可能性 ある 島 の

芸術鑑賞の備忘録

映画『サムシング・エクストラ! やさしい泥棒のゆかいな逃避行』

映画『サムシング・エクストラ! やさしい泥棒のゆかいな逃避行』を鑑賞しての備忘録
2024年、フランス製作。
99分。
監督は、アルテュス[Artus]。
脚本は、アルテュス[Artus]、クレマン・マルシャン[Clément Marchand]、ミラン・モージェ[Milan Mauger]。
撮影は、ジャン=マリー・ドルージェ[Jean-Marie Dreujou]。
美術は、オードリック・カルスティアン[Audric Kaloustian]。
衣装は、レア・ペイショト[Léa Peixoto]。
編集は、ジャン=フランソワ・エリー[Jean-François Élie]。
原題は、"Un p'tit truc en plus"。

 

人に対して寛容になることを学びました。心の中に泣いている子供がいると思うと心にゆとりが生まれます。心はとても大切です。サン=テグジュペリの言葉にも「心が伴わなければよく見ることができない」とあります。
ローム県ヴァランスにある精神障害者生活支援施設。代表のアリス(Alice Belaïdi)がヴァカンスだと浮かれる利用者たちを連れて路上に停車したバスに向かう。アリス、また障害者専用区画に停めてる奴がいた。職員のセリーヌ(Céline Groussard)が通報しながら愚痴る。アルノー、靴を履き替えて。分かった。ダリダの写真を身に付けたアルノー(Arnaud Toupen)が施設に戻る。ボリス、着替えて。ボリスじゃない、クレオパトラ! 古代エジプト風の衣装を身につけたボリス(Boris Pitoeff)が憤慨する。マルクに荷物を預けて。アリスが利用者に指示する。メイヤヌ、荷物は1人1つだ。マルク(Marc Riso)が注意する。メイヤヌ(Mayane-Sarah El Baze)がスーツケースに載せたバッグは1つだと言い張る。バプティスト(Théophile Leroy)が道路でサッカーボールで遊んでクラクションを鳴らされる。マルクが慌ててバプティストを歩道に連れて行く。失敗から学ばせないと。自動車相手じゃ洒落にならないでしょ。
宝飾店。ウサギのマスクを着けたポール・ムニエ(Artus)がオオカミのマスクを被った父ルシアン(Clovis Cornillac)とともに強盗を働く。泣くな! ルシアンが女性客(Anna Pabst)に怒鳴る。泣く権利があるよな。ポールが言いながら男性客(Thomas Bettencourt)に銃を向ける。付き合ってるのか? ええ。結婚は? 指輪を選ぼうと。えっ? 彼女は知らなかったみたいだな。目出度いがタイミングは最悪だな。行くぞ、急げ! 逃げ出す間際にポールが2人に指輪を1つ投げ渡す。ポールはシャッターを抜けようとしてよく見えずマスクを外した際に鏡に映った顔を女性に見られる。2人は路地のゴミの収集場所に向かい服を脱ぎ捨て、用意していた別の服に着替える。パトカーのサイレンが聞えて来る。何て格好だ! ドイツ人観光客だよ、気付かれないように。アホにしか見えないぞ。父さんこそ強盗に入りましたって格好だけど。
マルク、新しい人は? シルヴァンなら向かってるって。障害者専用区画で車をレッカー移動させる作業員にアレクサンドル(Stanislas Carmont)が、試練とは不在であり、虚栄心の毀損ではないとニコラ・サルコジの言葉を訴える。勉強せずに意地悪な仕事をしてるから感謝しなくていい。そんなこと言わないでとセリーヌが止める。勉強しなかったのは他の連中も同じでしょ。2人でレッカー作業員を見送る。ルドヴィク(Ludovic Boul)がデブだとマルクに叫ぶ。侮辱は何て言った? アリスが注意する。良くないこと。なら何故言うの? だってデブだから。彼も知ってるから言っても無駄でしょ。マルクは苦笑い。ボリスは着替えたもののスーパーウーマンの格好に。アリスがヴァカンスに出発しましょうと皆に呼びかけると、バスの周りに集まった皆が歓声をあげる。マルクが参加者の名前を挙げて、1人1人確認していく。ソソ(Sofian Ribes)、ギャド(Gad Abecassis)、アレクサンドル、マリー(Marie Colin)、ボリス、アルノーバプティスト、メイヤヌ、ティボー(Thibaut Conan)、ルドヴィク。まだ到着していない新人のシルヴァンを待つことに。セリーヌが水のペットボトルを配っていく。マリーの顔面にペットボトルが当たってしまい、大騒ぎ。
ポールとルシアンが車に戻ろうとして、レッカーされていることに気付く。障害者専用区画に停めたな。警察官と擦れ違う。ポールはグーテンタークなどとドイツ人を装う。黙った方がいい。ルシアンに注意される。バスの外でシルヴァンを待っていた運転手(Christophe Véricel)が落ち着かない雰囲気のポールを目にする。アリスも気付き、声をかける。シルヴァン? アリスです。

