可能性 ある 島 の

芸術鑑賞の備忘録

展覧会 井上誠展『うつら、うつら』

展覧会『井上誠展「うつら、うつら」』を鑑賞しての備忘録
藍画廊にて、2025年11月24日~29日。

金魚などの生物を吉祥文様の中に配した絵画と、胡粉による朦朧とした画面に公園の遊具を表した絵画とで構成される、井上誠の個展。

《めざめ》(φ333mm)は銀の地に複数の白線が交叉する中をオオルリアゲハが舞う。「めざめ」という画題は展覧会に冠した「うつら、うつら」と相俟って直前までの睡眠状態を喚起するため、「胡蝶の夢」のメタファーではないか。
《できごと》(455mm×455mm)はピンクと緑に白で表した檜垣文様の中にギンヤンマをを表す。真直ぐに飛び決して後戻りしない蜻蛉は勝虫としてかつて武人に好まれたという。蜻蛉の勝利や水平方向あるいは一方通行のイメージとは対照的なのが、梅紋を散らした中に蛙を配した《かげ》(273mm×220mm)かもしれない。画面上部に表されるアマガエルは天(あま)に帰るのである。あるいは《おとしもの》(410mm×175mm)で水玉模様から這い出すようなナナホシテントウは、天道虫だけに太陽に向かうのだろう。
フナの突然変異から生まれた観賞魚である金魚は装飾文様と相性が良い。もっとも、文様も《よあけ》(803mm×652mm)は水色に白の千鳥格子の破れの中を黒出目金が泳ぐ。水色と白とは、千鳥の現われる空、あるいは白波の立つ水辺を連想させる。野外を象徴する千鳥格子を破る淡いピンク色は金魚の住まう屋内空間を表すのだろう。屋内から屋外へ飛び出すイメージに、黒出目金の夜・闇から白い鳥の朝・光へが重ねられる。ならば銀色の千鳥格子の破れの中に蘭鋳を表した《さかい》(φ652mm)における極淡い群青はブルーアワーの暗喩となろう。《まちあわせ》(450mm×910mm)は白い七宝つなぎの切れ間に琉金が揺蕩う。連鎖する七宝文様が途絶えることにより再びの接続のイメージを呼び起こす。「まちあわせ」という再会を意味する画題の意味するところだろう。
《ひみつ》(273mm×220mm)だけは灰青の亀甲文様の中にほおずきの実を配する。それでも亀は存在するのではあるが。

《sort》(420mm×594mm)は下地の赤を胡粉で乗り込めた朦朧とした画面に赤いシーソーを描く。画題からすると、シーソーが象徴するのは仕分けである。曖昧模糊として捉えどころが無い世界を捉えるための手段が仕分けであり、名付けであり、言葉である。《destination》(333mm×530mm)では赤・青・黄の滑り台が描かれる。滑り台は目的地が固定されているということか。同じ空間を階段を登っては坂を滑り落ちる。パンダのスプリング遊具《twilight》(300mm×300mm)やゾウのスプリング遊具《slow》(300mm×300mm)が揺られるだけでどこへも向かわないように、実は同じ世界を循環しているだけである。