可能性 ある 島 の

芸術鑑賞の備忘録

映画『シアター・キャンプ』

映画『シアター・キャンプ』を鑑賞しての備忘録
2023年製作のアメリカ映画。
95分。
監督は、モリー・ゴードン(Molly Gordon)とニック・リーバーマン(Nick Lieberman)。
原作は、ノア・ガルビン(Noah Galvin)、モリー・ゴードン(Molly Gordon)、ニック・リーバーマン(Nick Lieberman)、ベン・プラット(Ben Platt)の短篇映画『シアター・キャンプ(Theater Camp)』。
脚本は、ノア・ガルビン(Noah Galvin)、モリー・ゴードン(Molly Gordon)、ニック・リーバーマン(Nick Lieberman)、ベン・プラット(Ben Platt)。
撮影は、ネイト・ハートセラーズ(Nate Hurtsellers)。
美術は、シャーロット・ロイヤー(Charlotte Royer)とジョーダン・ヤノータ(Jordan Janota)。
衣装は、ミシェル・リー(Michelle J. Li)。
編集は、ジョン・フィルポット(Jon Philpot)。
音楽は、ジェームズ・マカリスター(James McAlister)とマーク・ソーネンブリック(Mark Sonnenblick)。
原題は、"Theater Camp"。

 

様々な扮装の子どもたちが小さな舞台で歌い、踊り、演技する、その溌剌とした姿が次々と映し出される。
子どもが初めて舞台に立つ姿を見ることほど素晴らしいことはありません。舞台に立つと、光が当たり、突然世界が開けます。演劇を通じて子どもたちが学ぶことって途方もないんです。身に付けるのは、アドリブ、ダンス、歌、それにお互いに協力し合うこと。切実に必要としている子どももいますよ、その子にとって本当に必要なものなんですから。それこそ私がこのキャンプを創設した理由です。誰もが自由に自分らしくいられる場所を作りたかった。でも、キャンプを開くには1年がかりの仕事なんです。だから私たちは夏が来る前にあちこちを駆けずり回って資金を集め、才能ある新人を発掘します。ご存じの通り、私たちは演劇人ですから。どうやったら人々が動いてくれるか分かっています。
晩春。グリーン・ウッド中学校では、ミュージカル『バイ・バイ・バーディー』の公演がある。アディロンダクツ・サマーキャンプの創設者で主宰のジョーン・ラビンスキー(Amy Sedaris)と経営責任者のリタ・コーエン(Caroline Aaron)がチラシを配り、保護者を勧誘する。もう定員が埋まりそうなんですよ。あとほんの少しだけ、あと4人くらいかしら。お子さんのために早く登録された方がいいですよ。離婚されたなんて残念ですわ。お子さんに居場所が必要ならアディロンダクツは最適ですよ。この学校ではこれまで沢山のスターに出会いました。ウィロートコジラミに驚いたんでしょ、駆除したって伝えて下さい。
保護者たちから離れたジョーンとリタ。何故笑ってるの? 散々よ、彼、酔っ払ってるもの。でも登録してくれると思う。今年はペースが悪いわ。もっと資金が必要よ。レオに主役を演じたらって。駄目よ、彼はひどいでしょ。彼はひどいのも音痴なのも知ってるけど、親はもの凄く裕福なの。そんなやり方しないって分かってるでしょ。才能で決めないと。で、どのくらい裕福なの? すっごく金持ち。
『バイ・バイ・バーディー』の幕が開く。キャンプ参加者のセバスチャン・キャンベル(Alexander Bello)が華々しく歌い踊る姿に大きな声援を送っていたジョーン。突然ジョーンは倒れ込んでしまう。誰か、助けて! リタが悲痛な叫び声を上げる。息してないの! ショーなんかじゃないの!
ジョーン・ラビンスキーは『バイ・バイ・バーディー』のストロボ光により発作を起こした。パセイク郡史上初の『バイ・バイ・バーディー』関連被害となった。我々のドキュメンタリーの取材対象者が撮影初日にして昏睡状態に陥ってしまった。撮影の継続が選択された。ジョーンに代わりキャンプを運営する運びとなったのは、彼女の息子である。
アディロンダクツ・サマーキャンプのステージ。真っ暗な中、セルフィースティックに取り付けたスマートフォンでトロイ・ルビンスキー(Jimmy Tatro)が一人撮影を開始する。ファンのみんな、トロイだ。早速だけど、みんなに伝えておきたいことがあるんだ、リングライトなしでちょっと恥ずかしいけど。まだここにいるんだ。分かってるよね、自分のことについて話すのは気が進まないけど、実は最近、ある個人的な事情があって、それを知らせとかなきゃって。ざっくり言うと、シアター・キャンプの仕事中、ママが倒れてしまったんだ。意識が無くて、それがどれくらい続くか見当も付かない。残念だけど、昏睡状態ってそういうもんなんだ。でも心配には及ばないよ。ママのキャンプにはあんまり興味が無かったし、夏は友達と馬鹿やって過してたけど、僕は金融の天才だし、世界的なビジネスの助言者だから。BDEってやつ? 事業開発の経験ありってわけ。キャンプを継続するために必要なね。これから3週間、ビジネスをどうやって立ち直らせるか、その内幕をお見せしよう。
何だよ驚かせんな! 部屋を廻りながら撮影していたトロイはそこに人がいるのに気付かなかった。ごめん、ここでブラインドを直してたら君が入って来て…、パニックになって動けなかったんだ。グレン、技術責任者だよ。グレン・ウィンスロップ(Noah Galvin)がトロイに挨拶して、技術系の状況を説明する。喫緊の課題はね、舞台だよ。背景幕が傷んでいるから、固定しないと。ミュージカル用の機材を優先して、ストレートプレイならマイクなしで。ブロードウェイでは実際そうしてるんだ…。待ってくれよ、話に付いてけない。ちんぷんかんぷんな専門用語について説明してもらえないか。いいよ。ストレートプレイって何だ? ミュージカルとストレートプレイがあるんだ。それじゃゲイプレイは? …ミュージカルかな。
サマーキャンプ初日を迎える。アディロンダクツ・サマーキャンプに、バスや自動車で子どもたちが続々とやって来るのを、リタが受け付ける。