 

ローム県ヴァランスにある小さな精神障害者生活支援施設。皆に慕われる代表アリス(Alice Belaïdi)、見た目に反して毒舌のセリーヌ(Céline Groussard)、アリスに首ったけの巨漢マルク(Marc Riso)が利用者をドローム県とイゼール県に跨がるヴェルコール山地の高地に立つ山荘でのヴァカンスに連れ出そうとしている。よく置いてけぼりをくらうソソ(Sofian Ribes)、ユダヤ教徒のギャド(Gad Abecassis)、ニコラ・サルコジに執着するアレクサンドル(Stanislas Carmont)、反応が鈍くやたら何かをぶつけられてしまうマリー(Marie Colin)、コスチュームで女性や調味料に変身するボリス(Boris Pitoeff)、刺青を入れるほどダリダを愛するアルノー(Arnaud Toupen)、サッカーボールを手放さないバプティスト(Théophile Leroy)、恋愛体質のメイヤヌ(Mayane-Sarah El Baze)、やたら体の大きいティボー(Thibaut Conan)、罵り言葉を吐いていないと落ち着かないルドヴィク(Ludovic Boul)がてんやわんやの末に何とかバスに乗り込む。本日から参加のシルヴァンが遅刻していた。運転手(Christophe Véricel)がバスの近くで躊躇う人物に気付く。アリスがポール・ムニエ(Artus)をシルヴァンと思い込み声をかける。ポールは父ルシアン・ムニエ(Clovis Cornillac)とともに宝飾店を襲った強盗犯で、障害者専用区画に止めた逃走車がレッカー移動されて途方に暮れていた。ポールがシルヴァンを装うとルシアンもまたシルヴァンの付添いだと言って2人はバスに乗り込む。バスが出発した後、スーツケースを引いてやって来たシルヴァン(Benjamin Vandewalle)はスペインでヴァカンスを過ごす一団に誤って加わってしまう。

(以下では、全篇の内容について言及する。)

宝飾店を襲った強盗犯のポールとルシアンが雲隠れのために精神障害者支援センターのヴァカンスに紛れ込み、次第に施設の職員や利用者たちと親交を深めていくというコメディ。
ポールは早々にアルノーらに健常者と見抜かれ、利用される羽目に。利用者たちの親子関係を知るにつけ、自らの父親との関係――ともに強盗を働かされている――に思いを巡らせる。ルシアンはバプティストとサッカーに興じるうち、情に絆される。
アリスの恋人マチュー(Patrick Chanfray)は仕事の都合で渡米することに際しアリスを同行したい。アリスが何故躊躇っているのか理解できない。アリスは施設の利用者を家族と考えているが、マチューにしてみれば自分とアリスこそ家族であって、利用者たちは家族ではない。障害者ならアメリカにもいるという言葉によりアリスに見限られてしまう。妻となるべき女性ならアメリカにもいるだろう。カテゴリーにより抽象的に人を捉える人物では、目の前にいる1人さえ幸せにできないだろうとアリスは直観したのだ。
山荘の料理人ムリール(Heidi Becker-Babel)は全ての食事を缶詰で済ます。半個形の食事は食の楽しみを奪う。利用者たちが反発して自ら調理すると訴えると、ムリールの息子ジュリアン(Noam Mouhib)も同調する。
アリスもまた完璧ではない。アリスの組むプログラムは美術や瞑想などに偏り、ヴェルコール山地の豊かな自然を活かせていないのだ。ルシアンが異議を唱えたことをきっかけに、遠足に繰り出すことになる。