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芸術鑑賞の備忘録

映画『1917 命をかけた伝令』

映画『1917 命をかけた伝令』を鑑賞しての備忘録
2019年のイギリス・アメリカ合作映画。
監督は、サム・メンデス
脚本は、サム・メンデスとクリスティ・ウィルソン=ケアンズ
原題は、"1917"。

1917年、第一次世界大戦下にあるフランスの西部戦線。野営地近隣の草原で休んでいた上等兵トム・ブレイク(Dean-Charles Chapman)が司令部からの召集を受ける。事態を把握していないブレイクは、一人選んで連れてくるよう命じられたため、傍らで寝ていた上等兵ウィリアム・スコフィールド(George MacKay)とともに塹壕の中に設けられた司令部へと向かう。二人は、エリンモア将軍(Colin Firth)から戦況の説明を受ける。ドイツ軍の一部が撤退し、デヴォンシャー連隊第2大隊を率いるマッケンジー大佐(Benedict Cumberbatch)は膠着した戦線を打開するためにドイツ軍を追撃するだろう。だが空中偵察の結果、ドイツ軍は、後方に大量の火器を配備しており、戦略的な撤退を行っていると考えられる、と。将軍は、通信回線が遮断されているため伝令を送らなければならず、ブレイクの兄ジョセフ・ブレイク中尉(Richard Madden)を含む第2大隊の兵員1600人の兵員を救うため今すぐ出発するよう二人に命じる。後方の楽な任務に回れるかもしれないとの甘い見通しを抱いていたブレイクは、兄を含む人命を救わなければならないと覚悟を決めて急ぐ。一方、スコフィールドは撤退したとは言え敵地を抜けなくてはならない危険を冒すのは、せめて日が落ちてからにするべきだと訴えるが、ブレイクは将軍から今すぐ発つよう命じられたと聞く耳を持たない。狭い塹壕の中を兵士たちの間を縫って進み、塹壕の最前線に至る。最前線を指揮するゴードン中尉(Pip Carter)は、鉄条網の補修に向かった3人のうち2人は遺体となったところだと、敵地を進むなど正気ではないと反対する。だが、二人の決意を見て取った中尉は、馬の死骸と鉄条網にかかった遺体を目印に進めば敵地へ侵入できるとアドバイスし、もしうまく侵入できたなら信号弾を打つようにとブレイクに装備を渡す。「年上が先だ」と逸るブレイクを制したスコフィールドは、塹壕から這い上がり、敵地へ向かって先行するのだった。

 

本作の売りである「全編ワンカット」の映像が、戦場と任務の緊張感を生むのに成功している。二人と同様、一歩先に何が待つのか分からない観客は、兵士でごった返す塹壕や、死体や死骸が転がる戦場、不自然に静かで穏やかな平原などを警戒しながら進むことになる。なおかつ映像が単調とならないようカメラの動きには様々な工夫が凝らされている。