展覧会『ニミュ「Dance With Me」』を鑑賞しての備忘録
NANZUKA 2Gにて、2024年9月20日~11月3日。※当初会期(~10月20日)を延長。
人や動物をモティーフとした僅かな違和感を覚える絵画作品で構成される、ニミュの個展。
《Bone and Fruit, Unclear waves - Swan》(245mm×335mm)には水面で向かい合う白鳥がクリーム色にオレンジ、レモン色で描かれる。向かい合う2羽は、水面の水鏡のイメージと相俟って、鏡像的である。白鳥の頭部と曲がった首はハート型をなす。一見明るいイメージは、水面に映る影が溶解して流れ出すように描かれていることで不穏さを醸している。
《Blue Day Minuet》(1620mm×1300mm)には、白いワンピースを身に付けた瓜二つの女性2人が、連なる山を望む開けた場所で踊る姿が描かれる。顎のラインで切り揃えた髪、アイシャドウによる涼しげな目と濃い口紅で際立つ唇とが、ノースリーブの白い無地のワンピースにより際立つ。都会的な洗煉された女性たちの姿は、山に囲まれた人気の無い土地には不釣り合いである。それぞれ左足と右足とを軽く上げるが、ややくすんだ空よりも明るい空色の靴が軽やかさを高めている。何よりも目を引くのは女性の左手が鶏の頭部になっていることだ。1人の女性の左手はもう1人の女性の腰の背後で見えないが、同じく鶏の頭になっている可能性が高い。白鳥になって舞うバレエがあるのなら、鶏になって踊るのも一興だろう。もっとも左手の先の鶏の頭部の接合はキメラのようであり、瓜二つの女性がクローン人間であるとの連想に誘われる。すると2人のいる山を望む草地や『オズの魔法使い(The Wonderful Wizard of Oz)』よろしく黄色い真っ直ぐな道も、さらには山や青空でさえも舞台の書割に見えてくるのである。全て人工的に作り上げられた世界で上演される舞踏は、繰り返される憂鬱な日々の1シーンへと転じる。
《Bone and Fruit, Unclear waves - Girl and Sheep》(920mm×1220mm)には焦土に腰を下ろした女性の隣に寄り添う2頭の子羊が表されるが、廃墟に佇む女性の笑顔の違和が、羊が2頭いること自体は何ら不自然ではないとしても、クローン羊への連想へ誘うのである。女性が2頭の白馬に挟まれ、1頭の顔に手を当てている場面を描く《Bone and Fruit, Unclear waves - Woman with Horse》(1020mm×760mm)も、白馬の頭部だけが宙空に浮いているかのように身体の表現が全く欠いていることが不自然に思われてくる。クローンの馬かもしれないし、あるいは双頭の馬かもしれない。
《Bone and Fruit, Unclear waves - boys with Bone》(760mm×610mm)でプレッツェルのような「骨」を持つ少年と後ろ姿の2人の少年、あるいは《Bone and Fruit, Unclear waves - Woman with Bone》(760mm×610mm)の電話のように「骨」を持つ女性と背後の女性もまた、クローンに見えて来る。
「Dance With Me」とは、クローン技術のメタファーであった。