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芸術鑑賞の備忘録

映画『ジュディ 虹の彼方に』

映画『ジュディ 虹の彼方に』を鑑賞しての備忘録
2019年のイギリス映画。
監督は、ルパート・グールド(Rupert Goold)。
原作は、ピーター・キルター(Peter Quilter)のミュージカル"End of the Rainbow"。
脚本は、トム・エッジ(Tom Edge)。
原題は、"Judy"。

幼い頃から芸能の世界で生きてきたジュディ・ガーランド(Darci Shaw)は、思春期のただ中にあって、普通の女の子の暮らしに憧れていた。MGM社の映画制作部門を束ねるルイス・B・メイヤー(Richard Cordery)は、ジュディの希望に理解を示しながらも、他の少女と同じ生活をしたのでは、飛び抜けた歌の才能を活かすチャンスも、大人になるまでに大金を稼ぐこともかなわないと諭して、『オズの魔法使』のドロシー役を引き受けさせる。
映画の世界で仕事をすることができなくなったジュディ(Renée Zellweger)は、娘のローナ(Bella Ramsey)と息子のジョーイ(Lewin Lloyd)とともに歌を披露しながら生活をしている。ステージがはねて定宿に向かうと、ジュディは滞納を理由に宿泊を拒否されてしまう。やむを得ずジュディは元夫で子どもたちの父親でもあるシド・ラフト(Rufus Sewell)の家へ押しかける。真夜中に子どもたちを連れてやって来たジュディに、シドは、学校を出るまでは自分が面倒を見た方が子どもたちのためだと意見する。ジュディは一人シドの家を後にする。
娘のライザ・ミネリ(Gemma-Leah Devereux)と再会したパーティーで、ジュディは野心的なナイトクラブの経営者ミッキー・ディーンズ(Finn Wittrock)と知り合い、親しくなる。
子どもたちとの生活を手に入れるためにも安定した収入が必要だと一念発起したジュディは、エージェントのケン・フリッシュ(Tom Durant Pritchard)のもとを訪れる。彼は業界の信用を失ったアメリカに見切りを付け、依然高い人気を誇るイギリスに活路を見出すべきだと助言する。シドの家で子どもたちに再会し、クリスマスは別々だが新年には一緒に過ごせると告げたジュディは、ロンドンへ飛ぶ。ロングランのステージを行う劇場の支配人バーナード・デルフォンド(Michael Gambon)に迎えられ、マナージャーのロザリン・ワイルダー(Jessie Buckley)からスケジュールを渡される。

 

ジュディ・ガーランドの晩年を、極めて劣悪な労働を強いられていた(虐待されていたといっていい)子役時代のフラッシュバックを挟みながら描く。邦題で「虹の彼方に」が掲げられているのは、本作が、ジュディの当たり役であった映画『オズの魔法使』のドロシーに重ねられているから。「家が一番いい」と願い続けるドロシー=ジュディに安住の家が存在しないという悲劇が、ジュディとルイス・B・メイヤーとの「密室」と不自然に明るい『オズの魔法使』の舞台セットとの対比、そして豊かな生活を約束された少女時代と子どもを抱えた「ホームレス」の晩年との対比といった形で、冒頭から鮮やかに示される。
ジュディ(Renée Zellweger)の歌がとにかく沁みて仕方が無い。アカデミー賞など多くの映画賞で主演女優賞を攫ったのも頷ける。
ジュディ・ガーランドと「レインボーフラッグ」との結びつき(諸説あるようだが)に纏わるエピソードも織り込まれてる。なおイギリスの同性愛に対する法規制については、映画『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』(2014)でも描かれている。
今後、Jessie Buckleyに要注目。