映画『ツイスターズ』を鑑賞しての備忘録
2024年製作のアメリカ映画。
122分。
監督は、リー・アイザック・チョン(Lee Isaac Chung)。
キャラクター原案は、マイケル・クライトン(Michael Crichton)とアン=マリー・マーティン(Anne-Marie Martin)。
原案は、ジョセフ・コジンスキー(Joseph Kosinski)。
脚本は、マーク・L・スミス(Mark L. Smith)。
撮影は、ダン・ミンデル(Dan Mindel)。
美術は、パトリック・サリバン(Patrick M. Sullivan Jr.)。
衣装は、ユーニス・ジェラ・リー(Eunice Jera Lee)。
編集は、テリリン・A・シュロプシャー(Terilyn A. Shropshire)。
音楽は、ベンジャミン・ウォルフィッシュ(Benjamin Wallfisch)。
原題は、"Twisters"。
オクラホマ州。早朝、ケイト・カーター(Daisy Edgar-Jones)が草原でカメラを構え空の写真を撮る。ケイトはヴァンに戻ると、寝ているジェブ(Daryl McCormack)を起こす。行かないと。見つけたの? ケイトが返事にジェブにキスする。ケイトはもう1台のヴァンに向かい、クラクションを鳴らす。嵐が来た。行こう! プラヴィーン(Nik Dodani)、アディ(Kiernan Shipka)はすぐ目を覚ますが、ハヴィ(Anthony Ramos)は昨晩飲み過ぎたと寝穢いのでケイトが急かす。
ジェブがヴィデオカメラをケイトに向ける。竜巻制御計画の科学班が現場で嵐を追跡するところです。実験により、竜巻内の水分を減らすことで竜巻を崩壊させられるか確かめます。どうやってやるのか説明して、とジェブ。まず、樽の中の超吸水性ポリマーを吸い上げる竜巻を見つけます。黄色い樽が並ぶ前でケイトが説明する。紙オムツに使われているものだって伝えて。無毒だって。アディが口を挟む。レーダーは嵐を捕捉してないけど。プラヴィーンがラップトップを起ち上げて指摘する。ケイトはレーダーで捉えないものが見えるんだよ。まだ数時間は寝ててもいいんじゃない。ハヴィは「ドロシー」と名付けたセンサーを作業台にするプラヴィーンを注意する。ケイトが集合した4人にカメラを向け問いかける。今日は何の日? 竜巻を飼い慣らす日!
黄色い樽を載せたカーゴトレーラーを牽引するヴァンをハヴィが運転し、ケイト、アディ、プラヴィーンが乗り込んだヴァンのハンドルをジェブが握って、嵐に向かう。ケイトの言うとおりだ。南東の風が強まってる。立ち籠める雨雲で空は暗くなり、時折稲光が見える。ケイトに母親のキャシー(Maura Tierney)から電話が入る。嵐を追ってるだけ。気を付けるから。約束する。ケイト以外のメンバーがカーターさんとケイトの母親に電話越しに挨拶する。終わったらバーベキューに来なさいって。電話を切ったケイトが皆に伝える。そりゃいいね。ハヴィが無線でどうやって竜巻にアプローチするか尋ねた。稲光とともに雷鳴が轟く。嵐に迫っていた。アディは興奮して窓を開け写真を撮る。窓から身を乗り出すなよ。プラヴィーンがアディを注意する。雷に打たれてからノリが悪い。ま、そうだけど。投入の準備をしなきゃ。ケイトがジェブに伝える。雨が降るのを待たないか? すぐに雨粒が車を叩く。準備しなきゃだな。
車を停め、ケイトとジェブが黄色い樽の高分子ポリマーの準備をする。アディは「ドロシー」のボタンを押すが反応しない。古すぎでしょ。実地テスト済みなんだ。ケイトの計画とは違う。みんなの計画だろ。嵐が近い。「ドロシー」が動かないなら、データを取るのは諦めよう。諦めるだって? 竜巻は待ってくれない。今季最後のチャンスなの。とにかく竜巻を消せるかの実験をしないと。データを取るのだって同じくらい重要だろ。竜巻を消せてもデータが取れなきゃ証明できないじゃないか。ようやく「ドロシー」が反応する。データを取って。莫大な研究費を獲得するデータだろ。ハヴィがデータ解析のために留まり、今度は4人が「ドロシー」を載せたカーゴトレーラーを引くヴァンで嵐の只中へ向かう。
