映画『犬鳴村』を鑑賞しての備忘録
2020年の日本映画。
監督・原案は、清水崇。
脚本は、保坂大輔と清水崇。
西田明菜(大谷凜香)は恋人の森田悠真(坂東龍汰)とともに心霊スポットとして知られる犬鳴トンネルを訪れる。ダム湖の橋のたもとにある電話ボックスの公衆電話が、午前2時頃に鳴る。噂に違わぬ展開に明菜ははしゃいでいるが、悠真は彼女のノリに今ひとつついて行くことができない。トンネルを先へ先へと進む明菜の後を恐る恐る追う悠真。トンネルを抜けた先には、日本国憲法が適用されない旨を告げる看板がうち捨てられ、その先には廃屋が軒を連ねていた。
新人の臨床心理士・森田奏(三吉彩花)は、母親(奥菜恵)に連れ添われて来た遼太郎(笹本旭)という少年の担当になるが、彼は奏に話そうとしない。話さないよう言われているという。遼太郎には別の母親の姿が見えているらしく、奏もその存在に勘付いていた。
奏が帰宅すると、兄の悠真から、明菜の様子がおかしいと相談される。明菜は民謡のようなものを繰り返し歌いながら、一人ペンを走らせて絵を描いていた。奏が臨床心理士としての所見を伝えると、悠真は、精神医学の話を聞きたいのではなく、霊感の強い奏に何か見えないかを確認したかったのだと言われる。そのとき、弟の康太(海津陽)が悠真に明菜の尋常で無い姿を見たと訴える。
ヒットの原因を探りたくて鑑賞。
説明的な分かりやすい科白や演技、恐怖感を極限まで抑えた描写や効果から、ジュブナイル作品と知られる(ホラー映画が苦手な人に向いているとも言える)。その分、負の記録の抹消に抗うことの必要性を若い世代に伝えようという作り手の明確なメッセージが打ち出されている。ホラー映画の「ダークツーリズム」としての性格を描く「メタ映画」とも捉えられるかもしれない。記録の軽視・抹消・改竄といった現実社会に対する怒りが人々を劇場に引き寄せているといってもいいだろう。