可能性 ある 島 の

芸術鑑賞の備忘録

展覧会 趙梁鈺個展『FEELING』

展覧会『趙梁鈺「FEELING」』を鑑賞しての備忘録
GALLERY b.TOKYOにて、2024年10月21日~26日。

繁茂する植物など生命の躍動とそれらを覆う網のイメージが印象的な絵画で構成される、趙梁鈺の個展。

会場で最初に目に入る《太陽を昇らせる》(910mm×725mm)には、多数のヒマワリが咲き誇る池畔で人々が腕を伸ばし太陽を押し上げる姿が描かれる。ヒマワリの大きな花が細い茎の先で咲く姿と、太陽が人々に支えられる姿はアナロジーである。黄色い花は光の、水は生命の、それぞれ象徴である。池水からは渦が立ち上り、昇る太陽とともに生命の循環を表す。世界の成り立ちを絵解きする神話的な作品である。因みに、森の中の青いタンポポの群生地の地中から光(エネルギー)が放たれてピンクの蜻蛉が飛び立つ《タンポポのデート》(910mm×725mm)もまた、生命の循環の表現であろう。
《太陽を昇らせる》や《タンポポのデート》の光に満ちた世界と対照的なのは、《海流瓶》(1200mm×1620mm)である。金網フェンスで閉ざされた植物が繁茂する暗い水辺に漂流するガラス壜を屈んで拾い上げようとする人物の四肢だけが描かれる。人物の肌は河童を連想させるような青緑で、大きな瓶の中で赤い花が輝く。ガラス瓶の花は試験管ベビーのメタファーではなかろうか。体外受精から無性生殖ないしクローン個体へ。リプロダクションの在り方が変化した未来。そのような未来からのボトルメール(message in a bottle)として《海流瓶》が描かれたように思われてならない。
《太陽を昇らせる》の右隣の《従順》(652mm×652mm)には、繁茂する植物に溶け込むように母親と思しき女性の顔が大きく表され、その近くに胎児の姿が表される。また、《太陽を昇らせる》の左隣の《蝶々》(410mm×317mm)には、虫籠らしき網目の中に蝶の茶色の羽根が大きく表される。3作品を1組と捉えれば、生命の循環(《太陽を昇らせる》)に出産で与る女性がその状況を甘んじて受け容れ(《従順》)、自らの意思で自由に羽搏くことが叶わない状況(《蝶々》)が表現されているものと解される。
《蝶々》や《海流瓶》やに描かれる金網フェンスのイメージは、咲き誇る花の中に分明でない形で女性像が表された「彼女」シリーズの三幅対にも描き込まれている。暗い茂みの中にピンク色の女性像が浮かび上がる《彼女・水》(1620mm×1620mm)では青緑の金網が、黄と紫の花の《彼女・宇宙》(1620mm×1620mm)ではオレンジの金網が、山吹の花が咲き誇る《彼女・精神力》(1620mm×1620mm)では白い金網が、それぞれ画面を覆っている。《太陽を昇らせる》・《従順》・《蝶々》の3点で表現されていた、生命の循環に出産(labor)で縛り付けられた女性の姿の表象だろう。