可能性 ある 島 の

芸術鑑賞の備忘録

展覧会 飯島暉子個展『微熱/Slight fever』

展覧会『新世代への視点 2025 飯島暉子展「微熱/Slight fever」』を鑑賞しての備忘録
藍画廊にて、2025年7月21日~8月2日。

体温で溶けた石鹸、折れ目に色鉛筆を塗り付けた新聞紙、積み重ねた葉書など、わずかな手付きで日用品を作品として起ち上げようとする、飯島暉子の個展。

《折り皺を追う(誰かのサイン)》(420×325mm×20mm)は、梱包に用いられて折り目の付いたインドネシア語の新聞に青・赤・黄・緑などの色鉛筆で着彩した作品。額装され壁に蝶番で留められ、2つの面が見えるように展示されている。虹のような着彩と蝶番による可動性は、光を分散・屈折させるプリズムの機能を連想させる。作家は、プリズムが光を分散させてスペクトルを見せるように、作家は日用品に手を加えることで作品としての相貌を表わそうとするのである。

《微熱(ジョグジャカルタ‐2)》(90mm×50mm×20mm)は青い石鹸を体温で溶かした彫刻。石鹸はヤシ油製であろうか。それならアブラヤシの栽培が盛んなインドネシアを象徴しよう。本作品の形態は胸と腹を象った一種のトルソに見立てられる。埋め込み式コンセントに挿したように展示されている。《微熱(ジョグジャカルタ‐1)》は黄色い石鹸の断片2つから成る。床の上に気泡緩衝材を敷いて設置されている。半透明の気泡緩衝材により床から浮かされていること、なおかつ黄色が光の象徴であるなら、神鳥ガルーダに見立てることはできるだろうか。直方体状の白い石鹸《微熱(ジョグジャカルタ‐5)》(80mm×50mm×20mm)には、その上にベージュの円環状の石鹸《微熱(ジョグジャカルタ‐5)》(50mm×50mm×20mm)が載せられている。カタツムリのようだ。方形に磨かれて白くなった床に直に置かれている。方形はインドネシアの領域を表わし、カタツムリのアフリカマイマイ外来種であることを示すものではないか。アフリカマイマイは東アフリカ原産であるらしい。だがインドネシアの国章となっているガルーダでさえインドから渡ってきたではないか。外来種とは何か。それは移民とは何かという問いへと逢着する。

《交差‐円1》・《交差‐円2》(各148mm×100mm)は斜め格子の画面に十数個の円形があり、円形内の格子が地の部分の格子とずらされている。ずらされるからこそ円の姿が浮かび上がり、また地のイメージに気が付く。ズレ、差異の導入。摩擦が生じ、熱を発する。熱が形を変容させ、新たな世界が開かれる。