映画『ウエスト・サイド・ストーリー』を鑑賞しての備忘録
2021年製作のアメリカ映画。
157分。
監督は、スティーブン・スピルバーグ(Steven Spielberg)。
原作は、脚本アーサー・ローレンツ(Arthur Laurents)、音楽レナード・バーンスタイン(Leonard Bernstein)、作詞スティーヴン・ソンドハイム(Stephen Sondheim)のブロードウェイ・ミュージカル『ウエスト・サイド物語(West Side Story)』。
脚本は、トニー・クシュナー(Tony Kushner)。
撮影は、ヤヌス・カミンスキー(Janusz Kamiński)。
美術は、アダム・ストックハウゼン(Adam Stockhausen)。
オリジナル振付は、ジェローム・ロビンス(Jerome Robbins)。
振付は、ジャスティン・ペック(Justin Peck)。
作詞は、スティーブン・ソンドハイム(Stephen Sondheim)。
音楽は、レナード・バーンスタイン(Leonard Bernstein)。
編集は、マイケル・カーン(Michael Kahn)とサラ・ブロシャー(Sarah Broshar)。
原題は、"West Side Story"。
瓦礫を囲うフェンスに「スラム浄化のためニューヨーク住宅公社によって購入された」との看板が取り付けられている。近々建設開始予定の「リンカーン・センター」の完成予想図が併せて掲示されている。
ニューヨーク西64番街・65番街の路地。アイス(Kyle Coffman)が地下室の扉を開けると、エイラブ(Jess LeProtto)に向かってペンキの缶を投げ渡す。エイラブはディーズゥ(Kevin Csolak)とアクション(Sean Harrison Jones)に缶を回す。ペンキの缶を手にした4人は通りを抜けていく。取り壊された集合住宅の瓦礫の中にクレーン車がある。口笛を吹くと中からリフ(Mike Faist)が現れ、その後からグラツィエラ(Paloma Garcia-Lee)が姿を見せた。リフを加えた若者たちは、所々で悪戯しながらも、警官には咎められないような慎重さを示して通りを進む。ドクの薬局で合図を送ると、スノウボーイ(Myles Erlick)、タイガー(Julian Elia)、マウスピース(Ben Cook)、ビッグディーウ(John Michael Fiumara)が飛び出してくる。さらに途中でボウカン(Kyle Allen)、ナンバーズ(Harrison Coll)、スキンク(Garett Hawe)、リトゥモーリィ(Daniel Patrick Russell)、ベイビージョン(Patrick Higgins)が加わり、リフの率いるストリートギャング「ジェッツ」のメンバーが揃う。彼らはペンキの缶をお互いに投げ回し、時々通行人を威嚇したり、自動車の通行を妨げながら、北へ向かう。交差点を越え、スペイン語の看板で溢れた西68番街に入る。再開発の波はこの街区にも押し寄せようとしていて、移転反対のビラが目に付く。タイガーとボウカンは、アイリッシュ・パブの看板に取り付けられたクレオール料理レストランの看板を取り外して、飛び出してきたオーナーに怒鳴られる。
ジェッツのメンバーが、巨大なプエルトリコ国旗を描いた壁のある公園に到着する。エニバディズ(Iris Menas)がジェッツに加わろうとやって来るが、リフに追い払われる。リフは壁の国旗に向けてペンキを投げつける。他のメンバーたちも次々とペンキを国旗に塗りたくっていく。そこへプエルトリコ出身者で構成されるストリートギャング「シャークス」のメンバーが駆け付ける。ブラウリオ(Sebastian Serra)、キケ(Julius Rubio)、チャゴ(Ricardo Zayas)、マノロ(Kelvin Delgado)、セバス(Yurel Echezarreta)、アニバル(David Aviles Morales)、チューチョ(Carlos E. Gonzalez)、フリート(Adriel Flete)ホチ(Andrei Chagas)、ピーポ(Carlos Sanchez Falu)、フラーコ(Ricky Ubeda)、ジュニオル(Jacob Guzman)、ティーノ(David Guzman)。キケがシャークスのメンバーを嗾け、ジェッツの若者たちに向かって突進する。アニバディズがジェッツに向かってシャークスが襲って来たことを知らせるが、ブラウリオによって呆気なく殴り倒される。シャークスとジェッツの乱闘が始まった。
1950年代後半のアメリカ。マンハッタン。白人の若者のストリート・ギャング「ジェッツ」の一味は、プエルトリコ出身の若者で構成される「シャークス」を地元から排除しようと、プエルトリコ系住民の多く暮らす一帯の公園の壁に描かれたプエルトリコ国旗を塗り潰しに向かう。国旗にペンキを塗り始めたところへ駆け付けたシャークスのメンバーと乱闘になる。パトカーでクラプキ巡査(Brian d'Arcy James)が駆け付け、片言のスペイン語も交えながら仲裁に入る。乱闘は収まったものの言い争いは続く。シュランク警部補(Corey Stoll)がニューヨーク市のスラム浄化のために縄張り争いしている地域が消えることを伝え、無駄な抗争を止めるよう命じる。ジェッツを率いるリフ(Mike Faist)は決着を付ける腹を固め、ダンスパーティーでシャークスをまとめるベルナルド(David Alvarez)に決闘を申し込むことにする。リフはヴァレンティーナ(Rita Moreno)の経営するドク薬局に向かい、そこで彼女の好意で住み込みで働く元メンバーのトニー(Ansel Elgort)に助力を頼む。だが、トニーはこれまでとは違う生き方をしたいとつれない。ベルナルドとダンス・パーティーに向かう恋人アニタ(Ariana DeBose)は、ベルナルドの妹マリア(Rachel Zegler)を伴う。ダンス・パーティーに遅れて姿を現したトニーは、マリアを見て一瞬にして恋に落ちる。
ダンス・パーティーに参加するマリアはいつまでも子供扱いされるのが嫌で、幼い雰囲気の白いドレスが気に入らない。アニタが自分の身につけていた赤いベルトをマリアの腰に巻き付けて、一瞬にして彼女の雰囲気を変えてしまう。それはマリアが兄ベルナルドにばれないように口に付ける口紅のラインであり、少女から大人へと境界を越えたことを示す。
ダンス・パーティーでは、白人とプエルトリカンの前哨戦のような群舞が圧巻。だが、トニーとマリアがお互いの姿を認めた瞬間、そのスペクタクルが一瞬にして後景に退けられてしまう。運命の出会いをまざまざと観客に伝える。
プエルトリカンの男女が街を舞台に繰り広げる群舞「アメリカ」も魅力的。交通も止まろうというもの。
アニタを演じたAriana DeBoseが強い印象を残す。
ジェットとシャークス。だが彼らはお互い相手を排斥し合う必要があるのか。本当に戦うべき相手は誰なのか。1961年に1度映画化されたミュージカルを今になって再度映画化した意味は、米墨国境の「壁」が象徴する問題について示唆するものがあると監督が考えたからだろう。