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芸術鑑賞の備忘録

展覧会 西山大基個展『Afterimage』

展覧会『西山大基展「Afterimage」』を鑑賞しての備忘録
銀座 蔦屋書店〔インフォメーションカウンター前〕にて、2026年6月27日~7月24日。

板塔婆、以前に制作に用いたアカマツ、手製の木琴「ワリンバ」の端材、織畑の廃材、裁縫用作業台、蔵の構造材、颱風で倒れたヒマラヤスギなどに抽象的な人物立像を彫り出した「像」シリーズで構成される、西山大基の個展。

「像」シリーズの頭部は頬骨の部分で拡がり尖った顎に向かって窄まる。除雪車両のラッセル車の先頭のようなシャープな印象である。眼が穿たれ、口の線が引かれ、鼻の形が表わされる。極めてシンプルである。円空仏が余程具象性に満ちていることがよく分かるだろう。首は無い。胴は、アルベルト・ジャコメッティ[Alberto Giacometti]ほど平板ではないが、《像210》(490mm×100mm×56mm)や《像205》(340mm×36mm×35mm)のように腹部がやや膨らみつつもさらに細い脚部までスレンダーなタイプのものと、《像207》(383mm×59mm×58mm)のように肩がやや張ったものとがある。胴に比して脚はいずれも細く表現され、折れるか折れないかの際どい線が狙われている。故にジャコメッティ的な印象を喚起させる。台座は素材によって形が変えられている。伐採された樹木の《像191》(370mm×35mm×35mm)や廃棄されたスギ《像97》(255mm×42mm×41mm)、ヒマラヤスギの倒木《像215》(328mm×35mm×35mm)などは四角錐台である。機織の一部を用いた《像210》や裁縫用の作業台の部分である《像211》(405mm×36mm×43mm)、蔵の構造体であった《像217》では段差やほぞ穴を活かされている。自作の木琴「ワリンバ」制作の端材であった《像183》(275mm×225mm×90mm)は丸太を扇型に裁断した平面を持つ。
シリーズ第1作《像1》(213mm×35mm×35mm)は、制作に用いていたアカマツから彫り出した人物の立像。頬がやや張る点、首が表わされない点はその後の作品群と変わらないが、両眼・鼻・口がはっきりと表わされ、右腕の表現があり(左腕はない。右半身を中心とした表現は《像50》(225mm×30mm×30mm)にも見られる)、脚も胴と同じくらい太い。制作が重ねられるにつれ、脚を極限まで細くすることで、立って存在すること、すなわち生きるという主題が前景化されてきたようである。そのために腕の表現も不要とされたのであろう。切り立つ姿は、依代ともなるのである。
《像194》(350mm×75mm×35mm)は卒塔婆(板塔婆)から彫り出した作品で、台座に筆の文字が残されている。卒塔婆はストゥーパ[स्तूप]であり、仏舎利を納める塔であった。涅槃への憧れへと通じる。"afterimage"とは残像ではなく、輪廻からの解脱を象徴するのではないか。