可能性 ある 島 の

芸術鑑賞の備忘録

映画『カラダ探し』

映画『カラダ探し』を鑑賞しての備忘録
2022年製作の日本映画。
102分。
監督は、羽住英一郎
原作は、ウェルザードの小説『カラダ探し』。
脚本は、土城温美。
企画は、原祐樹。
撮影は、一坪悠介。
照明は、浜田研一。
録音は、小林圭一。
美術プロデューサーは、小山大次郎。
美術は、小坂健太郎
装飾は、小林宙央。
衣装は、池田友紀。
ヘアメイクは、宮本奈々。
特殊造型は、梅沢壮一。
VFXプロデューサーは、長井由実。
特機は、佐藤雄大
操演は、宇田川幸夫。
編集は、金田昌吉。
音響効果は、柴崎憲治。
音楽は、菅野祐悟

 

夜の森。白い服の少女がぬいぐるみを右腕に抱いて必死に走っている。森の中に立つ洋館の中に駆け込むと、扉を閉め、椅子を動かして扉を塞ぐ。机の影に潜んでいると、背後の窓が開けられ、斧を持った人物が少女に近づく。男は少女に何度も斧を振り下ろす。鮮血が迸る。
ブルガリア・ソフィア当局によるカラダ探しに関する資料。カラダ探しのルールなどがキリル文字で記載されている。
朝7時。ナイトテーブルの目覚まし時計とスマートフォンのアラームが鳴り、森崎明日香(橋本環奈)が目を覚ます。身支度を整えてリビングに降りると、母親(西田尚美)が娘に朝食を渡しながら声をかける。今日は早いのね。お父さんも人身事故で電車が遅れてるからって早く出たのよ。父さんの残りでしょと追加されたプチトマトを戻すと、テーブルに着く前からトーストに齧り付く。落ち着いて食べてよ。テレビのニュースを眺めながら明日香がテーブルで食事をとる。コロッケ作りすぎたから友達にあげて。母親が弁当箱の上にコロッケを詰めたプラスティック容器を載せる。明日香は微妙な表情を浮かべる。
通学路には登校する生徒たちの姿がある。2人の男子生徒が友人と歩く鳴戸理恵(横田真悠)に見とれる。可愛いよな。高嶺の花だよ。1人歩いている明日香を見かける。森崎ならいけるんじゃない? ボッチの森崎はない、と言下に否定する。そこに伊勢高広(眞栄田郷敦)が合流する。理恵ちゃんとはどうなってんだ? 3人で盛り上がっていて、高広にぶつかられた明日香はカバンを落とす。明日香が1人で拾い上げると、近くに清掃車が停まり、清掃員がゴミを回収する。傍のフェンスにはネコが上っていた。バイクで送ってもらった柊留美子(山本舞香)が、店に行くねと言ってバーのマスター(柳俊太郎)を見送る。そのとき急ブレーキの音がする。バスがネコを轢いてしまった。
昇降口。下駄箱で高広がネクタイピンを簀の子に落とす。明日香が気付いたが躊躇した隙に理恵が先に拾い上げ、高広に手渡す。今日、日直だよね。理恵は日誌も高広に手渡す。理恵は高広の役に立てた喜びを隠さない。
教室では文化祭の集金袋が無くなったと男子生徒が浦西翔太(醍醐虎汰朗)の机を漁っていた。身に覚えの無い集金袋が机の中から出て来て、翔太が動揺する。学級委員の私の管理が行き届いていなかったと理恵が助け船を出す。文化祭の委員を決めるのは明日にしようと理恵が皆に告げる。
昼休み。クラスメイトが会話に花を咲かせて昼食を取る中、明日香は1人教室を出る。人気の無い礼拝堂の脇にあるベンチに明日香が腰掛けて弁当を食べ始めると、目の前にある古い井戸から血に塗れた無数の手が藻搔くように突き出されるのが見えた。礼拝堂の改修工事のために設置されていた工事用フェンスを外して数人の職人たちが姿を現わす。悪いね、これから重機入るから。職人たちが立ち去ると、明日香は起ち上がって古井戸の中を覗く。底を見通せない闇が広がっているばかりだった。
明日香は教室に戻る途中、校舎裏の空地で土を掘り返している司書教諭の八代(柄本佑)に出会す。屋代は黒いビニール袋を埋めた。突風が吹いて、壁際に雑多に積み上げてあった廃品の山から植木鉢が落ちて割れる。明日香が気配を感じて後ろを振り返ると、白い服の少女が立っていた。オネガイ、ワタシノカラダヲサガシテ。
体育館。バスケ部が練習している。高広の飛び抜けたパフォーマンスを見ながら生徒たちが話している。中学の時、スカウトされたらしいよ。何でうちみたいな弱小校に? プロになる気は無いって断ったらしい。もったいねー。
清宮篤史(神尾楓珠)が自室に引き籠もってFPSに興じている。
背中に落書きを貼られて廊下を歩く翔太が、他の生徒から笑われている。
理恵はカフェで友人たちとパフェを囲んでいる。
留美子はバーのカウンターでマスターの手伝いをしている。
夜、明日香が自室にいると、スマートフォンに着信がある。確認すると、文字化けのような名前の送信者。赤い人は何で赤いのか? 血で赤い。読め。読め。読め。次々と送られるメッセージ。恐くなって思わず手放すと、机の上でスマートフォンが震えて動く。明日香はベッドに潜り込む。
真夜中。明日香は気が付くと、礼拝堂の中にいた。内陣には柩が置かれている。明日香の他に、高広、理恵、留美子、翔太、それに学校に姿を見せない篤史の姿もあった。

