可能性 ある 島 の

芸術鑑賞の備忘録

展覧会 森夕香個展『霧露』

展覧会『森夕香「霧露」』を鑑賞しての備忘録
Yutaka Kikutake Gallery Kyobashiにて、2026年1月13日~2月21日。

植物をモティーフに生命のネットワークを表わした絵画で構成される、森夕香の個展。

《宇宙の構造》(222mm×160mm)は、暗赤色の画面に柿の実を表す。くすんだ緑の蔕を見せる柿の実は中心からピンク、オレンジ、山吹、再びピンクの同心円として表される。熟柿は恰も細胞分裂するかのように下にもう1つのやや小さめの柿の実と連なっている。小さい方の柿から垂れ落ちるオレンジの果汁がさらなる柿の実を生み出すことが示唆される。入れ籠による世界観を表す作品である。
《Mesh》(455mm×333mm)には露草の青い花、深緑の茎・葉が画面を主に縦横に伸びて連なる様を表す。とりわけ葉が引き延ばされるように伸び、あるいは曲がりくねることで露草同士を接続する。さらには周囲の緑、さらには水を思わせる白味のある群青により、水を介した環境との一体性を表現する。岩絵具の粒子の煌めきも一体感の醸成に一役買っている。同題作品はいくつかあり、《Mesh》(1000mm×1000mm)では茶、黄、赤、緑などの守株の落ち葉が画面を埋め尽くす。地面を表す茶に加えて水色の流線が葉の中に配される。それは水であり生命の表現であろう。落ち葉が土へ還り、再び木々に吸収されて葉となる循環まで想起される。
《Night Gust》(240mm×333mm)は3本の草花が強い風に吹かれしなる姿を表した咲く日に。中央の大きな花は左方向に茎、花が融けるように伸びるが、地面にしっかりと伸ばした根によりしっかりと立つ。花の右手にある小さな花とは花同士で伸びたもので融合している。左後方の花は風を受けて左側に大きく倒れている。融けるような植物の表現と波打つ地面とで風の強さが伝わる。灰色の空は絵具の粒が星となって夜を現出させる。《Drift》(240mm×333mm)はベージュの地面と暗赤色の空とを背景に、布を被った人物にも見える、得体の知れない存在がやはり半ば融けて地面と癒着するように立つ。
《Inside out》(410mm×273mm)は男女がキスを交わすようなイメージ。エドヴァルド・ムンク[Edvard Munch]の《接吻[Kyss]》のように一体化しているが、その身体は人間のそれではなく半ば植物のもののようだ。1つの支持体から伸び上がる脚、続く胴体の胸腔には胚のようなものが見える。花にも擬せられる頭部は2つあるが、その口を通じて再び一体化する。モスグリーンの背景は身体から発されるオーラに同調し、歪む。