可能性 ある 島 の

芸術鑑賞の備忘録

本 コニェッティ『帰れない山』

パオロ・コニェッティ『帰れない山』〔新潮クレスト・ブックス〕新潮社(2018)を読了しての備忘録Paolo Cognetti, 2016. "Le otto montagne".関口英子訳 序章と「子供時代の山」・「和解の家」・「友の冬」の三部構成。 ミラノで暮らすピエトロは、夏をモンテ…

本 高山羽根子『首里の馬』

高山羽根子『首里の馬』〔新潮文庫た-135-1〕新潮社(2023)を読了しての備忘録 沖縄の港川。アメリカ領時代に建設されたアメリカ人住宅が観光地と化している。その近傍にあるコンクリート素地のままの建物に「沖縄及び島嶼資料館」なる私設博物館がある。未名…

本 筒井康隆『モナドの領域』

筒井康隆『モナドの領域』〔新潮文庫つ-4-56〕新潮社(2023)を読了しての備忘録 河川敷で若い女の腕が発見された。その美貌で周囲の視線を惹き付ける上代真一警部が現場に向かうと、第一発見者は演劇装置のために葦を刈りに来た美大生の實石夏生だと井上巡査…

本 オーエンズ『ザリガニの鳴くところ』

ディーリア・オーエンズ『ザリガニの鳴くところ』早川書房(2020)を読了しての備忘録Delia Owens, 2018, "Where the Crawdads Sing"友廣純訳 1969年10月30日の朝、バークリー・コーヴの村の保安官エド・ジャクソンのもとに地元の少年ベンジー・メイスンとステ…

本 ウエルベック『セロトニン』

ミシェル・ウエルベック『セロトニン』〔河出文庫ウ-6-5〕河出書房新社(2022)を読了しての備忘録Michel Houellebecq, 2019, "Sérotonine"関口涼子訳 フロラン=クロード・ラブルストは、40代半ばで、農業食料省の契約調査員として高給取りだった。パリ15区の…

本 サリンジャー『キャッチャー・イン・ザ・ライ』

J.D.サリンジャー『キャッチャー・イン・ザ・ライ〔ペーパーバック・エディション〕』白水社(2006)を読了しての備忘録J.D. Salinger, 1951, "The Catcher in the Rye"村上春樹訳 ホールデン・コールフィールドが、ペンシルヴェニア州エイジャーズタウンにあ…

本 サヴェージ『パワー・オブ・ザ・ドッグ』

トーマス・サヴェージ『パワー・オブ・ザ・ドッグ』〔角川文庫サ-5-1〕KADOKAWA(2021)を読了しての備忘録Thomas Savage, 1967, "The Power of the Dog"波多野理彩子訳 モンタナ州南西部。ボストンの名門に連なるバーバンク家のフィルとジョージの兄弟は、今…

本 チャペック『白い病』

カレル・チャペック『白い病』〔岩波文庫・赤774-3〕岩波書店(2020)を読了しての備忘録Karel Čapek, 1937, "Bílá nemoc"阿部賢一訳3幕劇の戯曲。付録として1937年刊の初版本に付された作者による「前書き」と生前未発表の作者による改題が収められている他、…

本 ヴェルヌ『海底二万里』

ジュール・ヴェルヌ『海底二万里 上・下』〔新潮文庫ウ-2-2・ウ-2-3〕新潮社(2012)を読了しての備忘録Jules Verne, 1870, "Vingt mille lieues sous les mers"村松潔訳上巻は第1部全24章、下巻は第2部全23章。エデュアール・リユーによる扉絵とアルフォンス…

本 コッローディ『ピノッキオの冒険』

カルロ・コッローディ『ピノッキオの冒険』〔光文社古典新訳文庫K-A-コ-9-1〕光文社(2016)を読了しての備忘録Carlo Collodi,1883, "Le avventure di Pinocchio"大岡玲訳本編(p.7-305)の他、訳者による読み応えある解説(p.306-361)、カルロ・コッローディ年譜…

本 川端康雄『ジョージ・オーウェル 「人間らしさ」への讃歌』

本 川端康雄『ジョージ・オーウェル 「人間らしさ」への讃歌』(岩波新書新赤版1837/岩波書店/2020年)を読了しての備忘録 目次はじめに第1章 植民地生まれの奨学金少年 1903-1921インド生まれのイギリス人/セント・死ぷりアン校での学校生活/「あの楽しか…

本 スタインベック『怒りの葡萄』

ジョン・スタインベック『怒りの葡萄〔新訳版〕上・下』〔ハヤカワepi文庫epi80・81〕早川書房(2014)を読了しての備忘録John Steinbeck, 1939, "The Grape of Wrath"黒原敏行訳 殺人罪で収監されていたトム・ジョードが仮釈放になり4年ぶりに故郷に戻ってき…

本 オーウェル『動物農場』(2)あつまれ どうぶつの森

『あつまれ どうぶつの森』というゲームのヒットは、「あつ森」という略称が人口に膾炙していることからも知られた(信長を通じて「アツモリ」という響きに馴染みがあるせいもあろう)。このゲームでは最初に借金を背負わされたプレーヤーが孤島に送られると…

