可能性 ある 島 の

芸術鑑賞の備忘録

映画『シェルビー・オークス』

映画『シェルビー・オークス』を鑑賞しての備忘録
2024年、アメリカ製作。
91分。
監督・脚本は、クリス・スタックマン[Chris Stuckmann]。
原案は、サマンサ・エリザベス[Samantha Elizabeth]とクリス・スタックマン[Chris Stuckmann]。
撮影は、アンドリュー・スコット・ベアード[Andrew Scott Baird]。
美術は、クリストファー・ヘア[Christopher Hare]。
編集は、パトリック・ローレンス[Patrick Lawrence]とブレット・W・バックマン[Brett W. Bachman]。
衣装は、ショーナ・ノヴァ・フォーリー[Shawna-Nova Foley]。
音楽は、ジェームズ・バークホルダー[James Burkholder]とザ・ニュートン・ブラザーズ[The Newton Brothers]。

 

2008年、超常現象検証の動画配信チャンネル「パラノーマル・パラノイド」のライリー・ブレナン(Sarah Durn)が失踪した。
ここは安全じゃない。見られてる気がする。怖くて堪らないわ。ライリーが部屋で1人カメラに向かって泣き顔で語る。映像が乱れた後、獣の唸り声とともに騒音がしてライリーが驚き後ずさる。
これは失踪前のライリーの姿である。
ライリーがカメラの背後にあるドアを開ける。真っ暗闇にライリーが恐る恐る出ていく。騒音が聞える。
「パラノーマル・パラノイド」失踪事件の報道のダイジェストが流れる。オハイオ州ダーク郡にある廃墟の町シェルビー・オークスで、ピーター・ベイリー(Anthony Baldasare)、ローラ・タッカー(Caisey Cole)、デヴィッド・タッカー(Eric Francis Melaragni)、ライリー・ブレナンが行方不明に。捜索に当たるダーク郡警察はメンバーが使用した2台のカメラのうち1台を入手したものの、1週間経っても新たな展開はなく、最悪の事態も想定されている。
オハイオ州ダーク郡の郊外に立つブレナン=ウォーカーの住宅。ミア・ブレナン=ウォーカー(Camille Sullivan)がカメラに写真を示す。「パラノーマル・パラノイド」のライリーです。これが私の知る妹、ライリーです。ミアが妹と映る写真を見せる。私はミア・ウォーカーです。ライリーを12年に亘って探してきました。皆さんに彼女について知って欲しいです。弾き語りをするライリー、無邪気に遊ぶ幼い日のミア(Brenna Sherman)とライリー(Sloane Burkett)を捉えたホームヴィデオが流れ、ミアがライリーについて語る。ライリーは年の割に大人びていました。誰にも見えないものが見えていて、それについて考え、理解しようとしていました。夢日記を付ける人がいますが、ライリーは夢をスケッチしていました。目覚めるとすぐに描くんです。見たばかりの夢を。ときに悪夢であることもありました。高校時代、舞台に立つライリーの姿が流れる。高校に入ると、芸術に真剣に取り組むようになりました。役者をするようになって私の知っているライリーではなくなってしまいました。殻を破ったんです。演技が上手になりました。上手くいっているというフリをして、実際はそうではなかったんです。情熱を持って取り組んでいましたから、チャンネルの人気が出るのも驚きませんでした。
「パラノーマル・パラノイド」の配信した映像のダイジェストに、ファンであるジェス(Lauren Ashley Berry)のインタヴューが重ねられる。20世紀後半にはまだUFO、悪魔、超能力といったものに神秘さがありましたよね、いつしか超常現象調査はネタ化してしまって。ユーチューブの登場で状況は一変、「パラノーマル・パラノイド」は一定数いる、隅に追いやられていた超常現象に対する関心層のハートを掴んだんですよ。ミアのインタヴューが続く。配信される映像には毎回、超常現象研究者が一生かけて捜し回るような何かが捉えられていました、当然疑ってかかる人が出て来ます。フェイクの可能性もあると思いました。どう説明していいか戸惑うようなものでしたから。でもライリーに限ってはフェイクを流すなんてことはないだろうと。彼女はこういった事柄を真に受けるタイプですから。妹は嘘吐きじゃありません。刑務所を探索した後、妹は一切口を噤んでしまいました。失踪3週間前、「パラノーマル・パラノイド」のメンバーがダーク郡刑務所の廃墟で撮影している場面が映し出される。ある独房の前でライリーが動揺し、寒いと言い出す。混乱したライリーが駆け出し、他のメンバーが後を追う。多くの人がフェイクだと言いました。その後、番組の配信が停止し、チャンネルは閉鎖されました。心配するファンもいましたが、たいていの人は宣伝のためのトリックだと思っていたでしょう。でも、全てが変わってしまいました。

