可能性 ある 島 の

芸術鑑賞の備忘録

映画『炎のデス・ポリス』

映画『炎のデス・ポリス』を鑑賞しての備忘録
2021年製作のアメリカ映画。
107分。

監督は、ジョー・カーナハン(Joe Carnahan)。
原案は、マーク・ウィリアムズ(Mark Williams)とカート・マクロード(Kurt McLeod)。
脚本は、カート・マクロード(Kurt McLeod)とジョー・カーナハン(Joe Carnahan)。
撮影は、フアン・ミゲル・アスピロス(Juan Miguel Azpiroz)。
美術は、ジョン・ビリントン(Jon Billington)。
衣装は、ジェイナ・マンスブリッジ(Jayna Mansbridge)。
編集は、ケビン・ヘイル(Kevin Hale)。
音楽は、クリントン・ショーター(Clinton Shorter)。
原題は、"Copshop"。

 

ネヴァダ州。沙漠地帯の切り立つ崖の手前にトレーラーのハンバーガー・ショップが出店している。近くに停車したパトカーの脇では、警察官のヴァレリー・ヤング(Alexis Louder)がホルダーからピカピカの銃を取り出しては構え、その感触を楽しんでいる。刑事部長のデュエイン・ミッチェル(Chad L. Coleman)がチーズ・バーガーと箱を手に戻ってきた。それは何? 何って何が? リボンのついた箱。娘のサーシャがあと2日で21になるんだ。クレムの兄がラフリンで大した出物を手に入れやがってな。拳銃をプレゼントするわけ? 21だって言ったろ。キッチン・トレーラーで拳銃を買ってあげるのね。クレムの店じゃ寿命を縮めるものが揃いますって。チーズバーガーに拳銃。クレムは弾丸も揚げてくれるの? かもな。近頃じゃ何でも揚げちまう。21で銃なんて持たなかったわ。何言ってんだお前は。そのルガーはいくらなんだ。1800年代のケツからある回転式だろ、21世紀にドンパチじゃクソの役にも立たねえさ。これはね、道具じゃないの。芸術なの。パトカーの無線が入る。何てこった。落ち着いてメシも食えねえ。
沙漠を抜ける道は渋滞している。その中を猛スピードで抜けていく1台の車、そのダッシュボードには赤い回転灯が灯る。煙を上げる車は、脇道に逸れたところで動かなくなる。畜生! 運転していたテディ・マレット(Frank Grillo)が車を路肩に乗り捨てる。ひたすら歩き、駆けるうち、いつしか日が落ちる。
ヴァレリーとデュエインが無線で駆け付けたインディアン・スプリングス・カジノの前は、暴れる連中と見物・撮影する野次馬で混乱している。食事を終えさせてあげる、私が対処するわ。任せた。俺は腹いっぱいじゃないと役に立たないからな。ヴァレリーはパトカーを降り、やめなさいと繰り返し叫びながら群衆の中に入っていくが、騒ぎは収まらない。ヴァレリーが威嚇射撃をする。留置場で過ごしたいのは誰? そのとき、テディがヴァレリーに飛びかかり殴り倒す。野次馬がどよめく。テディはそこまでするつもりじゃなかったと謝り、逮捕してくれと訴える。デュエインが銃を構えて地面に伏せるようテディに命令する。ヴァレリーも起き上がり、テディに対峙する。どっちでもいいから逮捕してくれないか。ヴァレリーはテイザー銃を発射し、電流でテディの動きを封じると、手錠をかける。
ガンクリーク警察署。ヴァレリーとデュエインがテディを連行する。受付のキンボール(Robert Walker Branchaud)が迎え入れる。2人がカウンターにテディを押さえつけ、彼から押収したバッグをキンボールに示す。お土産。未明には相応しい。バッグの素晴らしい青と言ったら。話させてくれ。放させてあげる、檻の中にね。目をどうしたんだ? キンボールがヴァレリーに尋ねる。この魅力的な男にね。こいつは女を殴ったのか? ヴァレリーは押さえつけていた男の脇腹から出血しているのに気が付く。こいつ、撃たれてますね。下に連れて行って、縫ってやれ。デュエインがヴァレリーに応急処置を任せる。
事務室では、3人の警察官が雑談して笑い転げている。デュエインが見咎めて叱り飛ばす。先週、残業の時間がとれねえとかほざきやがって、くっちゃべってる暇があんのか、クソばばあどもが。仕事しろ! 3人とは別に座っているヒューバー(Ryan O'Nan)にデュエインが怒鳴りつける。証拠目録はどうしやがった? 2週間ずっと処理しろって言ったよな。やってますよ。やってます。お前の戯言は聞きたくねえんだよ。終わらせろ。
暗い中、路肩に放置された自動車を2人の警察官が調べに来た。警察車両みたいですね。やたら被弾してます。窓も割れてますね。ライトを車に当てながら若い警察官(Marco Morales)が言う。年配の警察官(Keith Jardine)が無線で連絡を入れる。ガンクリーク警察署では、受付のキンボールが席を外していたため、デュエインが無線に対応する。キンボールが慌ててトイレから受付に戻る。赤色回転灯をダッシュボードに載せたクラウン・ヴィックを発見。ナンバーなし。弾痕多数。交信中、何やら様子がおかしい。自動車が2人の警察官が捜査中の車両に突っ込んできた。2人は危うく轢かれかけるが、事なきを得た。車両から出てきた男(Gerard Butler)に動かないよう命令する。男は酔っぱらっていた。デュエインの指示で、警察官が男をガンクリーク警察署に連行する。
ヴァレリーはテディの脇腹から銃弾を摘出した。誰かに狙われてる。だから逮捕されようとしたわけね。警察官を襲ったってことは、加重暴行。12年から18年は塀の中にいることになるわ。

