可能性 ある 島 の

芸術鑑賞の備忘録

展覧会 平田実個展『東京慕情/昨日の昭和 1949-1970』

展覧会『平田実「東京慕情/昨日の昭和 1949-1970」』を鑑賞しての備忘録
タカ・イシイギャラリー フォトグラフィー/フィルムにて、2019年3月9日~4月27日。

50年代から70年代にかけての東京をテーマとした平田実の写真展。

かつての繁華街、チンドン屋、紙芝居など戦後の東京を写した作品が並ぶ。写真の風景を現在求めても、見つけられるのは新宿駅西口地下ロータリーくらいだろう。ほとんどが失われた光景。

NEWYORKERと書かれたガラス扉の内側に立つ女性や、ビラがべたべたと張られた壁のある街角を闊歩する女性が魅力的だ。突然挟み込まれるヌードも眼をひく。
通りの真ん中に置かれた三輪車や、足を上げたチンドン屋新宿駅西口地下ロータリーを行く自動車などカチッと決まった構図の作品が並ぶ。その中で、ベンチに座って眠る男性の写真のみ、水平位置から左側にやや傾いている。これは、被写体の男性が右手に頭を乗せて眠っていて、その右手の角度が210度くらいに折れているのに同期したためだろうか。撮影は射撃(ショット)でもあるが、その傾きと被写体との距離感にはやさしさを感じざるを得ない。