可能性 ある 島 の

芸術鑑賞の備忘録

展覧会 常田泰由個展『woodcut/linocut』

展覧会『常田泰由「woodcut/linocut」』を管掌しての備忘録
gallery N 神田社宅にて、2025年11月15日~29日。

常田泰由の版画展。

木板画「refined」シリーズ6点(各250mm×250mm)は3点を2段としてまとめて展示されている飾られている。左上の《refined-m》は花ないし実の付いた枝垂れの植物を深緑で刷り残し和紙の生地で表す。上段中央の《refined-r》は銀で花ないし葉と短い蔓のような捲いた形を和紙に銀で刷り出す。右上の《refinede-h》は葉の着いた枝や枝、銀杏の葉、Y字の枝など枝葉のイメージを葉を画面に芥子色に刷り残す。左下は《refinede-d》は青い画面にやや歪み大きさも不揃いの円に近い形を舞う雪のように15個ほど散らす。下段中央の《refinede-h/r》は蘇芳で《refined-r》の枝葉のイメージを刷り残した画面に《refined-r》の蔓のイメージを銀で重ねる。《refined-p/d》は、半円状の葉のモティーフを芥子色で吸った後に《refinede-d》の雪玉のようなイメージを上下反転して重ねてある。同じ版で別のジメージが起ち上げるのは版画の妙だ。対象の簡素化と彫り跡を残さない平板な色面が木版画と思えない、グラフィックの印象を生む。それでも和風のモティーフと色味とにより、西洋美術の影響の下に木版画の再生を試みた新版画の時代の作品に通じる。
階段を組み合わせた《d》(250mm×250mm)でマゼンタに銀、1台の机をだけを描いた《t》(250mm×250mm)で緑と蛍光オレンジ、様々なモティーフを画面一杯に配した《a》(250mm×250mm)では銀に蛍光オレンジと、マゼンタや蛍光オレンジの鮮やかな色味により木版画のイメージから飛躍する。他方で、身近な人物や日常的な生活風景を、二眼レフカメラで切り取ったような正方形の画面の木版画ないしリノカットのシリーズ(題名は付されていない)は、墨一色の上、彫り跡が生かされ、いかにも「木版画」といった趣である。版画の反転性や対照性を作品相互でメタ的に提示しているとも言えよう。その意図は、版画工房をモティーフにした作品をずらして重ねた作品や、
二眼レフ的景観の正方形のシリーズの版木を用いて、オレンジの家屋の景観と青の自転車を上下にややずらして並べた作品は、恰も正面の風景と背後の風景とを同時に見せるような結構である。あるいは、版画工房の室内を描いた作品を複数ずらして刷り重ねた作品は、同一イメージの連続によりむしろ凍り付いた時間が表現されるようである。