映画『恋愛裁判』を鑑賞しての備忘録
2025年、日本製作。
124分。
監督・企画は、深田晃司。
脚本は、深田晃司と三谷伸太朗。
撮影は、四宮秀俊。
照明は、後閑健太。
美術は、松﨑宙人と長谷川功。
録音は、山本タカアキ。
ヘアメイクは、稲月聖菜。
スタイリストは、キクチハナカ。
編集は、シルビー・ラジェ。
音楽は、agehasprings。
音楽ホールの通用口が開かれる。白いヴァンが停まり、人気上昇中の5人組アイドルグループ「ハッピー☆ファンファーレ」のメンバーがおしゃべりしながら降りてくる。真衣、着いたよ。座席で眠りこけていた山岡真衣(齊藤京子)に気付いた大谷梨紗(小川未祐)が車内に戻り声を掛ける。
楽屋で昨晩もゲーム実況で寝不足気味の清水菜々香(仲村悠菜)が辻元姫奈(桜ひなの)にメイク道具を貸してとねだり、メイクが遅いとリーダーの三浦美波(今村美月)に注意される。梨紗はストレッチしたり発声したり。真衣は緊張のためか浮かない表情。マネージャーの矢吹早耶(唐田えりか)が入って来て開演10分前を告げ、今日は吉田社長が来てるいるから気合入れてねと念を押す。
廊下でメンバーが円陣を組み、美波が4周年記念ライヴツアーの千秋楽だと気勢をあげる。その模様をスタッフが撮影する。矢吹に促され5人はステージへ向かう。
会場には色取り取りのペンライトを持ったファンが待ち構えている。暗いステージのスクリーンに、辻元姫奈、大谷梨紗、清水菜々香、三浦美波、山岡真衣がアニメ―ションキャラクター化したイメージとともに映し出されるのに合せ、ファンが名前を叫ぶ。ヒット曲「秒速ラヴァー」のパフォーマンスに会場は熱気包まれる。会場の外ではディスプレイにライヴの模様が流される中、スタッフがグッズ販売や交流会の設営を進める。調整室のモニターにメンバーの姿が映る。
メンバーが4周年のライヴツアーの千秋楽の感想を言い合っていると、会場の隅で見守っていた吉田光一社長(津田健次郎)の合図で照明が落ちる。「アイドルフェストーキョー2024出演決定」、「3回目の出演にしてメインステージのトリに決定」とスクリーンに映し出される。ファンの歓声が上がり、メンバーは抱き合って喜ぶ。
メンバーとファンとの撮影会。菜々香のもとに熱心なファンの山ちゃん(木原勝利)がやって来る。山ちゃん、パーカー買った? 分かる? ゲーム実況でパーカーの似合う男性がいいと言っていたから。そうだっけ? 菜々香の言葉に喜ぶ山ちゃんはCDを50枚買ったと訴え、トップアイドルに押し上げるからと意気込みを語る。社長は矢吹らと撮影会の様子を眺めながら菜々香人気の急上昇を話題にする。菜々香はゲーム実況でのコメントで人気に火が着き、SNSのフォロワー数も一気に伸びていた。新曲には真衣ではなく菜々香をセンターにする案についても話が及ぶ。
白いヴァンがマンションの前に停まる。寮組、着いたよ。ダンスはバラバラだし声も小さいと矢吹がメンバーに注意する。梨紗が交流会ばかりでレッスンの時間がないと反論する。売れてる娘たちに比べたらまだまだだからねと矢吹は時間不足を言い訳として認めない。軽率な行動を控えるよう改めて注意しSNSの配信をできる限りするよう言い含めると、メンバーがはいと返事する。真衣、梨紗、菜々香が車を降りる。また明日、しっかり休んでね。ヴァンが走り去り、3人は共同生活を送るマンションの1室へ向かう。