激しい雨で視界が悪い。プラヴィーンがラップトップで気象データを確認する。EF1、EF2だと良いけど。EF2は大きすぎるよ。ハヴィ、「ドロシー」は? アディがハヴィに無線で確認する。正常に作動してるよ。ヴァンには強風で吹き飛ばされた草木が衝突する。もう竜巻の中? 違うわ、私たちの後ろよ。スピードを上げる方がいい? 進路に樽を設置しないと。道が分かるか? 牧草ロールを避けようとするがヴァンにぶつかってしまい、急停車する。その拍子にカーゴトレーラーが横転し、樽から高分子ポリマーが漏れ出した。ケイトは進路を確認すると、皆に待つように言って1人車を降りる。助けなきゃ。雨風が叩き付ける中、3人も車を降りて、横転したカーゴトレーラーを戻そうとする。ジェブが拾い上げた棒きれを梃子にしてカーゴトレーラー元通りにできた。喜んだケイトがジェブにキスをする。カーゴトレーラーをヴァンから外し、高分子ポリマーの樽の蓋を開き、「ドロシー」を作動させる。行かなきゃ! 皆がヴァンに乗り込む。
ヴァンが発進し、ケイトがハヴィにドロシーを設置したことを無線で報告する。餌に食いつくか見てみよう。竜巻が来なかったどうしよう。嵐の中に残された樽から高分子ポリマーが噴き上がり、「ドロシー」からは小さな観測装置が飛ばされる。ハヴィは装置が高度3000メートルの上空に達したことを報告する。メンバーが喜んだのも束の間、嵐がEF5の途方もない大きさに成長していることに気付き、ハヴィは絶句する。逃げろ! 急げ! 風が吹き荒れ、猛烈な雨で視界が遮られる中、猛スピードで運転してハンドルを取られ、道を外れてしまった。接近する超巨大竜巻。ジェブは車ごと飛ばされてしまうと車を捨て、近くのハイウェイの高架下に退避することを提案する。皆が車を降りて走り出すと、車はいとも簡単に吹き飛ばされてしまった。一番後ろを走っていたプラヴィーンが竜巻に呑み込まれる。3人が何とか高架下の擁壁に辿り着くが、ケイトは吹き飛ばされた物で太腿を切り、アディは暴風に攫われてしまった。遂にはケイトを庇って被さっていたジェブも竜巻に呑み込まれてしまう。
嵐が去った。瓦礫の散乱する中、太腿から血を流したケイトが足を引き摺りながら1人歩く。
オクラホマ州サパルパ。ケイト・カーター(Daisy Edgar-Jones)は地元で猛威を振う竜巻を制御する研究を私的に行っていた。友人のプラヴィーン(Nik Dodani)、アディ(Kiernan Shipka)、ハヴィ(Anthony Ramos)、それに恋人のジェブ(Daryl McCormack)の協力を得て、高分子吸水材を竜巻に向けて打ち上げ、竜巻の勢力を減退させる実験を行っていた。シーズン最後の竜巻に挑んだところ打ち上げには成功したものの、プラヴィーン、アディ、ジェブが予想外に最高強度EF5に発達した竜巻の犠牲になってしまった。
5年後。ケイトはニューヨークでアメリカ海洋大気庁に勤めていた。ある日突然ハヴィがケイトの職場を訪れる。ハヴィは除隊後、ストームパー社を設立し、ミサイルを捕捉するフェーズドアレイレーダーを応用した小型竜巻捕捉システムを開発していた。システムの運用には竜巻に接近してレーダーを設置する必要があり、ハヴィはケイトに助力を求めた。年々悪化の一途の竜巻から人々を救いたいとのハヴィの思いに打たれたケイトは、1週間の約束でハヴィのレーダーの試験運用に同行する。ストームパー社は開発業者のマーシャル・リッグス(David Born)の出資で必要な機材を揃えることができていた。ケイトがハヴィとともにストームパー社の研究チームと合流したガソリンスタンドには、ストームチェイサー「トルネードラングラー」として人気のタイラー・オーウェンズ(Glen Powell)のチームも竜巻を求めて姿を現わした。
