映画『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』を鑑賞しての備忘録
2021年製作のアメリカ映画。
108分。
監督・脚本は、ウェス・アンダーソン(Wes Anderson)。
原案は、ウェス・アンダーソン(Wes Anderson)、ロマン・コッポラ(Roman Coppola)、ヒューゴ・ギネス(Hugo Guinness)、ジェイソン・シュワルツマン(Jason Schwartzman)。
撮影は、ロバート・イェーマン(Robert D. Yeoman)。
美術は、アダム・ストックハウゼン(Adam Stockhausen)。
衣装は、ミレナ・カノネロ(Milena Canonero)。
音楽は、アレクサンドル・デスプラ(Alexandre Desplat)。
編集は、アンドリュー・ワイスブラム(Andrew Weisblum)。
原題は、"The French Dispatch of the Liberty, Kansas Evening Sun"。
印刷された新聞がベルト・コンベヤーを流れていく。
アメリカ合衆国カンザス州の地方紙『ザ・リバティ カンザス・イヴニング・サン』の、フランスはアンニュイ=シュール=ブラゼに所在する支社。バランスをとりながらトレイに飲み物を載せたウェイター(Pablo Pauly)が1階から最上階へと向かう。
もともとは「休日版」でした。アーサー・ハウウィツァー・ジュニア(Bill Murray)が大学生になった頃、グレート・プレーンズでの明るい未来から逃れようと必死で、『ザ・リバティ カンザス・イヴニング・サン』のオーナーである父親に、日曜版『サンデー・ピクニック・マガジン』の読者向けの旅行記の連載を通じて家族経営を学ぶからと、大西洋横断の費用を出させることに成功しました。10年間にわたり、彼は海外在住ジャーナリストの精鋭チームを編成し、『ピクニック』紙を『ザ・フレンチ・ディスパッチ』紙へと変え、国際情勢、芸術、ファッション、極上の料理や酒といった、遙か彼方で繰り広げられる多様なニュースを毎週報じました。彼はカンザスの人々に世界がどんなものか教えたのです。彼の集めた作家たち―ベレンセン(Tilda Swinton)、サザレク(Owen Wilson)、クレメンツ(Frances McDormand)、ライト(Jeffrey Wright)―の著作は、アメリカにある主要図書館には必ず並んでいます。1分あたりに書く文の質が最も高いことで知られる記者。一度も記事を完成させなることなく30年間陽気な姿を現す記者(Wally Wolodarsky)。他人の目を使って鋭く書く実は盲目の作家。間違いなく最高の文法の専門家(Elisabeth Moss)。ハーミス・ジョーンズ(Jason Schwartzman)による表紙。アーサー・ジュニアは、作家たちを極めて丁重にもてなす一方、他のスタッフにはそれほど親切ではありませんでした。
アーサー・ジュニアがハーミス・ジョーンズの描くイラストを見る。何だこれは! 七面鳥がいるな。すべてをぶち込んでローストしよう。
彼の財務管理システムは複雑でしたが機能していました。
今後15年間、1語につき5セントと比較して、週に150フランを支払う。経費を差し引くがね。
彼が最も頻繁に用いた執筆に関するアドバイスは、典拠不明のようですが、単純なもので…
意図して書いたかのように読めるように書けば良いんだ。
彼の『リバティ』紙への復帰は、彼の出発からちょうど50年後、彼の葬儀のときです。それまでに、『フレンチ・ディスパッチ』紙は50か国で50万人以上の定期購読者を獲得します。柳の籠にピンや銘板、顕彰を入れたものを、アンドレッティのタイプライターなど執筆に用いた愛用品とともに埋葬されます。彼は編集者に相応しく葬られました。彼の遺言によれば、死後直ちに…
『フレンチ・ディスパッチ』紙は解散・精算するものとする。オフィスは引き払って売却するものとする。スタッフには十分なボーナスを支払い、契約を解除し、『フレンチ・ディスパッチ』紙の発行は永久に停止するものとする。
こうしてアーサー・ジュニアの死亡記事は、『フレンチ・ディスパッチ』紙の終刊を告げるものともなります。もちろん、定期購読者宅配の読者に対しては返金が行なわれます。彼の墓碑銘は、彼のオフィスのドアの上に固定されたステンシルで記されたプレートから逐語的に採用されます。
アメリカ・カンザス州の『ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン』紙には、フランス・アンニュイ=シュール=ブラゼにある編集部で『ザ・フレンチ・ディスパッチ』紙を発行し、世界50か国に50万人を超える読者がいる。創刊編集長のアーサー・ハウウィツァー・ジュニア(Bill Murray)の急死に伴い、彼の遺言に従い、廃刊が決まる。最終号は、編集長を追悼し、サザレク(Owen Wilson)によるアンニュイ=シュール=ブラゼの今昔に関するレポートの他、ベレンセン(Tilda Swinton)、クレメンツ(Frances McDormand)、ライト(Jeffrey Wright)による記事が掲載されることになった。
創刊編集長の死亡に伴い廃刊となる雑誌の終刊号の記事という体裁をとった、ウェス・アンダーソンのもとに集結した名優たちによるオムニバス。活人画のような映像を挟んだり、左右や前後に流れていくカメラワーク、模型を用いたシーンやアニメーションの導入、モノクロームとカラーとの切り替え(ある女優の目を見せるシーンなど印象的)など、様々な技法・スタイルを駆使した映像が次から次へと畳み掛けてくる情報量の多い作品(フランス語のセリフには英語の訳文まで作品内に表示されていく)。逃走する犯人を追いかけようと猛スピードで街を縫うパトカーに乗せられているように、観客は必死で付いてくほかない。無論、楽しい体験ではあるのだが。
Léa Seydouxに叱られるBenicio Del Toroが羨ましい。
映画『シェイプ・オブ・ウォーター(The Shape of Water)』のSally Hawkinsっぽい役柄の女優がFrances McDormandだったとは。