映画『ヴェノム レット・ゼア・ビー・カーネイジ』を鑑賞しての備忘録
2021年製作のアメリカ映画。98分。
監督は、アンディ・サーキス(Andy Serkis)。
原案は、トム・ハーディ(Tom Hardy)とケリー・マーセル(Kelly Marcel)。
脚本は、ケリー・マーセル(Kelly Marcel)。
撮影は、ロバート・リチャードソン(Robert Richardson)。
編集は、メリアン・ブランドン(Maryann Brandon)とスタン・サルファス(Stan Salfas)。
原題は、"Venom: Let There Be Carnage"。
1996年。聖エステス教護院。日増しに強まる力を制御できず不安に陥っているフランシス・バリソン(Olumide Olorunfemi)は、転院になることになった。フランシスの存在を心の支えとしていたクリータス・キャサディ(Jack Bandeira)は嘆き悲しみ、彼女に自作の指輪を贈る。クリーダスが窓から叫び声を上げる中、フランシスは警察車両に乗せられて連れ去られる。フランシスは、護送に当たっていた警察官パトリック・マリガン(Sean Delaney)に破壊的な大音響を浴びせる。左耳を傷めたマリガンが発砲し、左目に被弾したフランシスは横転した車両の後部扉から転げ落ちた。パッツォ博士(Sian Webber)はフランシスをレイヴンクロフト研究所に運び入れて拘禁する。
現在。マリガン刑事(Stephen Graham)は、収監されている連続殺人犯クリータス・キャサディ(Woody Harrelson)から余罪の手がかりを得るため、ジャーナリストのエディ・ブロック(Tom Hardy)に聴き取りを依頼する。クリータスはエディ以外の面会を拒絶していたためだ。エディは断るが、エディを宿主とする地球外生命体ヴェノム(Tom Hardy)がエディの体から頭を伸ばし、鋭い歯の並ぶ口を開けて背後からマリガン刑事の頭を食べようとする。人間の脳に飢えて苛つくヴェノムは、エディをトイレの個室に押し込むと、卯建が上がらない状況を打開するためにマリガン刑事の依頼を引き受けるよう強要する。サン・クエンティン刑務所を訪れたエディは、ヴェノムが看守らに浴びせる罵声を誤魔化しながら、クリータスに面会する。よく来た、エディ・ブロック。ファンに俺からのメッセージを送ってくれ。見返りに俺の人生をやるよ。世の中の連中ってのは殺人鬼に興味があるんだ。メッセージって何なんだ? 「あの遠い 聖堂だけが 目に映る 別れた天使 片割れは俺」 何なんだ? 誰も読まないだろう。俳句なのか? 記事にしろ。それで俺のものはお前のものだ。そうか、喜んでいいんだよな。立ち去ろうとするエディをヴェノムが引き留める。ヴェノムは、クリータスが独房の壁に書き込んだものを目に焼き付けるようアドヴァイスする。エディが帰宅すると、ヴェノムがエディの腕を操って、独房の壁に描かれたものを紙に再現していく。教会の建物、樹木など。その中に海岸の景色があった。該当する海岸をインターネットで特定することができた。レイヴンクロフト研究所に拘禁されているフランシス・バリソン(Naomie Harris)は食事とともに運ばれた新聞の1面にクリータスのメッセージを目にして喜ぶ。クリータスの被害者の遺体が新たに発見された。エディの通報が発見の端緒であったため、エディはジャーナリストとして脚光を浴びることになった。エディはヴェノムが脳を喰らいたいとうるさいので、部屋に飼っている鶏を食べるように勧めるが、情が湧いたらしく断られる。チェン(Peggy Lu)の食料雑貨店に向かい、チョコレートを与えようとするが、売り切れだった。養鶏場へ向かうがヴェノムは満足しない。悲鳴を聞きつけ、男(Rob Bowen)が女性(Michelle Greenidge)を襲っているものと駆け付けるが、悪人は既に女性に撃退されていて、ヴェノムは捕食を諦める。欲求不満のヴェノムが街中で暴れていると、電話が鳴る。エディは想いを寄せるアン・ウェイング(Michelle Williams)から会いたいと言われる。
ジャーナリストのエディ・ブロック(Tom Hardy)は、本人からの指名を受けて、死刑囚の連続殺人犯クリータス・キャサディ(Woody Harrelson)の単独インタヴューを行なっていた。エディの体内に棲み着いている地球外生命体ヴェノム(Tom Hardy)がエディの体から勝手に飛び出してクリータスを殴りつけてしまい、インタヴューは永久に中断されることになってしまった。クリータスの死刑が執行されることになり、薬剤の注入が始まると、クリータスの体に異変が生じ始める。
以下、全篇について触れる。
第1作の『ヴェノム(Venom)』(2018)は未見。ヴェノムが凶悪なヴィジュルであるため、問答無用に人間を捕食するのかと思いきや、エディ・ブロックに予想外に飼い慣らされている(但し、エディ・ブロックもまた能力の極めて高いヴェノムの言いなりなので、共依存である)。2人の掛け合いとドタバタを描くコメディ要素の強い作品であった。とりわけ、常に毒を吐きながらも煽てに弱いところが異形のヴェノムが受け容れられている所以か。
カーネイジの宿主クリータス・キャサディにはフランシス・バリソンというフィアンセがいる。しかもフランシスは、カーネイジやカーネイジの母胎(否、「父親」と呼ばれていた)であるヴェノムが苦手とする大音響を発する力を備えており、反りが合わない。クリータスはカーネイジの宿主として必ずしもふさわしくないのだ。それに対しエディ・ブロックは、想いを寄せるアン・ウェイングが医師のダン・ルイス(Reid Scott)と婚約し、心の隙間がある。それがヴェノムの宿主としての好条件となっているようだ。
「ボニーとクライド(Bonnie and Clyde)」に擬えられているクリータス・キャサディとフランシス・バリソンとは、若い時分に相思相愛になりながら引き裂かれた。2人は再会を果たし、結婚式を挙げようとする。お互いに対する愛情の純粋さは、残念ながら他者に対しては非情さ・冷酷さに転じてしまう。
テンポ良く展開する。その分、フランシス・バリソンやパッツォ博士のエピソードがなおざりになっていた。
Tom Hardy出演作としてはハード・ボイルドな『欲望のバージニア(Lawless)』(2012)を、Woody Harrelson出演作としては『スリー・ビルボード(Three Billboards Outside Ebbing, Missouri)』(2017)と『ガラスの城の約束(The Glass Castle)』(2017)を勧めたい。