 

夏期休暇中の演劇学校「アディロンダクツ・サマーキャンプ」の創設者で主宰のジョーン・ラビンスキー(Amy Sedaris)は、経営責任者のリタ・コーエン(Caroline Aaron)とともに生徒の勧誘のため、グリーン・ウッド中学校で行われるミュージカル『バイ・バイ・バーディー』を訪れた。参加者のセバスチャン・キャンベル(Alexander Bello)の演技に歓声を送っていたジョーンが発作を起こして卒倒する。昏睡状態で入院するジョーンに代わって主宰を務めるのはジョーンの息子トロイ・ルビンスキー(Jimmy Tatro)。演劇の知識が皆無で、技術責任者グレン・ウィンスロップ(Noah Galvin)から劇場補修計画を説明されても何一つ理解できない。自称・金融の天才で、アディロンダクツを3週間で立て直すと豪語するが、バーンズウェル・キャピタルのキャロライン・クラウス(Patti Harrison)が現われ買収提案をするまで、銀行による差し押えが間近に迫っていることさえ知らなかった。開校初日、生徒たちが続々とアディロンダクツにやって来る。アディロンダクツの出身者である、演技指導責任者のエイモス・クロブシャー(Ben Platt)と音楽責任者のレベッカ=ダイアン(Molly Gordon)が、闘病中のジョーンのために彼女の半生を描いたミュージカル『ジョーン、スティル』を今年の課題作品として発表する。だが2人は脚本を書き始めてさえいなかった。

(以下では、冒頭以外の内容についても言及する。)

夏期演劇学校「アディロンダクツ・サマーキャンプ」の一癖も二癖もある講師陣が、演劇に情熱を燃やす子どもたちとともに、学校の創設者ジョーン・ラビンスキーの半生を描くミュージカル『ジョーン、スティル』を創り上げていく姿と、ジョーンの息子トロイが施設の差押え危機から脱却すべく資金獲得に奔走する姿とを描く、ドキュメンタリータッチのコメディ。
次々と持ち上がる問題。果たしてミュージカルは完成し、そして公演を打つことがきるのか。
技術責任者のグレン・ウィンスロップが八面六臂の活躍。
レベッカ=ダイアンは心霊体質。指導にも活かす。『ジョーン、スティル』のリハーサル(ジョーンが息子トロイの誕生を寿ぐ)を見てトロイはついレベッカ=ダイアンに母親の降霊を望んでしまう。ジョーンはあの世に行っていないのだが。
トロイが雇い入れたジャネット・ウォルチ(Ayo Edebiri)は経歴詐称で演技指導などできないが、優秀な生徒たちに答えさせることで指導を乗り切る。
エイモス・クロブシャーは演技に厳しい。その厳しさは自分(やレベッカ=ダイアン)にも向けられ、演者としては成功できないままでいる。だが、彼の指導は実を結ぶことになる。