は来たとのエイジャックの合図に、全員が黄金の輝きによって装甲する。セルシ(Gemma Chan)は地球の美しさについて、傍にいたイカリス(Richard Madden)に訴えた。
紀元前5000年のメソポタミア。父子が海岸で漁をしていると、高台から逃げろと叫ぶ声が聞こえる。子供に避難するよう呼びかけた父親は、突然海から出現した怪物によって頭から呑み込まれてしまう。驚いて身動きのとれない子供を襲うディヴィアンツを飛来したイカリス(Richard Madden)が目から放つビームで撃退する。キンゴ(Kumail Nanjiani)は指先からエネルギーを発射し、テナ(Angelina Jolie)はあらゆる武器を生み出し、ギルガメッシュ(Don Lee)は腕力で、それぞれディヴィアンツを攻撃し、マッカリ(Lauren Ridloff)は高速で移動してディヴィアンツの攻撃から人々を守った。エイジャックは傷ついた仲間の傷を癒やし、セルシはダガーの素材を変質させて父親を失った少年に手渡す。
紀元前6世紀のバビロン。ディヴィアンツを退治した後、エイジャックはアリシェムと交信して使命を確認する。ファトス(Brian Tyree Henry)は蒸気機関を発明して人間に呈示しようとして止められ、犂を紹介するに留めた。スプライト(Lia McHugh)が空間に投影して見せる物語に、新バビロニアの民衆とともにキンゴも引き込まれている。セルシは灌漑に能力を発揮するなど、農民たちの生活に溶け込んだ。セルシとイカリスの距離は近づき結ばれて、4世紀のインドで挙式する。
1521年のテノチティトラン。ディヴィアンツとの戦いの最中、テナが突然、厖大な記憶の蓄積による障碍「マハド・ワイリー」に陥り錯乱状態となり、他のエターナルズを攻撃し始める。辛うじてディヴィアンツを殲滅し、テナの症状を押さえることにも成功した。エイジャックはテナが再びマハド・ワイリーを発症しないよう記憶を消去しようとするが、テナは拒否する。ギルガメッシュが責任を持って面倒を見ることを訴えて、他のエターナルズを納得させる。スペイン人のコンキスタドーレスがアステカ人を虐殺するのを見て、ドルイグ(Barry Keoghan)は兵士たちを止めようとマインド・コントロールする。エイジャックはディヴィアンツ以外で人類に介入することはできないと制止するが、ドルイグは承服せず姿を消す。エイジャックはディヴィアンツの掃討に成功した今、皆が行動をともにする必要は無くなったと解散を宣言する。
現在のロンドン。セルシは自然史博物館に向かう。デーン・ウィットマン(Kit Harington)が子供たちを相手に講義をしている様子を覗く。本当は最初から彼女に担当してもらうつもりだったんだ。デーンがセルシを迎え入れる。遅刻を詫びるセルシに、デーンがまた今夜と声をかけて部屋を出て行く。生徒がセルシを冷やかす。セルシは頂点捕食者について語り始める。突然、強い揺れに襲われ、子供たちを机の下に隠れさせる。巨大な石版が壁から倒れる瞬間、セルシは砂に変えて子供を救う。その晩、セルシはデーンとともにクラブにいた。セルシから遺物の指輪をプレゼントされ喜んだデーンは、改めて同棲を提案する。だがセルシは首を縦に振らず、デーンは落胆する。セルシのもとで暮らすスプライトに促され、3人は家路につき、川沿いの道を歩いていた。デーンに自分たちの事情を話すべきじゃないかとスプライトに言われ逡巡するセルシ。突然、川の中からディヴィアンツが姿を現す。500年前に絶滅したんじゃなかったのか! デーンが思わず叫ぶ。

 

知的生命体を捕食するディヴィアンツを退治するため、最高位のセレスティアルであるアリシェムによって地球に遣わされた10のエターナルズは、1521年に任務を完了して解散していた。21世紀のロンドンで暮らしていたエターナルズのセルシ(Gemma Chan)とスプライト(Lia McHugh)の前に、ディヴィアンツが突如姿を現した。かつて殲滅したディヴィアンツよりも強力で、言葉らしきものを発していた。救援に現われたイカリス(Richard Madden)とともに急場を凌ぐ。ディヴィアンツ退治の任務を遂行するため、セルシ、スプライト、イカリスは、指導者であるエイジャック(Salma Hayek)のいるサウスダコタに向かう。

以下、全篇について触れる。

オープニング・クロールでは、エターナルズは"immortal heroes"と説明されていたが、"immortal"は「不死」ではなく「不老」を表すようだ。
地球でのディヴィアンツ退治の任務を終えたマッカリ(Lauren Ridloff)は、惑星オリンピアへの帰還を待望していた。ところが、エイジャック(Salma Hayek)からエターナルズの指導者の立場を引き継いだセルシ(Gemma Chan)は、アリシェムとの交信の中で、惑星オリンピアの存在は虚構で、エターナルズは新しい天体を生み出すティアマットの栄養となる知的生命体を増殖させるためのロボットで、任務を完了するたびに記憶をメモリーに移し替えた上で消去されていたことを知る。故郷の不在を知るという形でエターナルズは故郷を喪失する。それは映画『ノマドランド(Nomadland)』(2021)に通じるテーマでもある。
エターナルズはティアマットの栄養となる知的生命体を増殖させるという目的のための存在である。スプライトは少女のままであることに耐えられず、寿命のある人間になる道を選ぶが、そこには「実存は本質に先立つ」ことへの希求がある。
啞者のマッカリ、「マハド・ワイリー」という精神障害に悩むテナ(Angelina Jolie)、同性愛者のファトス(Brian Tyree Henry)。ヒーローには様々なタイプが存在することを訴える。
テナ(Angelina Jolie)が発症した「マハド・ワイリー」は、記憶の消去が不完全であったために生じたものであったことが明らかにされる。テナを通じて、兵士のPTSD問題が取り上げられている。
ファトスが人間の文明に介入すべきであったと悔悟するきっかけとなるのはヒロシマであった。彼は同性パートナーと養子とを迎えて、人間に対する認識を改める。
セルシがディヴィアンツを樹木に変える場面があった。セルシ自身、どのようにして可能になったのかを把握していない。だが脅威となる存在を緑に返すことで退けるという発想は興味深い。