菜々香はゲームをしながら実況している。リヴィングでSNSの評価を確認して落ち込む真衣に梨紗が声をかける。そんなの気にしても意味ないって。2人が話しているとゲームを終えた菜々香が次の休みにゾウさんやキリンさんを見に行きたくないかと誘ってきた。菜々香はゲーム実況者のユウヤ(犬飼直紀)の誕生日にデートを望んでいた。2人は菜々香の目論見を即座に見破るが協力に応じる。
芸能事務所ファーレス所属の辻元姫奈(桜ひなの)、大谷梨紗(小川未祐)、清水菜々香(仲村悠菜)、三浦美波(今村美月)、山岡真衣(齊藤京子)の5人で構成されるアイドルグループ「ハッピー☆ファンファーレ」は結成丸4年。「秒速ラヴァー」がヒットし、「アイドルフェストーキョー2024」のメインステージで大トリを飾ることに。それでもセンターを務めるストイックな真衣は人気の高まりに実力が追いついていないと憂鬱だった。広島出身の真衣、静岡出身の梨沙、千葉出身の菜々香の3人はファーレスの寮で寝食を共にしている。ゲーム実況で俄に注目を集める菜々香はゲーム実況ユーチューバーのユウヤ(犬飼直紀)と密かに交際中。ユウヤの誕生日に菜々香が動物園でデートすることになり真衣と梨沙が盾として引っ張り出される。真衣は風船を使ったパントマイムに目を奪われると、覆面のパントマイミストは中学の同級生・間山敬(倉悠貴)だった。叔父のカラオケ店でアルバイトをしていた間山とその店に足繁く通っていた真衣とはすぐに打ち解け、真衣は間山の路上でのパントマイムに足を運ぶ。その矢先、菜々香とユウヤの写真がネットに出回り、「ハッピー☆ファンファーレ」のマネージャーの矢吹早耶(唐田えりか)は対応に大わらわ。ファーレス社長・吉田光一(津田健次郎)はアイドルを続けるなら交際を断念するよう菜々香に求める。菜々香はアイドルを続けることを選び、ユウヤとの関係を断つ。
(以下では、冒頭以外の内容についても言及する。)
アイドルと所属事務所との専属マネジメント契約において、(ファンとの)恋愛禁止を定めることが許されるのか。真衣はある事件をきっかけに間山との交際を貫くことに。その結果、所属事務所ファーレスから契約違反を理由に解雇されるとともに、800万円の損害賠償請求訴訟を提起されてしまう。笹原弁護士(吉田ウーロン太)はファーレスの事業を継承した会社から提案された和解を受け容れるよう求められるが、真衣は拒否する(なお、真衣とともに訴えられた間山は共同不法行為者間の過失割合の問題から利益相反となるため別の弁護士(橋本淳)を立てている)。真衣が新たに選任した杉村弁護士(中村優子)は憲法13条の幸福追求権(一般的行為の自由)を根拠に契約の民法90条(公序良俗)違反による無効を訴える。
現場でファンと直接触れ合うタレントの感覚と、アイドルをビジネスとして成り立たせる必要がある所属事務所との判断との乖離が問題を引き起こしている。生真面目な真衣は仕事をビジネスとして割り切ることができない。菜々香が関係を断ったユウヤがネットを介して知り合った相手であるのに対して、真衣の交際相手の間山は地元広島の中学の同級生であるという関係の深さの違いもある。
白いヴァン、楽屋、寮は動物園の檻に通じる。真衣が間山とキスを交わす間山の車のシーンでさえ金網越しであった。2人は囚われている。被告として立たされる法廷もまた檻の変奏である。だからこそ梨沙の地元で見られる水平線から昇るダルマのように括れる太陽を拝みに移動する際に真衣がハンドルを握ることは檻からの解放を象徴する。
間山がパントマイムの観客の少女に渡した白い風船は一旦飛んでいってしまいながら間山が見事に戻して見せた。果たして2人の行く末は。