映画『#スージー・サーチ』を鑑賞しての備忘録
2022年製作のアメリカ映画。
105分。
監督は、ソフィー・カーグマン(Sophie Kargman)。
原案は、ウィリアム・デイ・フランク(William Day Frank)とソフィー・カーグマン(Sophie Kargman)。
脚本は、ウィリアム・デイ・フランク(William Day Frank)。
撮影は、コナー・マーフィ(Conor Murphy)。
美術は、アダム・リーマー(Adam Reamer)。
衣装は、サマンサ・ホーキンス(Samantha Hawkins)。
編集は、クリスティン・パーク(Christine Park)。
音楽は、ジョン・ナチェズ(Jon Natchez)。
原題は、"Susie Searches"。
スージー・ウォリス(Kiersey Clemons)がマイクテストをして語り出す。「スージー捜査」第83回です。こんにちは、スージー・ウォリスです。私には幼い頃から特別な才能がありました。
2007年。幼いスージー(Ellie Reine)が母親アン(Jammie Patton)に読み聞かせをしてもらっている。窓から見える樫の木…。少年が犯人だよ。まだ10ページよ。間違いないって。アンがページを繰って結末を確認する。果たして少年が犯人であった。2009年。アンがスージーに本を読んでやるのを中断する。楽しい? 楽しいよ。でも保安官がFBIを裏切るって気付いてるでしょ。気にしないで、これまで通りにしよう。時が経ち、2018年。成長したスージーが母親のために本を読む。友達と出かけたほうがいいんじゃない? 周りの子たちから好かれてないから。勿体ないわね。特別な人なのに。いつか世界中が思い知ることになるわ。本気で言ってるのよ。ただ声をあげればいいの。
新しいリスナーの皆さん。子供の頃の才能について語ったのは自慢じゃないですよ。私がどんな人物か、なぜこの番組を配信しているのか、知ってもらいたいからです。
迷宮入りした事件を解決をしたいんです。今日お話する内容を気に入ってもらえたらと思います。1999年8月の未解決事件です。発見された店主の遺体には2種類の指紋が残っていました。そのどちらも10年以上前に亡くなった男性のものでした。近く「スージー捜査」でお伝えします。
スージーが多発性硬化症で寝たきりの母親のベッドに行く。ポッドキャストに人気が出て収益が上がったら、新しい家を探すよ。大きな窓から綺麗な景色が臨める家がいいよね。スージーが母親の手にキスをして、行ってくると告げ出かける。
ウェイドカレッジのキャンパス。「スージー捜査」のチラシを配り、掲示板に貼り紙をする。警備員(Colby Lewis)に貼り紙を咎められる。どうして駄目なの? 赤いのは生徒会専用だよ。新任の警備員さん? 毎週貼ってるの。課外活動委員会で長い午後を過ごしたくなければ、熱心な生徒の口を塞ぐことはお薦めしませんけど。滔滔と弁じ立てるスージーに警備員は退散する。
大学構内にあるボナンザバーガー。内装や店員の制服はエメラルドグリーンで統一されている。店長のエドガー・キャボット(Ken Marino)がゴミの廃棄についてスージーを褒める。素晴らしい、優れた手順だ。混沌渦巻く世界じゃ、いかに管理して清潔を保つかが大事だよ。それこそ人間と動物との違いだ。分かるね? はい。じゃあ我々の崇高な目標、未来の偉大な人材の育成に戻りましょう。スージーは苦笑いを浮かべる。サンドイッチを食べながら店長とスージーのやり取りを見ていたジリアン(Rachel Sennott)が、スージーは執着心が強すぎると呆れ、それじゃあ卒業できないわけだと揶揄う。私はパートタイムの学生なの。住み込みの看護師を雇う余裕なんてないから。冗談よ。食事中にあんたの苦労話なんて聞きたくない。
自宅でスージーが母親を風呂に入れる。
スージーが自室で「スージー捜査」に対する反応を確認する。どの投稿にも評価やコメントがほぼ付いていない。意気消沈してラップトップを閉じる。
ウェイド郡保安官事務所。ヴォランティアをしているスージーが真っ直ぐ資料保管庫へ向かう。保安官代理グラハム(David Walton)がプロテインを飲んでいた。何かお手伝いできることはありますか? 今日は忙しいんだ。だから来たんです。三角筋後部を厚くするのに1日あたり300グラム以上のタンパク質を摂ってる。何故笑う? そういう顔なんです。重責を負う職場だ。パテをひっくり返すのとは訳が違う。何をされているのか知りたいです。大抵は科学分析する前に証拠の目録を作成しているだけだ。ドラマだとDNA鑑定の結果は48時間もあれば出るが、現実には何ヶ月かかることもある。今日のところはこんなもんでいいか? ええ。じゃ、保安官にコーヒーを出してくれ。