 

高校生の森崎明日香(橋本環奈)は誰からも相手にされず孤独な学校生活を送っている。いつもより早く出かけた朝、登校中にネコがバスに轢かれる場面に遭遇する。昼休みに1人で礼拝堂脇のベンチで昼食をとっていると、古い井戸から無数の血塗られた手が飛び出すのが見えたが、中を覗き込んでも暗闇が広がるばかり。教室に戻ろうとして、校舎裏で司書教諭の八代(柄本佑)が何かを埋めているのを目撃したとき、突風が吹いて植木鉢が落ちて割れる。気配を感じて振り返ると、白い服の少女が私の体を探してと訴えた。その晩、自室にいた明日香のスマートフォンに知らない人物からのメッセージが連続して入る。恐くなってベッドに潜り込む。真夜中、気が付くと明日香は礼拝堂にいた。そこには幼馴染みの伊勢高広(眞栄田郷敦)、学級委員の鳴戸理恵(横田真悠)、いじめられている浦西翔太(醍醐虎汰朗)、蓮っ葉な柊留美子(山本舞香)、普段学校に来ない清宮篤史(神尾楓珠)の姿があった。翔太だけ「カラダ探し」が本当に存在するのかと得心しているが、他の5人は訳が分からない。篤史が1人礼拝堂を後にするが、間もなく悲鳴が聞こえる。皆が校庭に向かうと、上半身と下半身とに切断された篤史の体が転がっていた。校舎のガラス窓を割って、女生徒の死体が飛び出した。翔太が逃げろと叫び、校門に向かうが、高い門扉は固く閉ざされ、錠を破壊することもできなかった。5人は校舎内に逃げ込む。

(以下では、全篇について言及する。)

リアル脱出ゲームのホラー映画版と言える。ジュヴナイルのため描写は穏当で、音や急な登場で驚かせる演出も控えてある。その分、爽やかな青春映画の要素が組み込まれている。
孤独や後悔などの心の隙間がモンスターを引き寄せ、育んでしまうことを「赤い人」ないし「エミリー人形」で具象化する。同じ1日が繰り返されるのは、自らが抱える悩みから抜け出せないことを表わしている。
例えば一番初めに犠牲になる篤史は、脚の怪我でバスケットボールを辞めたことが、不登校の原因であることが後に明かされる。下半身が上半身から切断される形で殺害されるのは、脚が使えないこと――それによって死んだ状態になっていること――の象徴である。また、高広は、バスケットボールの強豪校にスカウトされながら、プロになる自信が持てず辞退した過去がある。胸を串刺しにされるのは、自らの小心に対する悔い(≒杭)に常に囚われていることの表現である。
そして、「カラダ探し」において、バラバラにされた身体を全て探し出し、組み合わせることが求められるのは、自らの悩みを正確に捉えることで、悩みに向き合い、対処することを可能にするためであろう。それができたとき、次の日を迎える(≒前へ進む)ことができるのである。
繰り返される「カラダ探し」の過程で、6人はチームプレイを行い、互いの絆を強めていくことも、モンスターを倒す力になるだろう。

(以下では、結末についても言及する。)

ポストクレジットシーンでは新聞記事のバラバラ殺人の被害者が小野山美子(8歳)から森崎明日香(8歳)に書き換わる(年齢は書き換わっていなかったと記憶するが定かではない)。そこで初めから森崎明日香を被害者として無理に解釈を試みてみよう。頭部が発見されなかった明日香は成仏できなかった。だから明日香は誰からも見えない幽霊のような存在であり(両親は娘が生きているかのように振る舞っている)、明日香には他の人に見えないものが見える。幼稚園からの知り合いだった高広も事件で亡くなった明日香を忘れて日々を送っている。明日香が高広らを「カラダ探し」に呼び寄せ、自らの存在を思い出させる。明日香が生きていたらどんな高校生であったか。明日香は高広らとの高校生活を送る中で次第に怨念を晴らしてく。とりわけ「カラダ探し」の時空から抜け出し記憶が消え去るとしても、必ず思い出して見せるとの高広の約束に、明日香は力を得たろう。明日香は自ら頭部を発見して怨念を晴らす(プールで人形が頭から沈んで行ったのを見て頭部の在処に気が付くのは、古井戸のイメージと接続する)。高広が約束通り、明日香を思い出したとき、明日香は成仏するのだ(ラストシーンの明日香の笑顔)。それは現実世界における古井戸での(白骨化した)頭部の発見と符合する。以上のようにポストクレジットシーンを解釈すると、恐怖の度合いは一段増すのではなかろうか。
カラダ探し」に送り込まれた(?)明日香が「赤い人」に口を貫かれて殺害されるのが何故なのか気になった(敢て美しい顔の口を大きく開かせて歪めるのだ)。幼い明日香が猟奇的な殺人犯によって口腔を犯されていたとすれば辻褄が合うだろうか(全くジュヴナイルな展開ではないが)。

カラダ探し」のクリアに向かう途中で「転調」があり、飽きさせない。
冒頭のブルガリアの「カラダ探し」の挿話や司書教諭の八代の存在(八代は高校時代に「カラダ探し」に参加しているためかループに気が付いている)がよく理解できなかった。
6人全員美形。山本舞香の制服の着こなしに悩殺される。
公開時期が重なったタイムループのコメディ映画『MONDAYS このタイムループ、上司に気づかせないと終わらない』(2022)との対照も一興だろう。