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芸術鑑賞の備忘録

映画『芳華 Youth』

映画『芳華 Youth』を鑑賞しての備忘録
2017年の中国映画。
監督はフォン・シャオガン(冯小刚)。
脚本は、原作である小説『芳华』の作者ゲリン・ヤン(严歌苓)。
原題は、『芳华』。英題は"Youth"。

文化大革命期の1970年代、人民解放軍の文工団(歌や踊りを披露して兵士を慰労する部隊)で青春を過ごした人びとを、後に作家となったシャオスイツ〔萧穗子〕(钟楚曦)が回想する形で物語が進行する。
シャオスイツは、主人公は自分ではないと語り、ある雨の日、文工団にやって来たホー・シャオピン〔何小萍〕(苗苗)と、それを迎えに行ったリウ・フォン〔刘峰〕(黄轩)とを主人公として紹介する。
ホー・シャオピンの実父は「反革命分子」として労働改造所に収容されていた。継父の姓を名乗ってはいるものの、継父にもその家族に冷遇されていたシャオピンは、文工団で人生を再スタートさせられるとの希望で胸がいっぱいだった。事情を把握していたリウ・フォンは、家庭の事情については伏せておこうとシャオピンに伝える。
文工団のアトリエでは、分隊長(苏岩)の指導の下で『草原女民兵』のリハーサルが行われていた。休憩の際、シャオピンは分隊長によってメンバーに紹介され、早速何か踊ってみせるよう促される。シャオピンが踊って見せる間、寮長を務めるハオ・シューウェン〔郝淑雯〕(李晓峰)はシャオピンの服の匂いをメンバーにかがせてからかっていた。
シャオスイツはシャオピンを寮に案内して生活に必要な品を渡すが、軍服の在庫を切らしていた。2週間後には夏服に切り替わるからすぐに手に入ると諭すのだが、シャオピンは、一刻も早く軍服に身を包んだ姿を実父に見せたかった。軍服が壁にかかっているのを見つけたシャオピンは、皆が食堂に出向いている際に、無断で軍服をもって写真館に向かってしまう。リン・ディンディン〔林丁丁〕(杨采钰)は軍服のポケットに入れていた薬を取りに一人部屋に戻ると軍服が見当たらないので騒動になるが、皆で部屋に戻った時には軍服が壁にかけてあり、ディンディンの勘違いで話はいったん収まる。だが、数日後、文工団が任地に赴く際、街の写真館に飾られた軍服姿のシャオピンの写真がシューウェンとディンディンとに目撃されてしまい、軍服を盗んだシャオピンへの風当たりが一気に強くなる。

恵まれない家庭環境に育ったシャオピンが、「活雷峰」(模範兵・雷峰の再来)と皆に愛される心優しいリウ・フォンを慕って文工団で必死に生活する様が前半の主軸。そこにリウ・フォンやシャオスイツ、シューウェンらの恋愛模様が絡み合っていく。
文化大革命の終焉は、文工団の運命も大きく変えていくことになる。シャオピンの父の「平反」はあるのだろうか。そして、リウ・フォンが大学進学を蹴ってまで文工団に残る理由が明らかになり、ある事件をきっかけに物語は大きく動き出す。リウ・フォンが文工団を離れ、中越戦争の前線に向かうことにある。リウ・フォン不在の文工団でシャオピンは一体どうなるのか。

中心となるシャオピンとリウ・フォンの物語はかなり過酷なものだ。それでも、文工団の若者たち、とりわけ女性たちの瑞々しい魅力が存分に描き出される。彼女たちの放つ輝きは、作品全体を覆ってしまうほどに強い。そして、だからこそ、失われた輝きへの希求に、胸を掻き毟られることになるだろう。

中国で、文化大革命中越戦争をどう評価するかは、それほど容易なことではないのではないか。それでも、シャオピンとリウ・フォンとを通じて、それらに対する作り手のメッセージが伝わってくる。そこにこの作品を青春群像劇で終わらせない強度がある。