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芸術鑑賞の備忘録

展覧会 滝本優美個展『そのままの濃度で』

展覧会『滝本優美個展「そのままの濃度で」』を鑑賞しての備忘録
gallery 201にて、2026年2月4日~15日。

パレットナイフを用いて混色せず置いた油絵具の抽象画10点で構成される、滝本優美の個展。

《construction》(910mm×910mm)の画面のほとんどはオフホワイトの絵具が塗られる。白とは異なる温かみと伸ばされた絵具による落ち着きを醸す。ところどころの絵具の隆起は陰影を作り、パレットナイフを動かした向きが色味を微妙に変える。擦れて水色など下層を露出させる部分もある。左端は上側を残して、右橋は下端を茶色に譲って、それぞれ白味の強い茶色が縦に配される。また、画面下端には灰色が横に伸びる。いずれも歪な形を取り、矩形の幾何学的形態から逃れる。その色面の間には下地の青や茶などの色が覗く。展示室ののっぺらぼうの壁面との対照により画面の表情の豊かさが強調される。アパルトマンの居室を利用したギャラリーは居間、寝室、浴室など4つの空間が展示に用いられているが、本作品は1室を使い1点だけ隅のL字型の低い卓に置かれる。矩形ではない天板の形とオフホワイトのやグレーのL字的イメージとが共鳴する。なおかつ部屋の入口から見て左奥に置かれることで、正面方向から左へとL字状に視線が誘導され、卓・絵画の"L"と静かに響き合う。
《lofty》(727mm×500mm)は、深緑、水色、クリーム色、ペールオレンジで構成される作品。左上に"「"状に水色、その左隅と右隅及び右下にクリーム色を置き、画面右側に"J"に近い水色と矩形に近いペールオレンジを配し、その他はやや暗めの緑色で塗り込められる。パレットナイフの動きを伝える跡が残る凹凸のある表面には所々、下層の藍や黄などを覗かせる。深緑と水色は草など植物と水溜まりや池など水とをイメージさせ、小さな庭や公園を室内に起ち上げる。
《blank》(455mm×455mm)は、クリーム色の周囲に、水色、卵色、カーキなどを置いた作品。パレットナイフの跡の残る凹凸のある表面、所々に覗く下層の色などは他の作品と共通する。本作品の特徴は、赤紫、黄土、灰色、灰青など表に覗いている色数が多く、また比較的それぞれの面積が大きいことと、左下のカーキの部分に重ねられた白味のある茶色が擦れるように塗られている点である。クリームを基調に、卵色、カーキなどの暖色系でまとめられ、2番目に面積の広い水色が添えられる、まとまりのある印象を生むが、眺めているうち、その複雑な細部の存在に気付く結構である。
《poke out》(410mm×410mm)は、画面左半分のほとんどをオレンジ、右上に画面の6分の1程度のベージュ、その下側にクリーム色、他に水色、鶯色が挿入され、残りは黒が占める。画面を引き締める黒が、オフホワイトないしクリーム色や暖色を基調とした他の作品には見られない本作品の特色である。また、オレンジ、ベージュ、クリーム色の中央部に疵痕ないし瘡蓋のような隆起が走る点でも他の作品と異なる。黒の中にオレンジ、ベージュ、クリームが黄金螺旋的(あくまで「的」である)に配されることで、闇の中から立ち上がる光を感じ取ることができる。