 

ネヴァダ州。司法長官ウィリアム・フェントン(Dez)の暗殺がメディアを賑わせている。ガンクリーク警察署所属の警察官ヴァレリー・ヤング(Alexis Louder)と刑事部長デュエイン・ミッチェル(Chad L. Coleman)は警邏中に無線を受信し、インディアン・スプリングス・カジノでの騒乱を収拾するため現場に急行する。威嚇射撃したヴァレリーに暴行を働いたテディ・マレット(Frank Grillo)は自ら逮捕を要求する。署に連行したテディの脇腹には銃創があり、ヴァレリーはテディが進んで逮捕されたのは留置所をシェルターにするためだったことに気付く。放置された警察車両の捜査に当たっていた警察官(Keith Jardine, Marco Morales)は、危うく酩酊した運転手(Gerard Butler)に轢かれそうになった。署に連行された運転手は氏名不詳のまま泥酔者(Marshall Cook)と同じ牢に収監された。向かいの牢に入れられていたテディはその男が自分をターゲットにする暗殺者ボブ・ヴィディックであることを知る。

警察署内のテレビに映る、司法長官ウィリアム・フェントン殺害事件のニュース。この事件と、煙を出す警察車両で逃走するテディ・マレットとが関係している。
テディを消すために雇われたボブ・ヴィディックは、留置所に逃げ込んだテディを仕留めるため、泥酔者を装って収監される。ボブは目的を達成するために手段を選ばない。そんなボブをテディはサイコパスだと評するが、ボブは職務に忠実なだけでサイコパスではないと否定する(見れば違いが分かると、本物のサイコパスが登場する伏線を張っている)。テディの犯罪者用の鉄柵の牢とボブの泥酔者用の鉄柵の牢とは別れているが、通とを隔てて向かい合っている。テディはヒットマンが目の前で自らを付け狙っていることで緊張を強いられる。
風船販売業者として警察署にやって来るアンソニー・ラム(Toby Huss)もまたテディの刺客である。一見人情味情溢れる熟練労働者風のアンソニーは、風船を持って現れ、甲高い声で愉快そうに言葉を発する道化師のように振る舞う。誰彼構わず嬉々として殺害するアンソニーは次に何をしでかすか分からない魅惑的なキャラクターである(警察署を訪れるまでの彼をスピンオフで描くことも期待できそうだ)。彼の存在が牢に繋がれているテディ、ボブ、そして彼らを見張るヴァレリーの関係に変容を迫る。
アンソニーは「トニー」と呼ばれたがるが、ボブは「アンソニー」と呼び続ける。
アンソニー・ラムの役名は、『羊たちの沈黙(The Silence of the Lambs)』(1991)と主演男優のAnthony Hopkinsからだろうか。アンソニーはテディが長髪を後ろで結わえているのを見て、男が一番やっちゃいけないスタイルだと揶揄しておいて、誰も見ちゃいないサムライ映画のTom Cruiseのようだと付け加えているのを始め、映画や俳優への言及はいろいろと盛り込まれている(太ったヒューバーに、ビーチで楽しむChris Hemsworthみたいになりたくないのか、など)。