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芸術鑑賞の備忘録

映画『Shiva Baby シヴァ・ベイビー』

映画『Shiva Baby シヴァ・ベイビー』を鑑賞しての備忘録
2020年アメリカ・カナダ合作。
78分。
監督・脚本は、エマ・セリグマン[Emma Seligman]。
原作は、エマ・セリグマン[Emma Seligman]の短編映画"Shiva Baby"。
撮影は、マリア・ルーシェ[Maria Rusche]。
美術は、シャイアン・フォード[Cheyenne Ford]。
衣装は、ミシェル・J・リー[Michelle J. Li]。
編集は、ハンナ・パーク[Hanna Park]。
音楽は、アリエル・マークス[Ariel Marx]。
原題は、"Shiva Baby"。

 

オフィスのカウチでダニエル(Rachel Sennott)が男(Danny Deferrari)に跨がり腰を使う。そう、続けて! ダニエルの激しい動きに呻き声を上げ果てる男。ダニエルのスマートフォンに着信がある。Yシャツだけを着ていたダニエルが着替えながらメッセージを聴く。ママよ。葬儀に参列するのよね? もう出る時間なの。パパもジムから戻らないから間に合うかどうか。役に立たないわ。電話してね、メールじゃ駄目よ。ダニエルが溜息を吐く。忙しいの? ブランチの予定があって。別の客? そうね。髪や歯はあるの? ええ。パパ活しながら法律家になんて成れるの? パパ活しながら法律家になんて成れるの? ダニエルが男の科白を繰り返す。男が忘れるなよとブレスレットをダニエルの手首に着ける。どうも。ダニエルが男を見詰める。忘れてない? …そうだ! 男が紙幣を取り出しダニエルに渡す。学位取得の手助けしたい。法科大学院もね。女性を支援するのって素晴らしい事だと思うんだ、男がキスする。ダニエルがキスを返す。2人が抱き締め合う。
ダニエルが住宅街を歩く。知り合いと挨拶を交わす。ダニエル! 通りの向かいで父親
ジョエル(Fred Melamed)が大声で呼ぶ。大声出さないで、恥ずかしい。母親のデビー(Polly Draper)が愚痴る。父が娘に言う。乗せて来れたのに。何でヴァンなの? 車は修理に出してるんだ。運転のために荷物を移動する羽目になった。この人、話を聞かないのよ。アルツハイマーなのかも。葬儀は? 弔辞が最悪。化粧してるのね。いいじゃない。ママはどう? いいよ。本当に? 母親が娘の投げやりな応答を気にする。そのブレスレットは? 高そうね。高校生の頃、ママが買ってくれたの。そうだった? 行こうか。で、私は何て言えばいいんだっけ? 期末試験が終わって就活中。両親が誰が来てるという話を交わしてる間に車が到着し、マヤ(Molly Gordon)が降りてくる。良い仕事が見付かるまで家業を手伝ってるって言うのはどうだ? 駄目よ。何でだ? 私の見た目はどう、正直に。素敵よ。私の電話は? アルハイマー! マヤが手を挙げてダニエルに挨拶する。マヤと馬鹿なことはしないでよ。どういうこと? 分かるでしょ。私が寛容で何よりよ。確かに、家から追い出さなかったもんね。家になんていないでしょ、臑を囓ってるけど。もう行けるかい? あなたを待ってたのよ。ねえママ、誰が死んだの?

 

ユダヤ教徒の家庭に育った大学4年生のダニエル(Rachel Sennott)は、ウリでシナゴーグでの葬儀をすっぽかし、シーラの家での精進落としから父ジョエル(Fred Melamed)と母デビー(Polly Draper)に合流する。詮索されることを見越したデビーから、期末試験が終わって就活中だと答えるよう釘を刺される。ギクシャクした関係となっているレズビアンのマヤ(Molly Gordon)も母親と姿を現わした。ロースクールに進学する優等生のマヤは葬儀に参列していなかったといびられ、ダニエルははぐらかす。デビーもキャサリンやスーザン(Jackie Hoffman)らからダニエルについてあれこれ質問され、その場凌ぎで応じる。参列者の中に午前中にセックスの相手をした男がいた。ジャニスとモーリーの息子マックスだと言う。マックスは美しい実業家の妻キム(Dianna Agron)と赤ん坊ローズ(Edgar Harmanci)を伴っていた。

(以下では、全篇に言及する。)

冒頭、マックスはダニエルにセックスの相手を務めさせた後、ダニエルから請求されなければ金を出さない。口先では就学の支援ができるのは素晴らしいなどとほざきながらだ。マックスの人間性が端的に示される。精進落としに加わったマックスは、3つの事業を手掛ける遣手の美人キムと赤ん坊ローズを伴っていた。午前中は会議と偽ってダニエルを買い、費用は美食家を装って妻に出してもらっていることが判明する。しかもキムは第二子も出産予定という。マックスはダニエルに関係を終わりにした方がいいなどといけしゃあしゃあと言ってのける。ダニエルはマックスに復讐しようとするのだが。
住宅に多数の葬儀参列者が立ち寄っている状況で、ダニエルとマヤ、ダニエルとマックスなど視線のやり取りを示す以外では、顔のアップのショットが多い。見知った者同士のコミュニケーションは、相互監視のシステムでもあり、コミュニティのしがらみ、窮屈さが表現される。嘘を重ねるダニエルの身から出た錆とは言え、次から次へと災難が降り懸かる。生き地獄では、トイレが唯一の避難所となる。帰りには、ジョエルの商用車にダニエルの一家、マックスの一家、マヤが詰め込まれることで、コミュニティのしがらみが終わらないことが暗示される。
マヤがダニエルに辛く当たるのは、マックスに対する嫉妬からだろう。マヤを男に奪われたくないのだ。マヤはダニエルがなくしたスマートフォンを偶然発見し、内容を確認した後、キムに渡したのも、同様だ。