展覧会『ブリジット・ライリー「PRINTS 1972–2018」』を鑑賞しての備忘録
西村画廊にて、2024年6月25日~8月10日。
幾何学的なモティーフの抽象的なシルクスクリーン作品で構成される、ブリジット・ライリー(Bridget Riley)の個展。
幾何学図形による抽象的な画面の作品が並ぶ。例えば、《Coloured Greys 3》(698mm×773mm)(1972)は、くすんだ紫の波線にくすんだ藍色あるいは緑の波線が組み合わされ、それらに区切られることで地に浮かぶ白い波線とともに画面前面を覆う。《Silvered 2(21 Reds, 21 Blues, 24 Turquoises, 24 Yellows, 9 Blacks, 8 Whites)》(1066mm×932mm)(1981)には、橙、青緑、山吹などの縦線が連なっている。《Bagatelle 3》(670mm×585mm)(2015)は三角形と扇形とを千鳥格子のように整然と組み合わせたモノクロームの作品。黒い三角形ないし扇形に挟まれた部分には地の部分が白の三角形ないし扇形として現われる。黒の三角形・扇形に着目すれば、上から3つ、3つ、5つ、4つ、5つ、3つと6段に組まれている。リズミカルな形象や色彩の取り合わせによる印象をそのまま浴びるように味わう。
もっとも、《One Small Step》(441mm×291mm)(2009)という作品がある。長方形を、直線と曲線で構成される青、ピンク、オレンジで塗り分けてあるが、左下に扇形に近い形で食み出すピンクの部分がある。この食み出しが小さな一歩(one small step)であることは疑いない。この「小さな一歩」をもとに、《Red Dominance 1》(978mm×492mm)(1977)に身体を見たり、《Stand Up, Turning Round, Lying Down》(706mm×587mm)を花々に認めたりすることが可能となる。作品の見立てによる鑑賞も楽しめよう。