可能性 ある 島 の

芸術鑑賞の備忘録

展覧会 小橋陽介個展『グッド フォーメーション―NEW NORMAL PAINTINGS―』

展覧会『小橋陽介個展「グッド フォーメーション―NEW NORMAL PAINTINGS―」』を鑑賞しての備忘録
GALLERY MoMo Ryogokuにて、2023年4月8日~5月13日。

それぞれ油絵具、アクリル絵具、パステルなどを用いた、サイズも様々な68点の絵画で構成される、小橋陽介の絵画展。

作家は、バスケットボールを描いた映画『ファーストスラムダンク』から「フォーメーション」という言葉にインスピレーションを得て、本展を構想したという。
表題作と言える《Goof formation》は、中央上部に黄色を背景にバスケットボールを描き、その左右上部に茶色を背景にマンホールの蓋(?)を、左右が下部に赤色を背景にチューリップを、それぞれ配している。画面下半分は左上から右下に向かって斜めに区画して青空と入道雲、島影、海面を描いている(区画の左上と右下は茶色を塗り込めてある)。
画面上部のバスケットボールを中心とした左右対称の構造からは、祭壇のような宗教的な印象を受ける。例えば、跳ね返るバスケットボールを反射する鏡、水が流れ込むマンホールを神酒を入れる瓶子、チューリップを榊として神棚に見立てることが可能である。その場合、画面下部の海の向こうに臨む島は、沖ノ島宗像大社沖津宮)に比せられよう。
そのような解釈は牽強附会の謗りを免れないであろうか。《Goof formation》の隣に展示された《バスケットコート》は上下2画面から成る作品であるが、下側の画面のスリーポイントラインやフリースローラインの描かれた面は青く塗られ、なおかつセンターサークル側が水色で塗られることで、バスケットコートは海と空として現れ、その水平線上に島影が描かれている。島の上を飛翔する鷹(鷲)は輪郭線のみで描かれており、天から下界を見下ろす視点が示唆される。やはり沖ノ島の見立てとして、遙拝の構造を見て取ることもできそうだ。
青い画面に星々を線で結んだ《オリオン座》という作品がある。オリオン座を構成する星の距離はいずれも異なるが、星座を捉える時には天球という仮想球面上に配される。星々の中に狩人の姿を見るのは恣意的である。配置とは、布置だけでなく、繋がりを見出すことだと伝えようとしているのではないか。
《スイカ》を始めとした18点で構成された絵画群には、壁に直に描き込まれた鳥から絵画を繋ぐように壁面にエメラルドグリーンの矢印が描き込まれている。鳥と矢印とが表わすのは、俯瞰して接続することを促すためではないか。実際、画面に顔を大きく表わし、眉間にユニコーンを描いた作品には《第6チャクラ》と題されている。作家は、物事を結び付ける力(≒配置)を本質を見抜く力として重視しているのだ。
改めて、バスケットボールとは、ボールとバスケットとの間に繋がりを見出すことである。それは島に神の存在を認めて、自らと世界とを繋ぐことに等しいだろう。バスケットボールにおけるシュートとは遙拝なのだ。