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芸術鑑賞の備忘録

映画『マリー・ミー』

映画『マリー・ミー』を鑑賞しての備忘録
2022年製作のアメリカ映画。
112分。
監督は、カット・コイロ(Kat Coiro)。
原作は、ボビー・クロスビー(Bobby Crosby)の漫画『Marry Me』。
脚本は、ジョン・ロジャース(John Rogers)、タミー・セイガー(Tami Sagher)、ハーパー・ディル(Harper Dill)。
撮影は、フロリアン・バルハウス(Florian Ballhaus)。
美術は、ジェーン・マスキー(Jane Musky)。
衣装は、キャロライン・ダンカン(Caroline Duncan)。
編集は、マイケル・バーレンバウム(Michael Berenbaum)とピーター・テッシュナー(Peter Teschner)。
音楽は、ジョン・デブニー(John Debney)。
原題は、"Marry Me"。

 

じゃあ、もう1回頭から。「キャット」の愛称で知られる歌姫キャタリーナ・ヴォゥデース(Jennifer Lopez)が、スタジオでダンサーを従え、新曲「マリー・ミー」のリハーサルを行なっている。
ホダ・コッビー(Hoda Kotb)がアンカーを務めるテレビの情報番組。前例のない快挙です。明日の夜、スーパー・スターのキャット・ヴォゥデースとグラミー賞受賞者のバスティアン(Maluma)が、最新ヒット「マリー・ミー」をデュエットし、世界中の人々を前に結婚の誓いを交わします。
バスティアンがコメントする映像が流れる。彼女は10,000個のクリスタルビーズを鏤めたズハイル・ムラドのガウンを身につけるって。すごく有り難いね、全てがこんな調子で進んで。協力的で愛情ある美しい婚約者がいる。アメリカのファンには感謝してるよ、僕とキャットを温かく応援してくれて。
「マリー・ミー」が席捲しています。キャット・ヴォゥデースとバスティアンは明日の夜、ニューヨーク市のステージで結婚の誓いを立て、プライベート・リゾートに飛んで美しい音楽を制作することになっています。ジャスティン・シゥベスター(Justin Sylvester)がリポートする。ツアーの終了が新生活のスタート。こちらは、キャットのマネージャー、コリン・キャロウェイ(John Bradley)です。ステージでの結婚式はバスティアンのアイデアだとか。いや、2人とも何かファンに恩返しがしたかったんです。2千万人を超える人がオンラインで参加するとか。ええ、もちろん知ってます。マネージャーなので。花嫁介添人は誰が? 彼女の元夫たちは? 彼らは観客の中にいますか? 人を待たせているのでそろそろ行かないと…。
事務所ではスタッフが慌ただしく駆け回っている。ソファで休んでいるキャットのもとにメリッサ(Michelle Buteau)がやって来る。パスカーレ・ブルーニからの贈り物です。気に入らなければもらいます。メリッサの開いたケースには豪華なネックレスが収められている。新婚旅行の荷物に入れておいて。沢山の花を初めとした結婚祝いの品々も続々と届く。また花が届いた。尋常じゃないわね。何てことないですよ。結婚祝いで一杯の駐車場のヴァンには調理用のコンロもあります。誰がコンロを? ファンからです。私がコンロを持っていないとでも?
チャーリー・ギゥバート(Owen Wilson)がキッチンで娘の弁当を用意している。うまく出来たけど判断するのは僕じゃ無いからな。チャーリーがルゥ(Chloe Coleman)の頭を撫でる。髪をぐしゃぐしゃにしないでよ。幸運のおまじないなんだけどな。それってすごく昔のことでしょ。1月前くらいだと思うけど。すごくないか、同じ学校に通うなんてさ。…まあ、すごいね。多分そんなに頻繁には見かけないと思う。困ることがあるかもしれないけど、いつでも会いたくなったらさ…。ならない。独立心旺盛で感心感心。いつも後を付いてまわってる生徒って、エスター(Taliyah Whitaker)だろ? 何を隠そう、エスターは我が数学クラブの一員なのだ。でもね、入部しなきゃってプレッシャーはかけたくない。入部するつもりないよ。
学校の近くまで一緒に歩いてきたチャーリーとルゥ。ルゥが父親から離れて一人で先を歩いて行く。一人で大丈夫か? もちろん。一人でお願いしようとおもってたところさ。生徒たちの人気のために一人で歩けたらって。愛してるぞ! チャーリーがルゥの後ろ姿に向かって声を張り上げる。
放課後の教室。チャーリーが数学クラブの生徒たちに声をかけている。サッカーが得意かもしれないし、陸上競技が得意かも知れない。でも、数学クラブとなると…。後ろに気をつけろ! クーリッジ・πソンズ・アタック! 生徒たちが声を合わせる。我々の数字は? 3.141592…。チャイムが鳴り、クラブ活動は終了。円周率の続きを口にするパーシー(Ryan Foust)にもういいよと告げる。教室を出て行く生徒にチャーリーが声をかける。忘れるなよ、問題に浸れば答えは出る。今日はよくやった。たまらない充実感だよ。これがあればマサロンの決勝でも必ず勝つ…。あ、エスター、時間ある? うん。ルゥはどう? うまくやってる? そうだね。ルゥは数学が得意だから、いずれπソンズに入部したいって言い出すんじゃないかってさ。ルゥは前の学校でマサロンの決勝に出たから。本当? そんなこと言わなかったけど。分かってると思うけど、それが問題でさ。引っ込み思案だから。そんなことないよ。休みの話もしてくれたし、デイヴィッドとかって男の話も。デイヴィッド? 僕の別れた妻の新しい夫のことかな? 彼について何て言ってた? エスターが言い淀む。大したことじゃないから気にしないで。それでもいい、教えてくれないか。彼が凄い人で、何をしても格好いいって。面白い人だって言うんだろ。そう。ありがとう、エスター。エスターが教室を出て行く。そう言えば洞窟に潜るとかって。どこでだ?
階段の踊り場でチャーリーがルゥがエスターたちと話しているのを眺めている。同僚のパーカー(Sarah Silverman)がこんなところで娘を覗き見してると揶揄う。覗き見してなんかない。距離を取って眺めてるだけだよ。ルゥは前の学校で苦労したからね。彼女がうまくやってるか確かめたいだけだよ。それでうまくやってる連中と付き合えると思ってるわけ? 君は生活指導のカウンセラーとして模範を示すことになってるだろ。私は見た目と雰囲気だけで最高の模範になってるの。同僚のピッツ(Stephen Wallem)が着信を鳴らしながら通りがかる。「マリー・ミー」を着信にしてるの? 「マリー・ミー」って何? キャットとバスティアンの新曲よ。あなたたちせいぜい地団駄踏む事ね。私は新しい彼女のロキシーと彼女の元カノを連れてコンサート・ウェディングに行くんだ。