ロギンス保安官(Jim Gaffigan)の部屋にスージーが珈琲を持っていく。ロギンスは窓際で双眼鏡を覗いていた。ありゃカナダヅルじゃないか、初めて見つけたぞ。…違う、レジ袋だ。妻の勧めで野鳥観察を始めてね。この仕事するには息抜きが必要だって。いいですね。研究によると運動を取り入れると良いとか。すまん、君、名前は何だっけ? スージー・ウォリスです。スージー、君の働きには感謝しているよ。だが見ての通り私は仕事で手一杯だ。砂糖2個半にクリームを少々がお好みですよね。スージーがロギンスに珈琲を差し出す。そのとき内線が鳴り、ロギンスが応答する。ソフィー、また市長からか? いいえ、ウェイドカレッジの学生、ジェシー・ウィルコックスの件で電話です。2週間行方不明とのことです。
テレビのローカルニュースは、ウェイド・カレッジの学生で瞑想の動画チャンネルを開設して人気のジェシー・ウィルコックス(Alex Wolff)の失踪を大々的に報じた。
オハイオ州ウェイド郡。スージー・ウォリス(Kiersey Clemons)は地元ウェイド・カレッジの学生。多発性硬化症で寝たきりの母親アン(Jammie Patton)の介護が必要なためパートタイムでしか受講できず、卒業に苦労している。大学構内のボナンザバーガーで変わり者の店長エドガー・キャボット(Ken Marino)やシニカルな同僚ジリアン(Rachel Sennott)と働き、家計を支えている。スージーはウェイド郡保安官事務所でロギンス保安官(Jim Gaffigan)や保安官代理グラハム(David Walton)から雑用を引き受けてもいた。幼いスージー(Ellie Reine)にはミステリー小説の犯人を当てる能力があり、アンはスージーの才能を世界が認めてくれる日が来ると信じていたため、スージーは迷宮入りした事件の犯人を捜し当てる「スージー捜査」というポッドキャスト番組を開設し、情報収集に余念が無かったためだ。地元の不動産王(P.J. Bracco)の御曹司で瞑想の動画チャンネルに多数の登録者を持つウェイド・カレッジの学生ジェシー・ウィルコックス(Alex Wolff)が失踪する。スージーは独自調査を行い、ジェシーの父親の会社の副社長を解任された、ジェシーの叔父ローレンスの犯行を疑い、ローレンスが代表を務める会社名義の所有物件を探る。
(以下では、冒頭以外の内容についても言及する。)
地元名士の御曹司である男子大学生の失踪事件をめぐるミステリー。間もなくサスペンスへと転換する。
寝たきりの母親の介護を一身に背負うヤングケアラーの物語である。食事、入浴、排泄などの必要から長時間家を空けることが出来ない。そのため学業も仕事も細切れになり、課外活動など他の学生との交流も容易ではない。
家庭では、親から世話を受けるのではなく、親の世話をする。職場では、学生として食事をするのではなく、学生の食事の用意や後片付けをする。ならば保安官事務所では捜査するのではなく…。
スージーの唯一の特技は、ミステリー小説の犯人を冒頭で当てること。いつか世間が能力を認める日が来るとの母親アンの声に励まされ、スージーは迷宮入りした事件の犯人を推測するポッドキャスト番組「スージー捜査(スージーが捜査する)」を立ち上げる。だがネットで集めた情報だけで、大々的に行われた捜査によっても未解決のままの事件を解決することは不可能だ。既報のまとめでは聴取者は反応しない。
行方不明となったジェシー・ウィルコックスは、両親の揃う、裕福な家庭の息子であり、瞑想の動画チェンネルを開設して人気を集めていた。スージーとは極めて対照的な存在である。だが失踪事件が2人を近づけることになる。
アン、ロギンス保安官、ジリアンといった市井の普通の人々の感覚が一番真っ当で的を射ていることが浮き彫りになる構造。
インフルエンサーのジェシーはムロツヨシないし三河悠冴を彷彿とさせる。
本作を好む向きには、主婦ステファニーが息子の友人の母親エミリーからお迎えの代行を頼まれたところ、エミリーが失踪してしまう映画『シンプル・フェイバー(A Simple Favor)』(2018)などいかがか。ステファニーは家事・育児動画チャンネルを通じてエミリーの情報を集める。また、徹底してデスクトップでのやり取りだけで失踪した娘を探し出す父親を描く映画『search/サーチ(Searching)』(2018)もある。