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芸術鑑賞の備忘録

映画『アマンダと僕』

映画『アマンダと僕』を鑑賞しての備忘録
2018年のフランス映画。
原題は、"Amanda"。
監督はミカエル・アース(Mikhaël Hers)。
脚本ミカエル・アース(Mikhaël Hers)とモード・アメリーヌ(Maud Ameline)。

アマンダ(Isaure Multrier)は小学校の入口で迎えを待っていた。他の生徒たちは次々と帰って行き、アマンダは1人取り残される。先生が気付いて、1人は良くないから建物の中で待つようにと促す。アマンダを迎えに行くことになっていたのは叔父のダヴィッド(Vincent Lacoste) 。アパルトマンの住み込みの管理人であるダヴィッドは、案内しなくてはならない入居者が予定に遅れて到着したため、時間通りに迎えに行くことができなかったのだ。大慌てで迎えに行き、アマンダを姉サンドリーヌ(Ophélia Kolb)の家に届ける。おやつを自分で用意して食べながらアマンダは嫌いなものをいつ食べるかダヴィッドに尋ねる。先に食べてしまうかなと答えるダヴィッドに、アマンダは嫌いなものは植木鉢に隠してしまうと告げる。そこへ帰宅したサンドリーヌは機嫌が悪い。小学校から何度も迎えについて連絡が入っていたのだ。ダヴィッドは仕事の都合だと釈明し、アマンダもダヴィッドをかばうが、サンドリーヌは腹を立てたまま。ダヴィッドも気分を害して立ち去ると、2人が怒っていることを不安がるアマンダに、サンドリーヌは優しく声をかけて安心させる。アマンダは"Elvis Has Left the Building"という本を見かけて、タイトルを不思議がる。高校で英語を教えるサンドリーヌは、英語の「言い回し(expression)」だと説明するが、7歳のアマンダは言い回しの意味が呑み込めない。"tomber dans la pomme"が「気絶する」を表すようなものだと伝え、かつてアメリカでとても有名なエルヴィスという歌手がいて、コンサートが終わっても観客が帰ろうとしなかったので、待っていてもエルヴィスは現れないことを納得させるために、"Elvis Has Left the Building"とアナウンスがなされたのだという由来を語る。そして、ネットでアナウンスの音源を探して聞かせ、エルヴィスの曲をかけて、2人で楽しく踊るのだった。ダヴィッドのもとにはアリソン(Greta Scacchi)から手紙が届いていた。アリソンは姉弟の母だが、父と別れてイギリスで再婚し、父もアリソンと交流を絶ったまま亡くなったので、ダヴィッドはほとんど面識が無く、手紙を開封する気も起こらなかった。サンドリーヌの勤務先の高校に赴き、アパルトマンの賃貸契約書の英訳を頼むことで関係修復を図るダヴィッドに、サンドリーヌもウィンブルドンのチケットをプレゼントすることで応える。ダヴィッドはかつて優れたテニスプレイヤーだった。サンドリーヌには、ウィンブルドン観戦をきっかけとして、3人でアリソンに会おうという意図もあったのだが、ダヴィッドはアリソンに会う気はなかった。サンドリーヌは残念に思うが、無理強いは出来ないと考えていた。ダヴィッドの部屋の向かい側にレナ(Stacy Martin)という若い女性が入居することになり、案内したダヴィッドは心をわしづかみにされる。ペンを貸すよう頼まれたり、剪定作業していた公園でジョギングをするレナに偶然会ったりするうち、脈があると思ったダヴィッドは、レナと飲みに誘うことに成功する。レナはピアノ講師をしており、母親の元から離れようと引っ越してきたのだった。まだ生徒が少ないというレナに、ピアノ興味を持っているアマンダを紹介する。そして、レナと付き合い始めたダヴィッドは、アパルトマンの管理、公園の剪定、姪のお迎えに忙しくも幸せな日々を過ごしていたが、ある日突然状況が一変してしまう出来事が発生する。

 

登場人物のキャラクターや置かれた状況、そしてその変化などが、説明的な科白や表現・音楽を極力排しつつ、必要なことはしっかりとエピソードとして盛り込み、画面に映しこむことで、そつなく適確に表されている。

登場する役者はみな素晴らしいが、とりわけIsaure Multrierのつくる表情・演技が素晴らしい。甘い物が好きで、子供らしいぷくっとしたアマンダが実在するかのよう。「エルヴィス」と「ウィンブルドン」とが重ね合わさる最終盤も、アマンダの表情があってこそ。

樹木の剪定シーン。

自転車。

窓から眺める。

鯨のエピソード。

ウサギの名前は「キャラメル」。