 

「キャット」の愛称で知られる歌姫キャタリーナ・ヴォゥデース(Jennifer Lopez)がバスティアン(Maluma)とデュエットした新曲「マリー・ミー」が大ヒット。彼女のコンサート・ツアーの最終日に、2人が共演したステージで結婚式を挙げるとのニュースが世間を大いに賑わせている。
数学教師のチャーリー・ギゥバート(Owen Wilson)は、別れた妻との間の娘ルゥ(Chloe Coleman)との関係をうまく築くことができずにいる。恋人にフラれた同僚のパーカー(Sarah Silverman)から3人で行くはずだったキャットのコンサート・ウェディングに行こうと誘われたチャーリーは渋っていたが、娘に対する株を上げるチャンスだと説得され、3人でコンサートに向かう。
キャットのツアー・ファイナルは順調に進行。ところが、その最中に、バスティアンがキャットの付き人であるタイラ(Kat Cunning)と関係を持っているとの衝撃的なスクープが出回った。マネージャーのコリン・キャロウェイ(John Bradley)が動揺する様子にキャットが気付き、バスティアンとタイラの裏切りを知る。結婚の誓いをするためにステージに上がるまでの僅かな時間にキャットは大きな決断をしていた。ステージに立ったキャットは静かに観衆に語りかけ始める。

歌姫キャットを演じるJennifer Lopezの説得力には舌を巻く。それに対して、人の良い朴訥な数学教師チャーリーを演じるOwen Wilsonが自然で嫌みが無い。2人によって漫画的ストーリー(否、原作は漫画であるようだ)に生気が吹き込まれた。テンポの良い展開で、誰でも楽しめる作品となっている。
キャットに常に記録のカメラがついて回っている。チャーリーが戸惑うのも当然だろうが、そのような環境にいれば慣れてしまうものなのだろうか。