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芸術鑑賞の備忘録

展覧会 國川裕美個展『PACE 佇むかたち』

展覧会『國川裕美展「PACE 佇むかたち」』を鑑賞しての備忘録
日本橋髙島屋美術画廊Xにて、2026年1月9日~26日。

石灰岩、赤砂岩、大谷石、多胡石に人物や動物を彫り出した作品で構成される、國川裕美の個展。

表題作《pace》(980mm×400mm×330mm)は、3羽の雛のいる籠を抱え子ヤギを背に立つ少女を表わした大谷石の彫刻。ぷっくりしたお腹など全体に丸みを帯び太めに表わされた少女は、彼女の閉じた目、雛鳥や子ヤギといったモティーフにより平安さを醸し出す。恰も制作現場で彫り出す際に石の中に潜んでいた音が放たれてしまったかのように展覧会場で石彫は静かに佇む。
《pecora》(193mm×110mm×115mm)は羊を抱く人物を表わした石灰岩の彫刻。
《angelo》(330mm×115mm×95mm)は佇立する女性の左手の上に両足を載せ彼女の首に両手を回してしがみつく天使を表わした石灰岩の彫刻。女性の左手の上に両足を載せて立つ天使という発想はどこから生まれてきたのであろう。下敷きの作品はあるのだろうか。天使の背の翼、微笑んで天を仰ぐ顔、脹よかな体型が浮き立つ軽みを表わす。女性は接地したスカートにより地母神的安定感を湛える。首に廻された天使の手のせいでやや口元は歪むものの、泰然自若とした余裕を見せる。
《serpente》(240mm×145mm×125mm)は双頭の蛇に巻き付かれた人物を石灰岩に表わした作品。人物は右手に何かを胸の辺りで手にしている。樹木ごと巻き付く双頭の大蛇の片破れはその何かを狙っているようだ。もう一方は人物の髪に食らいついている。そんな蛇に人物は困る風でもない。
《La Rotonda》(330mm×300mm×300mm)は、植物文様のあるアーチの連なりの下に人物、鳥、亀、植物を浮き彫りにする円筒形の作品。地面に立つ鳥、女性に抱えられる鳥、放たれる鳥と、地上から中空へと飛翔するイメージは、アーチに見られる茎・葉・花の繰り返しの連なりにより、円環と周回運動を生み出す。
《pomeriggio》(135mm×145mm×86mm)は背もたれのあるベンチに腰掛ける人物と親亀の上に載る子亀とを表わした石灰岩の彫刻。五頭身のふっくらとした人物は左側の亀の親子の方に向いて左手を亀の前肢に合せる。光背のような放射状の線を刻んだ背凭れは午後の陽射しでもある。クリーム色の石と相俟って温かな陽射しを感じさせる。午後を表わす題名《pomeriggio》と連関する作品が、夕べを表わす題名を付された《serata》(198mm×115mm×108mm)で、でっぷりして重そうなウサギを膝の上に載せる人物を光背の中に表わす。
《capitello》(190mm×85mm×70mm)は壁龕の中に鳥を抱えて立つ人物を表わした石灰岩の作品。柱やアーチに植物や蝋燭が浮き彫りされている。着彩してある。
《仔うま》(200mm×250mm×150mm)、《仔ろば》(150mm×200mm×110mm)、小さなフライパンにそれぞ梟、孔雀、蝙蝠を象った「Padella da viaggio」シリーズ3点は赤砂岩の彫刻。《ろばの子》(150mm×290mm×100mm)は多胡石により片身替りのような半身の色味の変化が特徴的。