映画『シャイニー・シュリンプス! 愉快で愛しい仲間たち』を鑑賞しての備忘録
2019年製作のフランス映画。103分。
監督・脚本は、セドリック・ル・ギャロ(Cédric Le Gallo)とマキシム・ゴバール(Maxime Govare)。
撮影は、ジェローム・アルメーラ(Jérôme Alméras)。
編集は、サミュエル・ダネシ(Samuel Danesi)。
原題は、"Les Crevettes pailletées"。
マティアス・ル・ゴフ(Nicolas Gob)が部屋で一人早朝の日課のトレーニングをしながらテレビ画面を見つめている。50メートル自由形の銀メダリストである彼のインタヴューには「終わりの始まり」とのキャプションが付けられていた。プロテイン・ドリンクを作り、荷物をまとめると、自転車に乗ってプールへ向かう。コーチ(Camille Thomas-Colombier)は状態は悪くないとマティアスを励ますが、隣で練習していた選手に比べても、自らの泳ぎが精彩を欠くことはよく分かっていた。
会議室に座るマティアスは居心地が悪い。先日のインタヴューを担当したエルヴェ・ラングロワ(Jean-Louis Barcelona)がいて、非難の眼差しをマティアスに向けている。エルヴェに対するマティアスの発言がゲイ差別であると問題になり、フランス水泳連盟による審問が行われるのだ。会長(Yvon Back)ら、お偉方が居並ぶ前で、マティアスがゲイに対する差別の意図は無かったと弁明し、同席の弁護士が、マティアスにはエルヴェがゲイだとの認識は無かったと擁護する。会長は、認識の有無は問題ではなく、水泳は個性を持つ人々の相互理解に奉仕するものでなくてはならず、いかなる差別も許容しないと明言する。結果、会長はマティアスの世界大会への出場資格を剥奪するとともに、3ヶ月後に開催されるゲイ・ゲームに出場する水球チーム「プリップリッの小エビちゃん」のコーチを務めることを課した。
簡単な板のベンチがフックの並ぶ白いタイルの壁に取り付けられた質素な更衣室に、グザヴィエ(Geoffrey Couët) 、セドリック(Michaël Abiteboul)、ダミアン(Romain Lancry)が入っていく。ジョエル(Roland Menou)とアレックス(David Baiot)が既にいた。会話が弾む更衣室を恐る恐る覗き込むマティアス。ノックして尋ねる。水球における寛容と尊重を目指す同性愛者協会ってのはここでいいか? 皆がマティアスを歓迎する中、ジョエルだけはマティアスがホモ嫌いのチャンピオンだと敵意を剥き出しにする。ジャン(Alban Lenoir)がやって来て、皆にマティアスを新しいコーチだと紹介する。
50メートル自由形の銀メダリストであるマティアス・ル・ゴフ(Nicolas Gob)は、インタヴュアーのエルヴェ・ラングロワ(Jean-Louis Barcelona)から揶揄され、同性愛者に対する差別ととれる発言をしてしまう。マティアスは世界水泳大会参加資格を剥奪された上、ゲイの水球チームのコーチを担当することが課された。3ヶ月後にクロアチアで開催されるゲイ・ゲームズ出場を目指す水球チーム「プリップリッの小エビちゃん」の練習に顔を出すと、メンバーが好き勝手に水遊びをしているだけで、常に勝利を意識して水泳に取り組んできたマティアスには受け容れがたいものだった。
マティアスは水泳で勝利する(チャンピオンになる)ために全てを捧げてきたし、今も全力を注いでいる。エルサ(Anaïs Gilbert)と離別してしまい、エルサと暮らす娘ヴィクトワール(Maïa Quesemand)からの愛情も失いかねない状況にあるのもそのためだ。水球チームのコーチとして指導に力が籠もらないのは、彼らがゲイだからではなく、勝利に対する執念を持たないからだ。不治の病に冒されたジャン(Alban Lenoir)が残されたわずかな時間を水球に賭け、勝利を手にしたいと零したことで、マティアスのスイッチが入る。マティアスの勝利に対する執念は最初から最後までブレることがない。
長年ゲイの権利擁護のために闘ってきたジョエル(Roland Menou)は、セドリック(Michaël Abiteboul)が同性婚をして子供を持てることに貢献していると自負している。また、年を重ねてモテなくなるにつれて僻みがちになっていて、トランスジェンダーのフレッド(Romain Brau)に対して敵愾心を燃やす。因みに、フランス映画『MISS ミス・フランスになりたい!』(2020)には、年を重ねた同性愛者のローラ(Thibault de Montalembert)がその悲哀を主人公のアレックス(Alexandre Wetter)に訴えるシーンがある。