展覧会『デザインの仮説と仮設 廣村正彰+』を鑑賞しての備忘録
ギャラリー エー クワッドにて、2025年7月11日~10月16日。
企業や教育施設におけるサインデザインなどの業績「プロジェクト」と、アイデアの実験「スタディ」とを、「記憶と痕跡」・「字と美」・「シルエット」・「矢印」・「仮設的」の5つのテーマで紹介する、グラフィックデザイナー・廣村正彰の個展。
【記憶と痕跡】
Study 01「鉛筆」は、移転の決まった三菱鉛筆の山形工場の随所に小学校で集めた禿びた鉛筆を使って飾る試み。Project 01「鉄の壁」はバリやアタリ、メモを遺した粗加工の鉄板を用いたIIS/IIKのサイン計画。Project 02「親和性から生まれる」は、木材架構のやぐら広場が印象的な水戸市民会館における木材を用いたサイン。Project 03「紙が記憶する」は、紙製パッケージの展開図を利用したザ・パック本社ビルのサイン。Project 04「陶芸の沼」はパブロ・ピカソの陶芸作品を収蔵するヨックモックミュージアムのサインに荒木漢一の陶芸を利用した事例。Project 06「素材の魅力」は、OMRON AUTOMATION CENTER TOKYOでは、サインにエキスパンドメタルや木毛セメント板など素材を露出させた。
【字と美】
Study 02「竹と句」は、竹林に俳句を掲出する試み。Study 03「本の幸せ」は、図書館のサインを書籍の形態で表している。Project 08「言葉とともに」はTODA CREATIVE LAB、戸田建設本社の壁面にフランク・ロイド・ライトら建築家やオーギュスト・ロダンら美術家の格言を配した事例。Project 09「海の駅」はホーバーターミナルおおいた「HOV.OTA」のサインに柱から浮き出る文字を用いてホーバークラフトへの連想を誘う。Project 10「空間を読む」は石川県立図書館グレートホールにおける円形書架に面陳することで本との出会いを演出。Project 12「大動脈から毛細血管へ」は、金沢美術工芸大学の構内の一覧を、アートプロムナードから7つの棟に分岐する線で表現してみせた。
【シルエット】
Study 04「飛び出し坊や」は、白いシルエットで表した子供のパネルによる、パレイドリア現象やシミュラクラ現象など人間の認識についての実験。Project 13「よこすかくん」は、横須賀美術館におけるサインに案内役を担わせるようと行動を誘発するひとがたを採用した。
【矢印】
田中一光の世界商業デザイン展ポスター(1959)は黒地に大小80以上の矢印が好き勝手な方向に向かいながら全体で1つのエネルギーを放っていた。それが作家をデザインの世界に向かわせたきっかけだった。Study 07「動く意志」では東京造形大学で頭に矢印を着けた学生たちに同方向や逆方向などに歩いてもらい、矢印の効果を試した。元来男性や神のシンボルであった矢印は羅針盤の針に利用されることで方向記号になったと言う。だが矢印は前に進むことを指示するのか、あるいは上へ昇ることを訴えるのか。Study 06「矢の不思議」はエレベーターの扉と籠にそれぞれ矢印を設置することで矢印の機能を探る。Study 05「自然の意志」は、木の枝を白く塗布して矢印を表し、緩やかな誘導を試みる。因みにメインヴィジュアルに採用されたのは、人の形に見える木の枝の白い塗装による矢印である。形代のようで、前進よりも昇天を連想させる。Project 19「アートな矢印」では、発光部が1.5mmの極細LED「Slight Light」を用いたアーティゾン美術館のサインを紹介。Project 20「時代をつなぐ矢」はTODA BUILDINGにおける矢羽根を利用したサイン。壁面のみならず地面にも設置した。
【仮設性】
恒久的なものに対する信頼が揺らぎ、一時的な状態を前提に仮設的な発想をより肯定的に捉えるべきである。Project 21「会議的仮設」では、WDO世界デザイン会議東京2023において、強化段ボールを用いた設置・追加・撤去の容易な什器を採用した事例を紹介。