可能性 ある 島 の

芸術鑑賞の備忘録

展覧会 まちだリな個展『路上視察的飛行体』

展覧会『まちだリな原画展「路上視察的飛行体」』を鑑賞しての備忘録
art space kimura ASK?にて、2024年11月19日~12月7日。

手描きの絵画によるアニメーションを制作する、まちだリなの原画展。1つのシーンに用いられる絵画が縦に並べられ、収まり切らない場合には、クリップで束ねて掛けてある。
女性がベンチに腰を降ろして膝に載せた紙に鉛筆で描き出すシーンから始まる。女性は鉛筆の先に意識を向ける。だがその集中を乱す存在が、足を這い出す。蟻だ。いつしか蟻は彼女の顔にまで達する。蟻は高く聳える女性に登攀したのだ。女性は自らが摩天楼になった気分を味わう。同時に、上を見上げる。そんな女性を見て、犬もまた空に眼を向ける。そこには飛行機が…。1つのイメージが別のイメージへと連想により変化しながら連なっていく。その連なりを支えるのが、眼球、林檎といった球などの形であり、明るいオレンジなどの色である。子供が自動車の玩具に自らを重ねて冒険に乗り出すように、作家は卑近な存在に眼を向け乗り移る。霊媒である作家は乗り移ったものの物語を鉛筆ないし絵筆で語り出すのである。作家が描く眼球に描き出される、あの特徴的な放射状の形は、動物細胞などに見られる「中心体」ではないか。世界は分裂し、新たな世界、パラレルワールドが生み出されるのだ。