展覧会『宮下大輔「exh 20230415」』を鑑賞しての備忘録
gallery N 神田社宅にて、2023年4月15日~29日。
スニーカーの入っていた箱と、そこに詰めた品々とで構成される「exh 20230415」シリーズ6点を中心とした、宮下大輔の個展。
陳列台はスティールラックに紙を敷いたもの。スニーカーの箱の全ての面に白い紙を貼り付けた白いケースが置かれ、その中に給水塔と思しき立方体に4つの脚の付いた紙製のオブジェが2つ立てられている。箱の内側にはその「給水塔」の形状が設計図のように描き込まれている。箱の蓋の裏には建物のファサードや屋上にある構造物などの小さな写真がサムネイルのように貼られている。 箱の表には「20230415」というシリーズ名や、作家の署名代わりの電源タップのイラストが貼られている。台上には、白い箱の隣に、惣菜用のプラスティックのトレイ、フルーツキャップ、重ねた紙コップ、ガムテープの芯、クリップ、CD-ROMなどが並べられている。スティールラックの下には照明装置としての直管蛍光灯(昼白色?)とともに、段ボールや袋などが乱雑に置かれている。
白い壁、陳列台の白い紙、白い箱、白い蛍光灯の光と白で統一された展示空間は、スティールラックの銀によって無機質な印象が強められている。また、スティールラック下段の雑多な品々と蛍光灯のためのケーブルとが、整然とした展示台との対照で、乱雑さが際立つ。様々なものが溢れる日常を下部構造として、そこから作家によって取り上げられたものが作品に転換する。例えば、白い画面(白紙)や陳列台(スティールラック)、さらには照明(白い直管蛍光灯)は、作品を成り立たせる装置として機能している。壁面に展示された、糊付の皺の寄った「給水塔」の写真もまた、その額縁が作品生成装置であることを示すためのものではなかろうか。作家が何を取り上げ、どう並べるかが、芸術の営為であることを端的に示したインスタレーションである。
本展のもう1つの柱は、足である。給水塔の「脚」、スティールラックの「脚」、たこ「足」配線、「靴」を入れる箱。足の縁語的イメージが展示空間を満たしている。ところで、作家は、「ある日、某スポーツブランドのお店に行き店員さんからあるスニーカーの説明を受けた。説明の内容は某宇宙計画の話だった。そのスニーカーは、某宇宙計画のマークと説明がプリントされた箱に入ってい」たと、本展に寄せている。宇宙計画と無理矢理結び付けられたスニーカーに、作家は、芸術行為が日常(地球=the earth=大地)から乖離してしまう状況を重ねたのではないか。美術を地に足の着いたものにするべく、いかに作品を着地させるかに腐心する過程、それこそ作家の提示する作品なのかもしれない。だから作家は自らの表象を接続して日常生活を成り立たせる電源タップなのだろう。