本 オーウェル『動物農場』

ジョージ・オーウェル『動物農場〔新訳版〕』〔ハヤカワepi文庫epi87〕早川書房(2017)を読了しての備忘録George Orwell, 1945, "Animal Farm"山形浩生訳本編の他、「報道の自由:『動物農場』序文案」(1945)と「『動物農場』ウクライナ語版への序文」を所収。…

本 毛利嘉孝『バンクシー アート・テロリスト』

本 毛利嘉孝『バンクシー アート・テロリスト』(光文社新書1038/光文社/2019年)を読了しての備忘録 目次はじめに発端は小池百合子・東京都知事のツイッター/次々と、”発見”される「バンクシーの作品かもしれない」落書き/世界が震撼した「シュレッダー事…

本 トカルチュク『逃亡派』

オルガ・トカルチュク『逃亡派』〔エクスリブリス〕白水社(2014)を読了しての備忘録Olga Tokarczuk, 2007. "Bieguni"小椋彩訳 116のエピソードが織りなす「巡り合わせ(コンステレーション)」の文学。 因果律にしたがい首尾一貫している論拠の連なりなどと…

本 大山エンリコイサム『ストリートの美術 トゥオンブリからバンクシーまで』

大山エンリコイサム『ストリートの美術 トゥオンブリからバンクシーまで』(講談社選書メチエ724/講談社/2020年)を読了しての備忘録 目次はじめに第1部 都市都市と歩行(フランシス・アリスのリズム―空間の占有、更新、中断/システムと横断―ニューヨークを…

本 森村泰昌『自画像のゆくえ』

本 森村泰昌『自画像のゆくえ』(光文社新書1028/光文社/2019年)を読了しての備忘録 目次はじめに「傘がない」、それはいいことだ/ルソー『告白』にさかのぼる/現代版「わたしがたり」のルーツはどこにある/20世紀は写真の世紀だった/21世紀人のための…

本 ウエルベック『闘争領域の拡大』

ミシェル・ウエルベック『闘争領域の拡大』〔河出文庫ウ-6-4〕河出書房新社(2018)を読了しての備忘録Michel Houellebecq, 1994, " Extension du domaine de la lutte"中村佳子訳 「僕」は、エコール・ポリテクニーク出身の30歳の中堅サラリーマン。ソフトウ…

本 大髙保二郎『ベラスケス 宮廷のなかの革命者』

本 大髙保二郎『ベラスケス 宮廷のなかの革命者』(岩波新書新赤版1721/岩波書店/2018年)を読了しての備忘録 目次はじめに~モノローグ~Ⅰ 画家の誕生~聖・俗の大都市セビーリャとボデゴン~画家の誕生と出自の謎/都市セビーリャの歴史/大航海時代/聖と…

本 宮崎克己『ジャポニスム 流行としての「日本」』

本 宮崎克己『ジャポニスム流行としての「日本」』(講談社現代新書2506/講談社/2018年)を読了しての備忘録 目次はじめに第1章 ジャポニスムの「見え方」山頂とすそ野/「ジャポニスム」という言葉/双方向の流れ第2章 開国のインパクト浮世絵の発見/アヘン…

本 ベル『ささやかな頼み』

ダーシー・ベル『ささやかな頼み』〔ハヤカワ・ミステリ文庫449-1〕早川書房(2017年 )を読んでの備忘録 Darcey Bell, "A Simple Favor"(2017) 東野さやか訳 女性誌で記者をしていたステファニーは、取材で建築家のデイヴィスと知り合い、結婚する。息子マイ…

本 三浦篤『エドゥアール・マネ 西洋絵画史の革命』

本 三浦篤『エドゥアール・マネ 西洋絵画史の革命』(角川選書607)KADOKAWA[2018年] はじめに マネの特異性について Ⅰ.過去からマネへ第1章 成熟するイメージ環境第2章 イタリア絵画 ティツィアーのとラファエロ第3章 スペイン絵画 ベラスケスとゴヤ第4章 フ…

本 碧海寿広『仏像と日本人』

本 碧海寿広『仏像と日本人 宗教と美の近現代』(中公新書 2499)中央公論社〔2018年〕 序章 仏像巡りの基層第1章 日本美術史の構築と仏教 明治期第2章 教養と古寺巡礼 大正期第3章 戦時下の宗教復興 昭和戦前期第4章 仏像写真の時代 昭和戦後期①第5章 観光…

本 オースティン『自負と偏見』(2)湖水地方

キャサリンは叔父・叔母に当たるガーディナー夫妻と湖水地方に旅行に出かけることになる。ところが、その計画は、ミスター・ガーディナーの急用で変更になってしまう。 北部地方の旅の予定日は着々と近づきつつあった。が、あとわずか2週間という時になって…

本 ジェイン・オースティン『自負と偏見』

ジェイン・オースティン(Jane Austen)(小山太一訳)『自負と偏見』(Pride and Prejudice)(新潮文庫)を読了しての備忘録。 『高慢と偏見』という邦題でも知られるジェイン・オースティンの『自負と偏見』を、2014年刊行の小山太一訳で初めて読む。 作品の…