可能性 ある 島 の

芸術鑑賞の備忘録

展覧会『知られざるモダニスト 寺田至 Still Life』

展覧会『知られざるモダニスト 寺田至 Still Life』を鑑賞しての備忘録
不忍画廊にて、2026年1月10日~31日。

静物画を中心に寺田至(1951-2014)の画業を展観。

《コーヒータイム》は黄土色を背景に横長の方形が表わされ、左半分にピンクを地に緑の葉を、右半分を右上と左下の対角線で区切り、右側の黄褐色の側にマグカップを配し、左側の黒い部分にはピンクの線や緑の円が描き入れられている。ピンク黄褐色は温かみを伝え、植物や幾何学図形は緊張から解き放たれた雰囲気を表わす。珈琲を容れたマグカップで構成された静物画ではなく、タイトル通り、珈琲を味わう空間・時間の絵画的形象が狙われている。《コーヒーカップ》は赤褐色と灰色とで背景を上下に分割し、ピンクの点を散らした黒い不定形が拡がり、黄褐色のマグカップと、モスグリーンのスプーンが配される。中心となるモティーフはくすんだ茶色の線が罅割れのように入った黄褐色のマグカップではあるが、台と壁とに比せられる灰色と赤褐色に跨がり黒い宇宙に眼が留まる。珈琲を飲もうとする人の姿が影として表されているようでもある。《スプーンとフォーク Ⅱ》には方形の中に菱形を配し、スプーンとフォークとをそれぞれ黄と緑との楕円の中に収める。他にも三角形の穴を見せる器か何かが描き込まれている。仙厓の《○△□》よろしく、宇宙を表わそうとしているようだ。ところで、およそ存在するには場が必要となる。作家はモティーフごとに場を表わしつつ、その場を超えて(跨ぎ越して)描く。世界が数々の場を繋ぎ合わせたものであるとの哲学が披瀝されている。