可能性 ある 島 の

芸術鑑賞の備忘録

展覧会『動物会議 緊急大集合!』

展覧会 ギンザ・グラフィック・ギャラリー第393回企画展 DNPグラフィックデザインアーカイブ収蔵作品より 動物会議 緊急大集合!』
ギンザ・グラフィック・ギャラリーにて、2023年2月9日~3月25日。

DNPグラフィックデザインアーカイブの中から、エーリッヒ・ケストナー(Erich Kästner)の『動物会議(Die Konferenz der Tiere)』が訴える「人間と動物との共存と平和」を体現しているポスター作品を紹介する企画。

佐藤卓のPLEATS PLEASE ISSEY MIYAKEのポスターは、シワにならずコンパクトに収納・携帯が可能な衣服であることを、動物などに造形した製品だけを白い画面に表現したもの。「ANIMALS」(2015)シリーズでは、羽を後ろで交差させ俯くペンギンや丸まって横になるネコなど、後ろ姿が映し出される。とりわけ白一色のプリーツのホッキョクグマは、頭部の表現が全くない(頭部が全く見えない)にも拘わらず、ホッキョクグマを認識させ、なおかつ何処かへ立ち去る姿に哀愁があり、その行方が気になる。

福島治が手懸けた山の手事情社の舞台『平成・円朝・牡丹灯籠』(2001)のポスターは、赤い横線により埋め尽くされた画面がその濃淡の違いにより中央で等分され、左側に2匹、右側に1匹のクラゲがぼんやり浮かび上がる。漂うクラゲがお露すなわち幽霊を、さらには彼女のアトリビュートである牡丹灯籠を象徴し、3つ配することでその繰り返しの出現を、無数の赤い線が闇の中の光や、中央に現れる縦のラインが幽冥界との境界を暗示する。

服部一成の《伊藤若冲讃江》は、伊藤若冲に贈られた楽屋のれんを想定したポスター。若冲の代表作の1つである《象と鯨図屏風》の左隻のクジラを、画面下部の3本の線で表わした波の上に覗く黒い半球で、クジラが吹く潮をそこから上へ向かうラッパ(漏斗)状の線で表わしている。《象と鯨図屏風》には描かれていない潮の広がりが画面最上部の5つの楕円で加えられ、波から雲への反転、すなわちクジラを地球と見立てた水循環の表現へと昇華させている。

新村則人の《魚籠・タコ》(イラストは溝口功将)。水色の画面一杯に楕円とそれを埋める斜め格子による網が白色で描かれ、その中に赤い蛸が頭と触腕とを表わす6つの円で表現されている。2つの小さな円で示された目が囚われた蛸に愛嬌を与えている。赤い円を仕切る直線と曲線によって触腕部に"Shin"が象られ、なおかつタコらしく8つの部位に別れるよう工夫されている。
大きな目が愛くるしいタコと、その蛸に見詰められて困惑するイカとの漫画のような、葛西薫の《蛸は烏賊が好き、烏賊は蛸が苦手》、佐藤卓のプリーツのタコなど、タコが印象に残っている。タコには造形的にもデザイナー、そして鑑賞者を惹き付ける吸引力があるのか。