可能性 ある 島 の

芸術鑑賞の備忘録

展覧会 角文平個展『Fountain / Sleep』

展覧会『角文平 Fountain / Sleep』を鑑賞しての備忘録
アートフロントギャラリーにて、2018年11月30日~12月24日。

 

角文平の「Fountain」のシリーズと「Sleep」のシリーズとを別々の展示室で紹介する企画。

 

「Fountain」のシリーズの作品は、ドラム缶の上にフィギュアを串刺したように縦に並べ、頂点から茶褐色の液体が滴るもの。《Fountain-JPN》では青いドラム缶の上に、下から順にゴジラ、招き猫、エビフライ、飛行機のフィギュアが、《Fountain-USA》なら水色のドラム缶の上に鷲、自動車、戦闘機、自由の女神が積み重ねられている(他に橙色の缶の《Fountain-CHN》、栗色の缶の《Fountain-IND》、緑色の缶の《Fountain-SAU》が展示されている)
ドラム缶との組み合わせにより、茶褐色の液体はオイルをイメージさせる。オイルは自動車や航空機の燃料としてそれらと直接に結びつくだけではない。輸送や化学肥料を通じて食にも関わっている。フィギュアも化学製品が多いだろう。国に対するステレオタイプのイメージをキッチュな作品として提示しているのは、人々の持つ偏見を揶揄しているのだろう。ドラム缶が現実には見ることのできない国境線のメタファーとなり、ネイションという虚構に囚われずに見れば、オイルに依存した社会である点で皆等しい。
ドラム缶やフィギュアといった既製品を用いていることと「Fountain」という言葉からはデュシャンのレディ・メイドを連想せざるを得ない。デュシャンが便器を《Fontaine》と題したこと、この作品の水の流れ具合からすると、各国が地球に石油(化石燃料)を「排尿」し(垂れ流し)ているようにも見える。

 

「Sleep」のシリーズは、薄暗い展示室に砂場をつくり、白い風船のようなものが取り付けられた三輪車とグローブジャングル、そして砂でできた建物が設置されている。白い風船はしぼんだり膨らんだりし、建物の窓とともに光が灯ったり消えたりする。グローブジャングルは僅かに回転する動きを見せる。
砂場と遊具とは人の不在を強く意識させる。砂でできた建物は「砂上の楼閣」として人類の築いた文明の儚さを象徴する。回転しないグローブジャングルが地球のデストピア化を連想させる。だが、遊具や砂遊びは子供の存在を証するものでもある。風船や明かりが生命の息吹を表すものであることを官衙合わせれば、再生や希望も見えてくる。「Sleep」という作品は、悪夢と死とを見るか、夢と再生とを見るか、という問いを投げかけるようだ。