(以下では、冒頭以外の内容についても言及する。)
ケイト・カーターはかつて竜巻の制御の研究に勤しんでいたが、実験に参加した仲間を竜巻で失ったことから、地元オクラホマ州サパルパを離れ、ニューヨークでアメリカ海洋大気庁の職員となった。ケイトの地元の研究仲間だったハヴィは、除隊後にストームパー社を設立してフェーズドアレイレーダーを応用した小型竜巻捕捉システムを開発し、竜巻の脅威から人々を救おうとする。ハヴィに説得され、ケイトは自らの経験をハヴィの研究に役立てることにする。
スティルウォーター出身のタイラー・オーウェンズは、ストームチェイサー。かつてはロデオをしていたため「トルネードラングラー」の異名を取る。ブーン(Brandon Perea)、リリー(Sasha Lane)、デクスター(Tunde Adebimpe)、ダーニ(Katy O'Brian)と組んで竜巻を追い、その威力を動画サイトで実況中継して人気を博していた。動画の広告収入だけでなく、Tシャツなどグッズ販売をして稼いでいる。
ケイトはタイラーを鬱陶しく思い、自分の予想とは異なる竜巻の発生場所を伝えてタイラーたちを撒こうとするが、タイラーは自らの知識・経験からケイトの情報が偽のものであることを見抜き、ストームパー社と同じ竜巻を追う。タイラーは猛牛を騎りこなすように竜巻を乗りこなす感覚で竜巻に向かい、花火を打ち上げるなど派手なパフォーマンスで実況中継する。
ケイトはハヴィとともに久々に竜巻を追い、竜巻の中心に向かって3方向にレーダーを設置しようとするが、仲間を失ったトラウマからパニック発作となって竜巻の捕捉に失敗する。竜巻被害を受けたクリスタルスプリングスの復旧作業に向かうと、タイラーたちは被災者たちの救援に無償で当たっていた。他方、ストームパー社のパトロンであるデヴェロッパーのマーシャル・リッグスは、被災者から土地を買い叩いていた。
竜巻被害をいかに抑えるかの研究に没頭してきたケイトだが、友人を失ったトラウマから竜巻に迫るのを避けていた。ハヴィに協力を求められて改めて竜巻被害を実地で体験するとパニックになるが、同時に竜巻の被災者の姿を目撃し、竜巻被害を抑える重要性に改めて気付かされる。
自分本位で鬱陶しいと思われたタイラーは実は地元を愛する熱血漢で、単に派手なパフォーマンスをするストームチェイサーではない。タイラーの後押しにより、ケイトは再び竜巻に向き合うことができるだろう。
記録のための動画撮影ツアー、アメリカ海洋大気庁のツアー、動画サイトで実況、イギリス人ジャーナリストのベン(Harry Hadden-Paton)の取材などという形で、説明をうまく組み込んである。
『オズの魔法使い(The Wonderful Wizard of Oz)』では冒頭、ドロシーが家ごと竜巻に吹き飛ばされる。ドロシーやドロシーの出遭うキャラクターの名称がハヴィのレーダーに付されている。ドロシーの育ての親(エム叔母さん、ヘンリー叔父さん)が暮らすカンザス州は何もないところ。それでもドロシーは必死に故郷に帰りたがる。他者からは不毛の地や被災地であったとしても、生まれ育った当人にとっては故郷は特別な場所である。故郷に対する執着が本作との共通のテーマなのかもしれない。
見応えのある映像と緊張感のある展開の災害映画。鑑賞者を選ばないエンターテインメント作品でありながら環境問題の啓発にもなっている。
主人公ケイトを演じたDaisy Edgar-Jonesは、映画『ザリガニの鳴くところ(Where the Crawdads Sing)』(2022)でも研究者カイアを好演。そちらもお薦め。
実は好人物という役にGlen Powellはよく嵌まる。