 

2020年。オハイオ州ダーク郡の郊外にある自宅で、ミア・ブレナン=ウォーカー(Camille Sullivan)が、失踪した妹ライリー・ブレナン(Sarah Durn)の発見
に繋がることを願い、ドキュメンタリー番組のインタヴューに応じる。2008年、ライリーは超常現象を検証する動画配信チャンネル「パラノーマル・パラノイド」の取材中にピーター・ベイリー(Anthony Baldasare)、ローラ・タッカー(Caisey Cole)、デヴィッド・タッカー(Eric Francis Melaragni)とともに行方不明となった。90年代後半に廃墟となった同郡シェルビー・オークスの小屋で他の3人の惨殺遺体とともに残されたカメラには、ライリーが何者かの襲撃に怯える姿が映っていた。ライリーは霊感があり毎朝夢の記録画を描いていた。13歳まで男に見張られているなどと夜驚症に悩まされていたが、映像に残るライリーがその際と同じ表情をしていたとミアは語る。監督(Emily Bennett)が撮影を中断したタイミングでウィルソン・マイルズ(Charlie Talbert)が突然来訪し、ミアの目の前で「やっと解放された」と言うや否や自らの脳天を撃ち抜いた。

(以下では、冒頭以外の内容についても言及する。)

「パラノーマル・パラノイド」が取材に訪れたシェルビーオークスの遊園地は、ミアとライリーが母親に連れて行ったもらった思い出のある遊園地だった。森の中で2人が迷子にならないように母親が記したRMが同じく落書きされているのをライリーが確認する。
シェルビーオークスの刑務所では、37号の独房で突然ライリーが寒気を感じて激しく動揺する姿が残されていた。ライリーの反応が「パラノーマル・パラノイド」を人気のチャンネルにしたことが分かる。ミアはライリーの霊感が強い子供で、夢の内容を毎朝描く習慣があり、とりわけ13歳まではひどい夜驚症に悩まされていたと証言する。窓の外から何者かに見張られているとライリーはよく訴えていた。失踪直前のライリーはその頃と同じ反応を示していることにミアは着目した。
12年前に発生した事件についてのインタヴューを受ける最中に、ウィルソン・マイルズが突然ミアとロバートの住まいに来訪する。被疑者ウィルソン・マイルズの死をもって捜査終了となることに納得のいかないミアは件の終結にすることを恐れた。独自にウィルソン・マイルズの資料にあたり、彼が収監されていた刑務所の所長モートン(Keith David)に直接話を聞き、廃墟となった刑務所を訪れる。ライリーが動揺した独房37号はかつてウィルソン・マイルズが収監されていた。

(以下では、全篇の内容について言及する。)

ライリー失踪というテーマからやや逸れる話題をミアはインタヴューに持ち出している。ミアは2006年にロバート・ウォーカー(Brendan Sexton Ⅲ)と結婚するが子供に恵まれなかった。子供を得ようとの試み(不妊治療?)は2008年のライリーの失踪によって断絶したとの内容だ。それ以来夫婦仲は冷め、ロバートは取材を断っている。
霊感の強いライリーが悪魔に魅入られるという主軸ではなく、ミアが母親になりたい(子供が欲しい)という観点で映画を見つめ直すとき、もう1つの悪夢が立ち上がる。ドキュメンタリー監督がミアに投げ掛けるある質問も、そのような読み取りを促すものであろう。