可能性 ある 島 の

芸術鑑賞の備忘録

展覧会 Chim↑Pom from Smappa!Group個展『穴の中の穴の中の穴』

展覧会『Chim↑Pom from Smappa!Group個展「穴の中の穴の中の穴」』を鑑賞しての備忘録
ANOMALYにて、2025年10月11日~11月9日。

垢、下水、産業廃棄物、宇宙デブリといった人間や社会からの排出物に着目した写真、映像、立体作品で構成される、Chim↑Pom from Smappa!Groupの個展。

《Asshole of Tokyo》は、オフホワイトのジェスモナイトでアスファルトとマンホールの蓋が象られ、ずらされた蓋から覗く穴越しに、下水の流れる映像を眺める作品。『不思議の国のアリス[Alice's Adventures in Wonderland]』はウサギ穴から夢の世界へ落ちる。作家のようにスーパーラットの目線で都市を裏面から眺めるのなら床に設置された穴を覗き込ませても良さそうなものであるが、敢て90度持ち上げられて壁に設置されている。それは下水の流れを上下にすることで、視野面積の冪指数を増加・減少させるチャールズ&レイ・イームズ[Charles and Ray Eames]の映像作品《Powers of Ten》のように、上昇と下降の世界に誘うためであろう。

《ビルバーガー》は、神田通信機の旧本社ビルの解体に際して採取された鉄筋コンクリートの構造体、オフィス機器などを組み上げた作品。床板をバンズに見立て、時計、電話機、コンピューター、ファイル、案内板、非常口誘導灯、キャビネット、観葉植物などがハンバーガーのように重ねられている。バベルの塔のような摩天楼への志向、スクラップアンドビルドによる都市の新陳代謝を端的に提示する。併せて展示される《ビルバーガー/神田通信機株式会社》は、鉄骨や石膏ボード、チューブなどの廃材を支持体とした、ビルを刳り抜いて出来た穴の写真である。落下のイメージは上昇志向の陰画である。学士会館新館の床材など廃材を切り取り地層剥ぎ取り標本のように仕立てた《カッティング・ビルバーガー》はウレタンやカーテンがチーズやベーコンのようである。

《きらきらりん》は夜空にスペースデブリを捉えた写真9点を組み合わせた作品。素人目には天体と変わらないイメージである。方形の画面を階段状に連ねて展示することで上昇/下降のイメージを演出してある。
人工衛星SFUの表面に残されたスペースデブリの衝突痕を「穴の中の穴の中の穴」シリーズは3点が組作品として展示されている。本来微細なクレーターはナスカの地上絵のようにも見える。
《POWER》は旧ソ連の原子炉搭載衛星RORSAT[УС-А]を観測した映像などで構成されるインスタレーション。白い穴や降雨のようなイメージが明滅するイメージに電子音やノイズが組み合わされる。RORSAT38基のうち大半はデブリとなっているという。

垢太郎》は複数のアーティストから採取した垢を石鹸に貼り付けた作品と、垢を顕微鏡を用いて撮影した写真とで構成される。写真作品は装飾料紙のようなイメージと言えなくもないが、垢に対する抵抗感から、とても風流な気分にはなれない。穢れに対する嫌悪感は拭いがたいものがある。

エントロピー増大の法則に抗う生命、人間延いては社会にあって、廃棄物の産出は不可避である。日陰者の廃棄物を介して、人間(ミクロコスモス)と宇宙(マクロコスモス)との照応、すなわち入れ籠の関係を陽の当たらない穴の中から覗かせる作家たちは、やはりスーパーラットである。